第5話 大ピンチ! ○
ラビートを倒して大幅にレベルを上げた僕は、そのまま直ぐにスキル上げを再開した。普通なら休憩のひとつでも必要なのだろうけど、自分からは動けない分、休まなくていいこの身体はスキル上げには便利だ。
ただ、今回から少しスキル上げの方法を変えようと思う。具体的には、水魔法の練習を少し減らして光魔法の練習を多くするつもりだ。なぜかというと、やはり実践で使うことが多い水魔法の上がりが速いから、少し光魔法と差がついてしまったからだ。その差を練習の量を変えることで調整しようと思ったのだ。
それに今のところ使える光魔法はライトだけだから、日が出ているうちは水魔法は使わず光魔法の練習にあてることにした。夜にライトを使うと、動物や魔物をおびき寄せてしまうことになりそうというのがその理由だ。
スキル上げの方向性が決まったので、早速練習を再開する。レベルが上がって魔力量が増えたから、ライトの持続時間も格段に延びた。もちろん光量も増えている。それに、意識することで光の強さを変えられることがわかったので、ついでにそっちも練習してみることにした。
僕がイメージするとすぐに、前方に光の球が浮かび上がった。その光の量をできるだけ抑えてみたり、逆にめいいっぱい光らせてみる。さらには点滅させてみたり、光の球を複数出すことなどにも挑戦してみた。点滅まではすぐに上手くいったが、複数出すのは難しく何度か練習が必要だった。それでも確実に上達していくのがわかるので、魔法の練習はとっても楽しいぞ!
最初は苔に転生するなんてどうなることかと思ったけど、この場所は思ったより外敵が少なく今じゃ楽しみながら生きていくことができている。むしろ、地球で生活していた頃より充実しているくらいだ。今なら、女神様に2度目のチャンスを与えてくれてありがとうと言いたい。
そんな感じで日中は光魔法を中心に、夜間は水魔法を中心にレベル上げに励んだ。ラビートを倒してから一週間ほど経つが、その間に現れた動物はいない。思った以上にここは生き物が寄りつかない場所のようだ。一応、光合成でレベルが2つほど上がっているが、やはり高レベルになるにしたがってレベルが上がりづらくなっている。まあ、期せずしてスローライフになっているわけではあるが……
そんなことを考えていると突然、僕の"探知"が生き物の接近を捉えた。しかも最悪のタイミングで。
(オーノー! 何で魔力を使い切ったタイミングで現れるんだよ!)
文句を言いつつも、"探知"にかかった生き物を"鑑定"する。
種族 イグアーナ
名前 なし
ランク F
レベル 15
体力 33/33
魔力 10/10
攻撃力 21
防御力 35
魔法攻撃力 10
魔法防御力 10
敏捷 22
スキル
威嚇 Lv1
(むむむ。確かイグアナって草食動物だったよな)
僕の前世の知識通り、イグアーナは目の前の雑草を手当たり次第ムシャムシャ食べながら近づいてくる。どう見ても葉の種類を選んでいる様子なんか見られない。このままだと毒草だと気づかれずに食べられてしまいそうだ。
(これはまずいかもしれない……)
イグアーナは一直線に僕に向かって進んでくる。僕の"魔力自動回復"はLv4まで上がっているので、1分間に4、魔力が回復する。1分半もあれば"ポイズンエッジ"1発分の魔力は回復するが、魔法防御力がラビートよりも高いイグアーナ相手に1発だと心許ない。少なくとも2発は撃てるようにしたいがそんな余裕はなさそうだ。
(これしかない!)
僕は咄嗟の判断で僅かに回復した魔力を使って、光量最大で持続時間0のライトをイグアーナの目の前に作り出した。
目の前に突然現れた光に驚いたイグアーナが後ずさる。さらには強烈な光のせいで眼が回復するのに時間がかかっているようだ。
(よしよし、狙い通りだ! そのまましばらくじっとしててくれ!)
時間にして約30秒、一度0になってしまった魔力がたまるには時間が足りない。
(くそ! もう眼が回復してしまったか。もう少し時間を稼がないと……)
思ったよりも早くに回復してしまった。後1分は稼がなくてはならない。が、こんな時に限っていいアイディアが思い浮かばない。
(やばい、まじで死ぬかもしれない。頼む。こっちに来ないでくれ!)
もう魔力の回復を待つしかない僕は、祈るような気持ちでイグアーナを見つめた。眼は無いけど。
そんな願いが通じたのか、イグアーナは何かを警戒しているかのように、キョロキョロと辺りを見回すだけで動く気配がない。おそらく、突然現れた魔法を使った何者かを探しているのだろう。ただの葉っぱが魔法を使うなんて思ってないだろうから、魔法を使える何者かがどこかに隠れていると思っているっぽい動きだ。
(ふう、助かった。これで終わりだ)
2分と15秒後、僕はイグアーナの真上に"ポイズンカッター"を二つ作り出し、動きが止まった一瞬を狙って真下に落とした。
ザシュ!
二つの"ポイズンカッター"がそれぞれ、イグアーナの首の付け根と背中を切り裂いた。やはり魔法防御力が高いせいか、両断することはできなかったが、それなりに深い傷を負わせることができたようだ。しっかりと毒状態にもなっているし、のろのろと葉っぱの下に隠れることしかできていない。これがポイズンエッジひとつだったら、まだ暴れる力が残っていただろう。危なかった。
目の前の葉っぱの下に潜り込んだイグアーナは、徐々に動きが鈍っていき、丁度僕の目の前に来た時に息絶えた。
(今回は危なかった。今度から、魔力は使い切らずに少し残しておくことにしよう)
この世界に来てからの最大のピンチを乗り越えた僕は、この教訓をしっかりと今後の生活に活かすことにした。
種族 毒草
名前 なし
ランク G
レベル 15
体力 21/21
魔力 20/40
攻撃力 15
防御力 22
魔法攻撃力 43
魔法防御力 43
敏捷 0
スキル
特殊進化
言語理解
詠唱破棄
アイテムボックス Lv6
鑑定 Lv5
思考加速 Lv5
生命探知 Lv6
魔力探知 Lv5
敵意察知 Lv5
体力自動回復 Lv2
魔力自動回復 Lv5
光魔法 Lv6
水魔法 Lv7
時空魔法 Lv2
重力魔法 Lv2
光合成 Lv6
毒生成 Lv4
称号
転生者
スキルコレクター
進化者
イグアーナをアイテムボックスにしまいつつ、ステータスを確認する。レベルが1つ上がっていた。やはり、格上の相手を倒すと経験値がたくさん貰えるようだ。一週間で2つしか上がらなかったのに、一度の戦闘で1つ上がっている。今回みたいなピンチはあまりあってほしくはないが、もう少し生き物が来てくれてもいいのに。そんなことを考えつつ、僕は再びスキル上げに戻るのであった。
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