第三章 動物編

第28話 王都探検

 どこでお礼をしていいのかわからず、ここに書かせていただきます。

 この作品をフォローしてくださったり、星、ハートなどで応援いただきありがとうございます。とても嬉しく思っております。

 素人の趣味程度の作品ではありますが、今後ともよろしくお願いします。


---------------------


 王都での初の食事に満足した僕は、次に王都の情報を集めることにした。


 まず僕に食事を恵んでくれたオッチョさんが働いていたのは、「オーク亭」という焼き肉店だった。あの肉はオークの姿形からは想像できないおいしさだったな。


 彼はお腹が空いたらまたおいでと言ってくれたから、何とかあそこで定期的に食事ができればいいのだが……さすがに毎回ただで貰うのは気が引ける。

 かといって、お金を払いたくても僕にはお金を稼ぐ手段がない。アイテムボックスには物凄い数の魔物の死体が入ってはいるが、猫が換金できるとは思えない。となると、いっそのことオークを狩ってきて渡すのがいいかもしれないな。


 食事の問題はひとまずそれで様子を見るとして、次は寝床をどうにかしなくては。そのためにも少し王都の中を歩き回ってみるか。


 数時間ほどかけて一通り回ってみたところで、何となく王都の作りを理解することができた。

 まず、この王都は東西南北にそれぞれ門があり、そこから中心に向かって伸びるメインストリートは、全て中央に鎮座している城へと続いている。防衛の面ではどうかと思うけど……


 正門となる南門から繋がるメインストリートの両側には、武器屋や防具屋、薬品店やアクセサリーショップなどが建ち並ぶ。東門からのメインストリートは、食料品を扱う店や宿屋が多く、西門からのメインストリートは各種ギルドが拠点を構えている。街の北側は居住区となっているが、どのエリアも中心に近づくにつれ高級な佇まいとなっている。故に城を中心とした街の中央部は貴族街となっているようだ。


 南東のエリアには冒険者や商人のための宿が多く、南西のエリアは鍛治や薬品の工房などがひしめいていた。


 北側の居住区は中央こそ貴族達の豪邸が建ち並んでいたが、逆に北東の端の方にはあまり治安が良くなさそうなエリアもあった。


 この世界は基本的に平屋の建物が多いようで、1番高い建物は中心にそびえるお城だ。3階建て以上の建物はほとんどなく、貴族の豪邸も各種ギルドも大体は2階建てだった。その他の建物に至ってはほぼ全て平屋となっている。


 ということで、僕は寝床を見つけるために必然的に王都北東のスラム街に来ている。ここには空き家も多く、他の野良猫や野良犬なんかも住み着いているみたいなので、僕も目立つことはないと思ったからだ。ちなみにこの辺りの野良犬、野良猫はすでに制圧済みだ。それぞれのボスっぽいヤツをひと睨みしたら、お腹を上にして寝っ転がっていたから、僕に逆らうヤツはもういないだろう。


 都合よく一軒の平屋の天井裏が空いていたようなので、しばらくはここを寝床とさせてもらうことにしよう。留守中に他の動物に入られるのも嫌なので、土魔法で隙間を全て塞いでやった。土魔法を使えないと入れないので、普通の動物に入られることはないはずだ。


 寝床を確保したところで、それぞれのエリアをもう少し詳しく探索してみることにした。


 まずは食料品を扱う店が多い東側のエリアにいってみよう。お肉をたくさん食べたからそれほどおなかは空いていないけど、食べられるものを発見したらアイテムボックスにしまっておきたい。少しでも蓄えがある方が安心できるからね。




 メインストリートの両側は、どちらかと言えばレストランのように料理を提供する店が多く並んでいる。食材を売っているような店はメインストリートから1,2本外れた通りに店を構えているようだ。

 店の様子はまるでお祭りの露店みたいだ。さすがにこの姿で料理を提供する店に入るわけにはいかないから、食材を売っているお店を中心に見ていく。できるだけ、かわいらしく歩きながら。


 幸い、キラーキャットと言っても変異種のおかげで毛の色が違っているから、魔物だとバレることはない。それどころか、何処へ行っても猫としてかわいがって貰える。

 野菜や果物を売っている店では、リンゴのような果物を貰えたし、肉屋ではソーセージのようなものを出して貰えた。

 ただ、魚介類を売っている店はほとんどなく、唯一売っていた店でも干物のような乾燥したものばかりだった。おそらく海から新鮮な魚を運んでくる技術がないのだろう。僕がアイテムボックスで運べば一儲けできそうな予感がする。


 それはさておき、貰った食べ物は食べる振りしてこっそりアイテムボックスへとしまっていく。この調子なら、食べ物に関してはあまり心配しなくてよさそうだ。ただ、元日本人の気質か貰いっぱなしだと気持ち悪いので、何とかお礼をしたいのだが……


 この姿でも魔物の素材を換金できるところがあるといいんだけど……


 まあ、とりあえずは怪しまれない程度に役に立つものを置いていくしかないか。


 東エリアで食料を確保した僕は、次に南側の武器、防具エリアへと足を向けた。



 さすがに王都ともなると、様々な種類のお店が建ち並んでいる。武器屋にしても樽の中に無造作に入れられた剣もあれば、店先に自慢するかのように飾られている光り輝く大剣なんかも目に入る。

 目につくものは片っ端から鑑定しているが、安物は青銅や鉄でできているものが多い。それなりのケースに入って売り出されているものは鋼や銀、黒鉄といった素材だった。ちなみに店先に自慢気に飾られていた大剣はミスリル製で、敏捷+20という効果が付与されていた。

 防具屋の素材も似たり寄ったりで、やはりミスリル製のものが最高級品として扱われているようだった。


 それからポーションなんかを売っているお店も発見したのだが、こちらは外からは中を窺うことができずちょっと残念。


 他にも露店形式のお店も並んでおり、アクセサリーを並べて置いていたり、『剣を研ぎます』という看板を出している人などもいた。

 それから、魔法道具マジックアイテム屋さんというのも見つけたが、こちらも中に入ることができず見ることは叶わなかった。いずれ人型に進化できたら行ってみたいものだ。


 南西の工房エリアにも行ってみたが、さすがに工房ともなるとどこもセキュリティがしっかりしており、簡単に覗けるところではなかったので、素通りして各種ギルドが並ぶ西エリアへと向かった。


 ざっと見てまわっただけでも、冒険者ギルド、商人ギルド、鍛冶ギルド、魔法ギルドなどなど様々な職業ギルドを見つけることができた。中でも警戒が緩そうな冒険者ギルドへの侵入を試みることにした。


 冒険者の中には、テイムしたのか召喚したのかはわからないが、僕のような魔物を連れて歩いている人もいた。ただ、その魔物に共通するのは首輪をしており何やらタグのようなものをつけていることだ。おそらく、使い魔である証明みたいなものなのだろう。


 そんな魔物に紛れ僕も冒険者ギルドのドアをくぐった。


(おぉ、これが冒険者ギルドか!)


 そこには様々な武器や防具を身に纏った冒険者達がいた。人間だけではなく、耳の尖ったエルフや動物の特徴をもつ獣人なんて呼ばれる者もいる。

 入ってすぐ正面には大きな掲示板が立てられており、たくさんの紙が貼られていた。よく見ると、依頼内容や報酬などがかかれている。


(これがクエストってやつか)


 確かマイラの村に来ていたエリックもクエストを受けてきたっていってたはずだ。これがそのクエストとやらなのだろう。


 それから右を見ていると、カウンターがたくさん並んでいた。右から順に新規登録カウンター、クエスト受注カウンター、クエスト報告カウンター、素材査定カウンターと書いている。今更だけど、最初のスキル選択で言語理解を取っておいてよかった。


 クエスト掲示板の左を見ると、食堂兼酒場があり、その横には小さいながらも武器や防具、ポーションなどを売っているお店があった。


 僕は掲示板の横にちょこんと腰をかけて、冒険者達の鑑定を開始した。


種族 人族

名前 ヘラルド

ランク  B

レベル 42

体力    201/201

魔力    62/62

攻撃力   187

防御力   175

魔法攻撃力 58

魔法防御力 143

敏捷    156


スキル

剣術 Lv12

毒耐性 Lv4


 ほほう。そこそこ強そうな人を鑑定してみたらBランクの剣士だった。このステータスだと単独でBランクの魔物を倒すのは難しそうだけど、武器や防具で底上げできるのかな? それともBランクとはパーティーでBランクの魔物を倒せるということなのかな?


 よし、次は魔法使いっぽい人を鑑定してみるか。


種族 エルフ

名前 ニーア

ランク  B

レベル 46

体力    186/186

魔力    223/223

攻撃力   161

防御力   138

魔法攻撃力 247

魔法防御力 234

敏捷    181


スキル

細剣術 Lv14

精霊魔法 Lv15

魅了耐性 Lv6


 ふむふむ。一応、このギルドでもかなり強うそうな人を鑑定してみたんだけど、またBランクだった。ひょっとしてAランクとかって珍しいのかな? しかし、このエルフのお姉さんは中々の強者だね。さっきの剣士の男性より強いかもしれない。


 そこそこの時間をかけて他の人も鑑定してみたけど、この2人を超える人は見つけられなかった。


 冒険者ギルドを出たときには、もう日が暮れかけていたので僕は寝床へと戻り、貰ったリンゴっぽい果物を一切れ食べて眠りについた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る