第85話 vs 教皇 ③
すっかり姿が変わってしまった教皇をすかさず鑑定する僕。
種族 悪魔族
名前 シュトレイゼ・クレメンス
ランク SS
レベル 99
体力 999/999
魔力 431/999
攻撃力 999
防御力 999
魔法攻撃力 999
魔法防御力 999
敏捷 999
スキル
分裂
自己再生 Lv15
杖術 Lv25
身体強化 Lv25
鑑定 Lv25
聖魔法 Lv25
闇魔法 Lv25
結界魔法 Lv20
称号
教皇
邪神の使徒
おおっと! 何と種族まで悪魔族に変わってしまっているではないですか!? いや、変わったのではなく本来の姿に戻ったということか。いずれにせよ、全ステータスが999というのは今のハヤト達には少々厳しいか? それともあの二人ならそれなりにいい勝負ができそうか?
「さあ、いきますよ!」
確かに変身した教皇はハヤト達よりステータスは高くなったのだが、絶望的なほど差があるわけではない。さらに言えば、向こうが一人に対してこちらは二人いるわけなので、とりあえずすぐに参戦せずに少し様子を見ることにした。
えっ!? なぜかって? だって二人だけで倒した方がこの後の話がスムーズにいきそうだし、何より二人のいい訓練になるかと思って……
「うお!? はやっ!?」
「危ない!」
ステータスが上がった教皇の初撃を躱し切れずにまともにくらいそうだったハヤトだったが、間一髪サヤカの結界が間に合い事なきを得た。
しかし、その結界も一撃で破壊されてしまったので、ハヤトは反撃できず慌てて距離を取った。
「私の結界では一瞬の時間稼ぎにしかなりません。連続で何枚も出せるわけではありませんので、気をつけてください!」
「わかった! 致命傷になりそうなものだけ頼む!」
サヤカとハヤトが短いやり取りでできる事を確認する。まだ二人は諦めていないようなので、すぐに助けに入れるように準備しながら、僕は二人の戦いを見守る体制に入った。
ハヤト達が教皇と戦い始めてから30分ほどが経過した。ハヤトとサヤカは言葉通りの連携を見せ、教皇の攻撃を凌いでいたが、サヤカの結界は致命傷になる攻撃だけを防いでいるので、ハヤトの身体には徐々に教皇の爪や魔法の傷が増えていった。
サヤカも結界魔法に集中しているため、治癒魔法は使えず、さらに度重なる結界魔法の行使で魔力が残りわずかになってしまっていた。
一方、教皇の方は魔力こそ多少減っているが、自己再生のスキルのおかげで無傷の状態を保っている。
(そろそろ、出番かな)
格上との戦いでハヤトの槍術は上達したし、サヤカとのサポートも上手になった。二人の連携も格段によくなったので、ぼちぼちこの戦いも終わりにしよう。
〈二人ともよく頑張ったね。後は僕に任せて〉
念話で二人に告げながら、教皇とハヤトの間に割って入る。
「ん? 今更幼竜が何の用ですか? ようやく彼等を殺せるところまできたのですから邪魔をしないでください。それとも先に貴方が死にますか?」
ハヤトとの戦いに水をさされた形になった教皇が、苛立ちを隠そうともせずに僕にぶつける。
〈それはすまない。だけどこの二人を殺させるわけにはいかないんでね。ここからは僕が相手をさせてもらうよ〉
「っ!? 念話だと!? それにその口調、貴様、幼竜ではないのか!?」
僕の念話に警戒したのか、先ほどまでの余裕がある態度が崩れ、咄嗟に臨戦態勢に入る教皇。
〈ふふふ、いつから僕が幼竜だと勘違いしていた?〉
人生で一度は言ってみたいセリフトップ10に入るであろうあのセリフとともに、僕は矮小化のスキルを解除し本来の姿へと戻った。
「ま、まさか成竜だったとは!?」
おお、僕が元の大きさに戻った姿を見てびびってるびびってる!
ん? ハヤトとサヤカも驚いてる? あれ、この姿を見せたのって初めてだったっけ?
まあ、あの2人は放っておいてまずは目の前の教皇を倒しちゃおう。
〈いきなり
僕の本当の姿を見て固まっている教皇めがけて、奇襲のホーリーブレスを放ってみた。
「う、ぐぅ、こしゃくなーーー!」
教皇には至近距離からのブレスを躱す余裕がなかったようで、咄嗟に結界を張るのが精一杯だったようだ。おかげで即消滅は免れたようだが、ものの数秒耐えただけで壊れてしまった結界のせいで右腕、左手、右膝から下を失ってしまっていた。
「ぐ、まさか悪魔族である私にこれほどのダメージを与えるとは。しかし、私には自己再生が……自己再生が……やめろ! 今すぐそれをやめるんだ!!」
一撃では倒しきれなかったようなので、2発目の
〈さようなら、教皇さん〉
「ぐぉぉぉぉぉ!」
連続して結界を張ることはできない。僕のホーリーブレスをまともにくらった教皇は、今度こそ跡形もなく消滅した。
「お疲れ様でした、ミストさん。まさか、大きくなったミストさんがこんなに強いとは思っていませんでした」
教皇が消滅したのを確認したサヤカが静かに僕の足下に歩み寄り、お礼を言ってきた。
〈いやいや、二人もよく頑張ってくれたよ。さすがに教皇の正体があんな化け物だとは予想外だったけど、僕に倒せる相手でよかった〉
「あー、結局いいところはもっていかれちまったか。しかし、あんな奴がいるとは。俺達もまだまだだな」
まだ体力が回復していないのか、ハヤトはその場に座り込んだまま愚痴をこぼしている。
〈サヤカはレベルの上限まであと少しだろうけど、魔族のハヤトは人族よりレベルの上限が高いのでは?〉
「ああ、おそらくそうなんだろうけど……俺達だけだとレベルの上がりが遅くてな……」
ハヤトは今回の教皇との戦いを経て、もっと強くなりたいという気持ちがますます強くなったようだ。レベル上げに関しては、僕も暇があったら手伝うと伝えたら嬉しそうにしていた。
僕らがそんな会話をしている間に、枢機卿やら神下十二部隊の部隊長達が麻痺から回復し起き上がってきた。彼らは教皇が倒されたことを知ると、邪神の信者であるレイモン枢機卿以外は、意外とおとなしくサヤカの言うことに従う意思を示した。
レイモン枢機卿だけは暴れて逃げようとしたので、サヤカが怪我を治したブライアン第一部隊長に取り押さえさせ、地下牢へと連れて行かせた。
その後はサヤカとブリュノ枢機卿の間で話がまとまり、ブリュノ枢機卿が次期教皇の座につくことが確認された。話がまとまったので、僕とハヤトはいったんこの場を離れようとしたのだが……
〈さて、それじゃあ僕とハヤトは少し休んでから、魔王国デモナイズに向かう準備を……〉
【あなたと魔力の波長が合う者が召喚魔法を唱えました。ただし、一度契約を切ったものは召喚に応じることはできません】
(はい?)
僕の目の前に、昔見たことがあるような懐かしいウインドウが現れた。
この文面からいくと、オーロラが召喚魔法を唱えたってことかな? 僕は契約を切ってるから召喚に応じることはできないと。それなのにこの文面は届くのか。
まてよ? オーロラは確か魔王討伐に向かってるはずだよね。時期的にもそろそろ魔王城に着くはず。そのタイミングで召喚魔法か……何か嫌な予感がする。
むむむ。召喚に応じることはできないけど、召喚者の様子は見ることができるのか。どれどれ……
(何だ? 土埃か? よく見えないぞ。オーロラは……!? 傷だらけじゃないか!?)
なぜか土埃みたいのが舞っていてよく見えないが、どうやらオーロラは魔王達と戦っているみたいだ。しかし、オーロラの様子を見るにかなり苦戦しているように見える。
〈二人とも、ごめん! オーロラがピンチみたいなんだ。ちょっと、行ってくる!〉
僕はその光景を見た瞬間、いても立ってもいられなくなり"空間転移"の準備を始めた。もちろん僕は行ったことのないところには飛べない。でも大丈夫のはず。なぜなら今回は目的の場所が見えているから。ちょっと距離はあるし、見えづらいけど問題ない。今の魔力の半分もあれば転移できるはずだ。
最初は何で? と思ったシステムだけど、オーロラのピンチに駆けつけることができるならありがたい。上手く利用させてもらおう。
「ちょっと待て! オーロラってことは魔王のとこだな? よし、俺も連れて行け!」
転移しようとした直前に、飛び込んできたハヤトが僕の尻尾の先をつかんだ。
〈ちょ、二人分の魔力は!? もう止まらないぃぃ!〉
"空間転移"の発動を止められなかった僕は二人分の魔力を消費して、オーロラの元へと転移した。
「「…………」」
残されたサヤカはブリュノ枢機卿と目を合わせ、無言でその場を後にするのだった。
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