第132話 エピローグ

 僕が邪神と魔神を倒してから1ヶ月が過ぎた。あ、あと駄女神にゲンコツをしてからね。


 あの後、僕は王国の闘技場へと戻ってみた。何せ武闘大会の最中だったから、どうなってるのか気になってたんだよね。


 でも、結局僕が戻ったときに武闘大会は終わっていた。そりゃそうか、あんな騒ぎがあったのに続けるわけないよね。ただ、何日か後に参加者全員が集められて表彰式だけ行われたけど。

 一応、僕が優勝したということで賞金の白金貨一枚とタイヨウと戦う権利を得た。白金貨の方はもらったけど、タイヨウと戦う権利は丁重にお断りした。タイヨウもホッとしてたみたいだし、よかったよね。


 他の参加者達はと言うと、竜人の二人はエクセルの仲間だったみたいだから、罰を受けて自分の国へと帰っていった。檻に入れる案もあったみたいだけど、プライドがすっかりへし折れてしまった彼等を見てると、もう変な考えは起こさないと判断されたようだ。実際、多額の賠償金を払い、すごすごと逃げるように戻っていったみたいだし。


 ハヤト達とサヤカ達も自分達の国へと戻っていった。二人はやっぱり自国の宣伝も兼ねてきたようで、王国や共和国との協力関係を取り付けたみたいだ。二人とも偉くなったものだ。


 テオドールとその兄のダライアスも自国へと帰っていた。どうやら帝国では長男のギデオンが捕まったそうだ。二人の弟を殺害しようとしたのが、ミルドという帝国魔法部隊の部隊長の調査によって発覚し、今は城にある一室に幽閉されているのだとか。


 イグニートさんも共和国に戻っているし、後は誰がいたかな……あ、そうそうギルドマスターのグランドールさんは、まだまだ戦えると判断されたのか、難しいクエストを回されて大変な思いをしているらしい。


 いちばん変化があったのはオーロラとスノウだ。僕が時空神に進化した時に、加護も強化されたみたいで、オーロラは時空神の使徒に、スノウは種族がアルティメットグリフォンに進化していた。




 そして僕は今、オーロラと一緒にオッチョさんの『オーク亭』に来ている。


 大会の表彰式で再会したオーロラに、助けたことを感謝され、お礼に食事をご馳走してもらうことになったのだ。人生初のデートに僕もちょっと浮かれ気味だ。


 帝国に空間転移で迎えに行った時、なぜかテオドールもいて自分も連れて行けと騒いでいたけど、ミルド隊長に引きずられて城へと帰って行った。

 何でも兄のダライアスと皇帝の座を譲り合うのが忙しいらしく、オーロラに会いに来てはミルド隊長に城へと引きずられて行くのが毎度のパターンだそうだ。


 そして、つい先ほどオーロラと二人で王都に転移して、ここオーク亭で焼き肉デートを楽しんでいるのだ。


「それで、フォッグさんは若い頃は何をしていたのですか? あ、今でもお若いですけど、その、何て言うか、冒険者になる前のお話と言いますか……」


 ふふふ、戸惑うオーロラもかわいいね。


「旅を、色々なところを旅していた」


 嘘は言っていない。人間の姿じゃなかったけどね。『いっそのこと、全部話しちゃおうか』なんて考えたこともあったけど、やっぱり止めた。僕の種族は時空神。寿命のある種族を愛するわけにはいかないからね。


 ちなみに僕のスキルである"神の姿"は、自分の姿を思い通りに変えることができる能力もあった。

 そこで、カブトムシと黒猫と聖竜の姿に変身し、それぞれのトップにお告げを出しておいた。他の教団とケンカしないように。


 カブトムシは『疾風の風』のシーラに、黒猫では孤児院のマリアに、聖竜ではカタリーナに。って言うか、やっぱりカタリーナが白竜教なるものを立ち上げていたよ。今までの女神教の信者が軒並み白竜教に鞍替えしてくれていたおかげで、駄女神に一発げんこつをかますことができたからね。ちょっとお礼を言ったら感激して失神してしまったよ。



 その後もオーロラとの焼き肉デートを楽しんだ僕は、オーロラを帝国に送り、共和国にある自宅へ帰ると、ゆっくりとソファでくつろぎながら、これからのことについて考えを巡らせた。


 僕はこの世界に転生したときに4つの大きな目標を立てた。


・進化して生き残ること

・スキルをたくさん集めること

・他の転生者を探すこと

・最後はスローライフを送ること


 進化はたくさんして、今はもう時空神なんてものになっている。もうこれ以上の進化はないだろうし、おそらく僕に害をなせるようなものはいないだろう。


 スキルもたくさん集めることができたし、できないことなんてほとんどないと思う。


 ハヤトやサヤカといった転生者にも会えて、今もちょくちょく交流できている。


 そしてキリの方で出しているお店も順調だし、共和国や武闘大会で知り合った仲間と楽しく過ごしている。まさにスローライフだね。


 そうそう、この間なんてエリック達のパーティーに臨時で入って、一緒に地下迷宮ダンジョンを探索してきたんだ。

 ずるして死にそうになっていたあの時とは違い、強くなっていたし冒険者としての心構えがしっかりできていたよ。本当にあの時助けておいてよかった。


 ついでにエクセルの様子を見に行ったけど、『もう悪いことはしまへん』って泣いて謝っていた。一応、女神もいることだし大丈夫かな?


 そんなんで、今は大きな目標がなくなってしまい、ちょっとした喪失感を感じている。もちろん、この世界の人々にはお世話になっているし、自分を信仰してくれている人がたくさんいるから、まだまだこの世界の安定には貢献していきたいと思っているんだけど、それと僕の目標はまた別物だからね。


 そこで僕は考えた。


 せっかく時空神になったのだから、時空神にしかできないことにチャレンジしてみたい。


 そして考えた末思いついたのが……『元の世界に戻る方法を見つけること』だ。


 時間と空間を支配する神ならば、ひょっとしたら地球に戻ることができるんじゃないかと思ったわけだ。


 この世界の安定に貢献して、オーロラの最期を看取って、その後は元の世界に戻って……


 そして、自分の体験をライトノベルにして売り出してやるんだ!


 そんな、新たな目標を立てた僕は満足して眠りにつくのであった。





 「苔から始まる異世界生活」 完


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 7月の23日から投稿を始め、約4ヶ月半。全132話にて終了です。

 素人の拙い作品に最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました。本来は第98話で終わる予定でしたが、たくさんの方々に過分なる応援をいただき、続きを書くと決めたことで、伏線を回収し終えることができました。この場を借りてお礼申し上げます。


(近況ノートで最終回に載せようと思っていた一文を紹介しようと思ってます。全裸教の方は今晩にでもぜひ見に来てください)


 本作品を通して、色々勉強もさせていただきました。今後、新作を書くことがあればこの経験を活かしていきたいと思います。


 最後にちょっと宣伝を……


 筆者が最初に書いた作品です。今見返すと恥ずかしいくらいの稚拙な文章ですが、よろしければ暇つぶしにどうぞ!

 自分の好きなテンプレばかり集めた、気軽に読める作品です。


「転生したのは妹で俺は妹のチートスキル」

https://kakuyomu.jp/works/16817330663864669656


 また、12月下旬より投稿予定の

「30歳女性オタク生物学者は、異世界で合成獣(キメラ)生成の職に就く」

https://kakuyomu.jp/works/16817330664531362531

も見かけたら覗いて見ていただけると嬉しいです。


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