第27話 いざ王都へ! ○
ファントムタイガーを辛くも倒した僕は、10日程かけて20階層へと戻って来た。この辺りで出てくる魔物はB~B+ランクの魔物だ。進化最中にさえ襲われなければ問題ないだろう。幸い、空を飛べる魔物はこの階層にはいないようだから、少し開けたところの天井に土魔法で巣を作ってそこで進化するとしよう。
20階層を探索し、丁度下からは見づらい窪みを発見したのでそこに土魔法で壁を作りその中で進化することにした。
(さて、次の進化先はどんな感じなのかな?)
□進化先を選んでください
・キラードッグ
・キラーキャット
・キラーフォックス
・バトルホース
・ファングウルフ
おおっと!? どうやら昆虫はここで終了のようだ。次の進化先は全て動物系の魔物っぽいぞ! これは上手く選べば街中には入れるようになるかもしれないな。
街中に入っても怪しまれないという観点で見ると、まず、キラーフォックスとファングウルフはないだろう。キツネも狼も人間にとってあまりいいイメージはないだろうから。バトルホースもちょっとないかな。馬車とか引かされそうだし。となると、キラードッグかキラーキャットの2択か。
よし、自由気ままな猫に憧れたこともあったし、ここはキラーキャットにしてみるか。僕がキラーキャットを選択し、念じると身体が光りに包まれていき……
種族 キラーキャット(変異種)
名前 なし
ランク D
レベル 1
体力 224/224
魔力 422/422
攻撃力 262
防御力 258
魔法攻撃力 407
魔法防御力 403
敏捷 244
スキル
特殊進化
言語理解
詠唱破棄
暗視 New!
アイテムボックス Lv20
鑑定 Lv20
思考加速 Lv21
生命探知 Lv21
魔力探知 Lv21
敵意察知 Lv20
危機察知 Lv17
体力自動回復 Lv18
魔力自動回復 Lv21
光魔法 Lv19
水魔法 Lv23
風魔法 Lv12
土魔法 Lv12
雷魔法 Lv15
時空魔法 Lv10
重力魔法 Lv10
猛毒生成 Lv18
麻痺毒生成 Lv14
睡眠毒生成 Lv14
混乱毒生成 Lv14
痛覚耐性 Lv15
猛毒耐性 Lv18
麻痺耐性 Lv14
睡眠耐性 Lv14
混乱耐性 Lv14
幻惑耐性 Lv10
水耐性 Lv13
風耐性 Lv13 New!
土耐性 Lv13 New!
雷耐性 Lv13
瘴気 Lv13
硬化 Lv12
雷纏 Lv15
称号
転生者
スキルコレクター
進化者
暗殺者
同族殺し
光が収まったところで僕は、水魔法で水の鏡を作り出し自分の姿を確認する。そこには薄い灰色の毛に黒いラインが入った、アメリカンショートヘアーに似た猫が映っていた。
(これはいける! めっちゃかわいい! 2本の牙がちょっと長いのが玉に瑕だけど、これくらいなら許容範囲だろう。僕が見たことのあるキラーキャットは、もっと大きくて毛も茶色だったはずなんだけど変異種だからだろうか?)
体長はおよそ30cmといったところか。子猫よりはちょっと大きめだけど、これなら魔物とはおもわれないはずだ。ステータスもいい感じで引き継いでいるから、今後も魔法主体でいけそうだ。それにキラーキャットの特性か、敏捷の初期値がすごく高くなっている。これなら、ランクは下がったけど、総合的な強さで行けばサンダービートルより上かもしれないな。
後は、スキルの確認か。新しく増えたのは暗視と風と土の耐性か。暗視はおそらくキラーキャットのスキルだろう。風と土はなぜこのタイミングかはわからないけど、僕が持っている魔法スキルと連動していると思われる。
それからなくなったスキルは……飛翔か。羽がなくなったから仕方がないけど、飛べなくなったのは残念だ。
後は魔法だが……!? 重力魔法と時空魔法がLv10になってる!! どちらも第5階位の魔法がなかったからレベル上げが出来なかったけど、進化の度に1ずつ上がってようやく10に到達したのか。
どれどれ、重力魔法の第4階位は"ヘビィ"か。一定範囲の重力を増大させる魔法だ。レベルが上がる毎に範囲と重力が増えていくようだ。
時空魔法の第4階位は"スロウ"か。こちらは一定範囲の時の流れを遅くする魔法だ。一見すると相手にかけるデバフ魔法のように見えるが、実際は時空魔法だから相手の耐性に関係なく動きを遅くすることができる優秀な魔法だ。この魔法があれば、ファントムタイガーにももっと楽に勝てるだろう。
よし、色々確認が終わったところで、少しレベル上げをしておこうと思う。ここで30くらいまで上げてから、念願の街生活を始めようではないか。この身体になったら木の蜜だけでは生きていけないだろうから、早急に食事を何とかしなくてはならない。
種族的には倒した魔物をそのまま食べてそうな感じがするが、僕にはできる気がしない。何とか調理された料理を確保する手段を見つけなくては……
僕は3日間ほどかけて20階層でレベル30まで上げた後、急いで出口へと向かった。アイテムボックスに残っていた木の蜜を舐めてはいたけど、それもそろそろ限界にきていた。これ以上、何か食べないと身体も心も持たないだろう。上がった敏捷と重力魔法、時空魔法を駆使して魔物を置き去りにして出口へと急いだ。
降りるときは7日ほどかかった道のりも、3日で踏破した。それぞれの階層の階段を覚えていたのもよかった。入るときはあれほど苦労した入り口も、出るときは冒険者の後ろをさも使い魔のように歩いていたら簡単に出ることが出来た。さすがは猫。みんなの警戒心が薄い。
王都に入る門をくぐった僕の目に飛び込んできたのは、人、人、人。たくさんの人と建物。さらには耳には街特有の喧噪が、鼻には何かの肉を焼いたような食べ物のいい匂いが飛び込んできた。それにしても、王都というのにあっさり侵入できてしまった。これなら似たような大きさの魔物なら、同じように侵入できてしまうのではないかと心配になってしまう。初めての王都ではあるが、そんなことを冷静に考えているとグゥゥと小さなお腹が鳴った。
(まずは食事を何とかしなくては)
僕はおいしそうなにおいがする一角へと歩みを進めていった。
正門から数分歩いたところで、お食事何処が並ぶ通りへとたどり着いた。もちろん、正面から店に入るわけには行かないので、小さく身軽な身体を利用して裏口を見てまわる。さすがに田舎の村のように食べられる野菜や果物がその辺においてあるわけはないが、店の裏には残飯を捨てるゴミ箱らしきものは見て取れた。問題は僕にそれを漁る勇気があるかどうかなのだが……
(ちょっと無理かな……)
本当に生きるか死ぬかの瀬戸際ならわからないが、こうも意識がはっきりとしている中ではちょっと難しそうだ。僕がそんな感じで、残飯が入ったゴミ箱とにらめっこをしていると、不意に裏口のドアが開いて一人の料理人らしき男が出てきた。
「おんやぁ~、野良猫かぁ? この辺では見たことない顔だなぁ~。それにしても、ずいぶんいい毛並みをしてるんだなぁ~」
(しまった。残飯に気を取られすぎて探知を忘れていた)
「にゃ~」
とりあえず魔物であることがバレないように『にゃ~』と鳴いてみた。鳴いてみて気がついたが、これが僕がこの世界に来て初めてしゃべった言葉になる。今までは声を出すことができなかったからね。しかし、初めての言葉が『にゃ~』とは……
「どれぇ~、おなかがすいてるんだなぁ~? ちょっとまってろよぉ~」
そんな僕の心の葛藤がわかるわけもなく、白いエプロンがよく似合う小太りの男は、そんなことを言いながら店の中へと戻っていった。
(それにしてもあの人、僕が腹ぺこだってよくわかったな)
数分後に出てきた男の手にある小さな皿には、めいいっぱい焼いた肉が盛られていた。
「猫なら魚がよかったかなぁ~、でもオラが務める店は焼き肉店なんだなぁ~。オークの肉しかないんだべ~。さぁ、どうぞぉ~」
いやいや、僕は昔から魚より肉派ですから。喜んでいただきますよ!
(おお! 今まで食べたことがない肉だがこれはおいしいぞ! 出会ったばかりの野良猫にこんないい肉をごちそうしてくれるなんて、何ていい人なんだ!)
こちらの世界に来てからの初めてのまともな食事に、警戒も忘れて夢中になってしまった。
「おいこら、オッチョ! また野良猫なんかに店の肉をあげやがって! てめぇの給料から引いとくからな!」
僕が夢中でお肉を食べていると、裏口から顔を出した厳ついおじさんが小太りの男を叱りつけていた。
「またお腹が空いたらここにおいでねぇ~」
オッチョと呼ばれた男性は、厳つい男に聞こえないように小さな声でそう言い残すと、苦笑いをしながら空になった皿を持って店へと戻っていった。
(オッチョっていうのかこの男の人は。またって言われてるくらいだから、しょっちゅう似たようなことをしてるのだろう。それにしても、自分の給料から引かれるのがわかってるのに、僕にお肉を恵んでくれたのか……これは恩返しをしなければ!)
僕は食事を終えて無意識に毛繕いをしながら、どうすればこの恩を返せるのかを考えていた。
第二章 完
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます