第91話 オーロラ達のその後
「終わったようだな」
魔王を倒した僕にハヤトが声をかけてくる。
〈そうだね。これで聖国も魔王国も帝国から手を引いて、他の国とも仲良くできるようになるのかな?〉
〈ああ、ここからは俺とサヤカが上手いことやっておくぜ。その、何だな、色々ありがとうな〉
ハヤトが柄にもなく真剣な顔でお礼を言ったかと思うと、すぐにそっぽを向いてしまった。ツンデレか?
って言うか、お前のせいで魔力がすっからかんの状態で魔王と戦うことになったんだぞ! よーし、説教してやる……と思ったけど、スノウとオーロラを助けてくれたのも事実だし、説教はまた今度にして、僕はさっさとお
邪神や魔神の話を聞くにはうってつけの人……じゃなくて竜を思い出したからね。
〈じゃあ、僕はもう行くね。オーロラ達には上手く説明しておいてくれ〉
〈わかった。こっちはしばらく落ち着かないかもしれないが、そのうちまた会いに来てくれや。今度は魔人族総出で歓迎するぜ!〉
最後にデレたハヤトを残して、僕は
~side オーロラ~
助かった。今度ばかりは本当に死ぬのかと思った。
私とスノウは魔王四天王のひとり、『堅固のテクター』を相性のおかげで倒すことができたけど、他のメンバーはみんなやられてしまっていたわ。
頼みのタイヨウさんも魔王の前に膝を突いて動けないでいたし。
苦し紛れに唱えた召喚魔法が失敗に終わったとき、もうダメだと思って思わず叫んでしまった。
『ミスト助けて!』って。
その祈りが通じたのかどうかはわからないけど、あのハヤトという魔人と、白い、きれいな、それでいて懐かしさを感じるドラゴンのおかげで私達は助かった。
でも、今はそのことを喜んでいる暇はない。倒れている仲間達はまだかろうじて生きているから。
スノウと協力して皆を一箇所に集め、治癒魔法を施していく。なぜかタイヨウさんだけは全く傷が見当たらなかったのは、あの白いドラゴンが治癒魔法を使ってくれたからだろうか。
他のメンバーも私のエクスヒールで何とか一命を取り留めた。その後、意識を取り戻したダリアさんがエリアヒールで皆を治し、ようやく一息つくことができたわ。残念ながらその時には、白いドラゴンはいなくなっていたけど。
そこでハヤトと呼ばれる魔人から今回の出来事の真相を聞き、これから魔王国と聖国は帝国とも手を取り合って平和な世界を築くのに尽力すると約束してくれた。ただ、あの白い竜については上手くはぐらかされてしまったけど、私とスノウは気がついていた。あれは絶対ミストだったと。
私達は結果的に、誰ひとり欠けることなく帝国へと帰ることができた。その道中は、タイヨウさんも含め自分達の力の足りなさを痛感し、重い足取りだったけど、生き残ることができたということは、これからもまだ強くなれるということだと気がつき、帝国に近づく頃には大分気持ちは回復していた。お互いに模擬戦をしたり、魔法について語り合ったりできるくらいには。
それから、帝国に戻ってきた私達は皇帝に今回の騒動について報告した。特に魔人ハヤトの話は帝国にも伝わっていて、聖国では教皇が、魔王国では魔王が倒され、新しい教皇と魔王が誕生したという。
新しい教皇と魔王は他国との和平を目指すと宣言し、現在混乱している国を立て直した暁には、他国との交易にも応じるとのことだ。
皇帝はこの結果に満足し、私達に褒美を約束してくれた。タイヨウさんは自分のプライドが許さないと、褒美は受け取らなかったみたいだけど、『英雄の剣』のみなさんや私は装備を買い換えたり、消耗品を買うのにお金が必要だったので、ありがたく受け取ったわ。
大変だったのはテオドールで、皇帝が『今一番次期皇帝の座に近いのはテオドールだ』と発言してしまったのだ。テオドールには全くその気はなかったのに……
これではテオドールの兄二人の心中は穏やかではいられないよね。
ただでさえサミュエルの件があって、テオドールは兄二人を疑っていたのに、これじゃあ火に油を注ぐようなものだわ。唯一の救いはテオドール自身が強くなったことだけど、これから先はもっと身辺に気をつけることになりそうね。
さて、私はこれからどうしようかと考えたんだけど、あのドラゴンがミストだったとしたら、ますます差がついちゃったことになるよね。こんなんじゃ、また会えたとしても今回みたいにすぐいなくなっちゃうわ。
よし、もっともっと強くなろう。そのために、しばらく『英雄の剣』にお世話になろうと思う。テオドールにも一緒にいてほしいって言われたしね。
どこかの
私達は、善は急げとばかりに装備を調え、ポーション類を買い込み帝国を後にした。しばらくは帝国から離れた方が安全だろうから、ユークレア大陸を離れてグルーバル大陸を目指す予定みたい。グルーバル大陸にはヴェルデリン王国やトロンバレン共和国がある。
『できれば兄二人のどちらかが皇帝の座に着くまで、帝国には帰りたくないものだ』と言うテオドールのぼやきを聞きながら、私達はグルーバル大陸を目指して帝都を後にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます