第3話 宿敵現る! ○

 さて、この世界での当面の目標も決まったし、これからはその目標の達成に向けて邁進していくとしよう。


 転生者を探すとスローライフを送るは当面無理そうだから、進化して生き残ることとスキルをたくさん集めることを中心に頑張ってみるか。そのためにはまず、今の自分に出来ることを確認するとしよう。


 僕は生命探知と魔力探知、さらに敵意察知を使って周囲の安全を確認する。それから自分のステータスを開き、一つ一つの項目を確認していった。


 スキルを取得するときに確認したものはいいとして、まず僕が鑑定で詳しく調べたのは魔法についてだ。僕は光魔法、水魔法、時空魔法、重力魔法を獲得している。これらの魔法系は使えば使うほどレベルが上がっていき、レベルが上がるほど、威力や範囲が増し、消費魔力が下がっていく。

 さらにレベルが上がる毎に階位が上がる仕組みになっていて、階位が上がると新しい魔法を覚えることができるようだ。今はまだLv1だから第5階位の魔法しか使えないが、レベルが10に上がると第4階位の魔法が使えるようになるっぽい。その後は5つ上がる毎に階位が1つ上がるみたいだ。いずれは第1階位の魔法を使えるようになりたいな。


 と、気合いを入れたところで鑑定を続ける。


 どれどれ、光魔法の第5階位は"ライト"か。単純に光の球を作り出す魔法のようだ。水魔法の第5階位は"ウォーターエッジ"となっている。これは、小さな水のカッターを作り出し攻撃する魔法だ。よしよし、自衛手段を手に入れることができたぞ。

 ただ、なぜか時空魔法と重力魔法は第5階位の魔法が存在しなかった。魔法を使わないとレベルが上がらないのに、使える魔法がない。もしかしてこれは死にスキルなのではという考えが頭をよぎる。貴重な2枠を無駄にしたのかもしれないが、まだ結論を出すには早いだろう。今後使えるようになるかもしれないから、今は放っておくことにする。


 ついでに鑑定していなかった称号の"転生者"も鑑定してみた。すると、"転生者"にはスキルレベルが上がり易くなる効果があることがわかった。これは嬉しい誤算だ。ありがとう詐欺師のような女神様!


 一通り魔法の効果を確認したところで、実際に使ってみることにした。苔なので声は出せないが、詠唱破棄を持っているから問題なく使えるはずだ。まず初めは光魔法のライトを使ってみる。


 僕は頭の中でライトと念じ、光の球を想像する。すると、頭上で一瞬パッと何かが光るのを感じた。


(おお、魔法が使えたっぽいけど、魔力が5しかないから、光が一瞬しか持続しなかった……)


 ステータスを見ると、魔力が0になっていた。さすがに魔力が5しかないと一瞬しか光らないようだ。


 でも大丈夫。僕には"魔力自動回復"があるから。Lv1だと1分間に1回復するから、5分もあれば満タンだ。


 さらにその回復するまでの5分ももったいないから、その間に魔力を使わないスキルを繰り返し使っておこう。


 鑑定や思考加速を繰り返し使い、ついでにその辺に落ちている石っぽいものをアイテムボックスに入れたり出したりした。


 そうこうするうちに5分経ったので、魔力が満タンになる。よし、次はウォーターエッジを使ってみよう。


 先ほどと同じように、脳内でウォーターエッジと念じ薄い水の円盤をイメージする。


 シュン!


 一枚だけ作り出すことができたウォーターエッジは小気味よい音を立てて飛んで行き、水面に浮いていた細い木の枝真っ二つに切って消滅した。


(ほほう、中々の切れ味じゃないですか)


 実際に見えたわけじゃないけど、木は生命探知でボヤッと認識できているから間違いないだろう。まだLv1だから魔力の消費なしでは半径10mほどしか認識できないけど、今のところはそれで十分間に合っているからよしとしよう。


 その後も、光合成で栄養と酸素を生成しながら、魔法と探知を繰り返し使っていった。そして一日が終わる頃には……


種族 苔

名前 なし

ランク G

レベル 2

体力    6/6

魔力    6/6

攻撃力   0

防御力   2

魔法攻撃力 6

魔法防御力 6

敏捷    0


スキル

特殊進化

言語理解

詠唱破棄

アイテムボックス Lv2

鑑定 Lv2

思考加速 Lv2

生命探知 Lv2

魔力探知 Lv2

敵意察知 Lv2

体力自動回復 Lv1

魔力自動回復 Lv2

光魔法 Lv2

水魔法 Lv2

時空魔法 Lv1

重力魔法 Lv1

光合成 Lv2


称号

転生者

スキルコレクター



 特に魔物を倒したわけではないけど、レベルが一つ上がっていた。おそらく、苔は光合成をすることで経験値がもらえるのだろう。使っていたスキルも全て一つずつ上がっている。スキルは上がりづらいイメージがあったのだが、称号の"転生者"がいい働きをしてくれているのかもしれない。体力が減っていないので、体力自動回復が上がっていないけど、無理に減らして0になったら困るから致し方がない。これはもう少しレベルが上がって体力が増えてから考えることにしよう。


 こんな感じで1日の大半を光合成をしながら、魔法と魔力を使わないスキルを交互に使って過ごしていたら、一週間ほどでレベルは6に、使っていたスキルは1つ上がっていた。 

 これだけ順調に上がっているには理由がある。それは、転生してしばらくしてから気がついたのだが、苔には睡眠がいらないということだ。おかげで1日中レベル上げができたので、一週間で5つも上がったのだろう。

 レベルが上がったことで、体力も魔力も10に増え、ライトの魔法は5秒ほど光り続けるようになり、ウォーターエッジも2枚飛ばせるようになっていた。

 ただ、思ったよりスキルのレベル上げるのには時間がかかった。特にレベルが高くなるにつれ上がりづらくなっている気がする。ちなみに時空魔法と重力魔法は未だにどう上げていいのかわからない。





 そんなある日、僕は転生してから初めて宿敵に出会ってしまった。生命探知にかかったその姿は前世で見覚えのある形をしている。苔を食べて生きる生物。折れ曲がった背中に長い髭、水中をちょこまかと動き回るあの姿は間違いない……『エビ』だ!


 ここ一週間、植物以外に生命探知に引っかかるものがいなかったから、この池には生物はいないのかと思っていが、偶々近くに来なかっただけのようだ。ここで誕生したのか余所から来たのかはわからないが、動き回るエビの姿がぼんやりと捉えられている。僕は物は試しにと、"探知"した生物を"鑑定"してみた。


種族 エービ

名前 なし

ランク F

レベル 7

体力    15/15

魔力     0/0

攻撃力   10

防御力   12

魔法攻撃力  0

魔法防御力  0

敏捷    11


スキル

水中移動 Lv2


 ぬお!? エビじゃなかったエービだった……。しかも、ランクがFでレベルが7とか僕より高いし……。


 さて、このエビならぬエービは体長3cmくらい。色はわからないが、僕が生えている大きな石に纏わり付いて苔を食べているようだ。小癪にも僕の仲間達を食べているわけか。これは許すわけにはいかない。というのは建前で、実際は僕の魔法の実験台になってもらおう。


 エービが石についた苔を食べつつ、水面近くまで上がってくるのをじっと待つ。そして待つこと数分、そのチャンスが巡ってきた。


(今だ! ウォーターエッジ!)


 僕が作り出した水の刃が、水面近くで苔をつついていたエビに迫る。


 シュ!


 ……躱された。普通に躱された。エビごとき躱された。そうか、今まで動かない的ばかり相手にしていたから気がつかなかったけど、僕はそれほど魔法を上手に操れるわけではなかった。それでも負けるわけにはいかない。仲間の敵討ちという理由があるのだから。


 そして、僕は2発目のウォーターエッジを放った。


 スパン!


 斬れた。普通に斬れた。っていうかさっきのは躱したんじゃなくて、たまたま動いたタイミングで魔法を放ってしまっただけだったようだ。そして、僕が作り出した水の刃は見事に一撃でエービの身体を両断した。防御力が少々高かったので心配だったが、魔法防御力が0なので魔法に弱かったのだろう。おかげで難なく倒すことができた。


(哀れエービよ。安らかに眠ってくれ。それにしても、やっぱり初期スキルに魔法を選んでおいてよかった。動けない身だけど、苔を食べに来る小さな生き物くらいだったら自力で倒せそうだ)


 外敵が来ても倒せることがわかったことで、今まで張っていた気を少し緩めることができた。さらにエービを倒したことでレベルが上がったようだ。


種族 苔

名前 なし

ランク G

レベル 7

体力    11/11

魔力     2/11

攻撃力   0

防御力   7

魔法攻撃力 11

魔法防御力 11

敏捷    0


スキル

特殊進化

言語理解

詠唱破棄

アイテムボックス Lv3

鑑定 Lv3

思考加速 Lv3

生命探知 Lv3

魔力探知 Lv3

敵意察知 Lv3

体力自動回復 Lv1

魔力自動回復 Lv3

光魔法 Lv3

水魔法 Lv4

時空魔法 Lv1

重力魔法 Lv1

光合成 Lv3


称号

転生者

スキルコレクター


 レベルが上がったことでステータスも少し上がっている。それから水魔法のスキルも一つ上がっているようだ。光魔法が上がっていないところを見ると、魔法で敵を倒すとスキルの上がりが速くなるのかな? これについては時間をかけて確かめていこうと思う。 

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