第107話 野良パーティー
大変お待たせいたしました。この作品ですが、完結の目処が立ちましたので、本日より毎日投稿に戻させていただきます。
残りわずかとはなりますが、最後までお付き合いいただけると嬉しいです。
ももぱぱより
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市場価格調査を終えて開店の準備はほぼ整った。開店まで残り4日となったので、この4日間はクエストでも受けてランクアップでも狙ってみようと思っている。
僕は宿で朝食をとってから冒険者ギルドへと向かった。っと、危ない今日は冒険者ギルドだからフォッグの姿にならないとね。
カランコロン
小気味のよい音を響かせながら冒険者ギルドのドアをくぐる。早速向かうはクエストがはられているボードだ。
「……」
寡黙キャラにしてしまったため、ボロが出ないように話さないようにしなければ。
それにしても、ただ黙ってクエストボードを見ているだけなのになぜか視線を感じる。
服……着てるよね?
さて、僕は今DランクだからDランク以下のクエストを探さなくてはならない。
(おっ、これなんかいいかな?)
僕はDランクのポイズンスネーク3匹の討伐依頼の依頼書に手を伸ばし……
「そこの兄ちゃん、ちょっといいかい?」
手に取る前に話しかけられた。
伸ばした手を引っ込めて、声のする方に向き直る。そこには、黒っぽい革の鎧に身を包み、腰に片手剣を差した若い男が立っていた。そしてなぜか胸には銀色のバッジが……
「何か用か?」
見知らぬ男に少々警戒度を上げて答える。
「俺の名はクロウ。いやー、なに、もし兄ちゃんがそこのポイズンスネークの依頼を受けようとしとるなら、俺達とこっちの依頼を受けないか?」
クロウと名乗ったその男は、手に持った依頼書をひらひらさせながら差し出してきた。そこに書かれていたのは……
緊急依頼
依頼者 トロンバレン冒険者ギルド
条件 Dランク以上
報酬 金貨8枚 ランクアップ査定に上乗せあり
期限 3日以内
内容 トロンバレン共和国の南西にある魔獣の森の異変の調査
最近、魔獣の森に住む昆虫型の魔物の数が減っている。その原因を調査してもらいたい。もしかしたら、強力な個体が現れたのかもしれない。情報を持ち帰るだけで依頼達成となるが、原因を排除した場合、さらに追加の報酬を約束しよう。
「緊急依頼?」
その内容を読んだ僕は、初めて見る緊急依頼という文字に首をかしげ……そうになって留まった。クールキャラだからね。代わりに口元に手を持っていってみたよ。
疑問を口にした僕に、クロウが親切にもペラペラと説明を始めてくれた。
どうやらその説明によると、緊急依頼とは読んで字のごとく、緊急を要する依頼のようだ。高ランクの魔物が現れたとか、放っておくと大惨事を引き起こしそうな問題とか、ギルドの威信に関わる問題とか、とにかく早く解決したい問題が起きたときにギルドが出すクエストだそうだ。
この緊急クエストは報酬が若干高めに設定されているのと、ランクアップ査定に上乗せがあるのとで人気があるようだ。今回、この男は偶然はられる場に居合わせて取ることができたらしい。
ただ、森の異変の原因によってはパーティーメンバーだけだと心許ないので、他のメンバーと話し合い、もうひとり誘おうとなって僕に声をかけたというわけだ。
「なぜ俺を?」
僕は素朴な疑問を口にした。だって、僕なんかこの街に来たばかりの新人冒険者だよね。知り合いもいなければ実績もない。ざっと辺りを見回せば、僕以外にも冒険者はたくさんいる。その中でなぜ僕を選んだのか疑問に思うのは当然だよね。
「なーに、うちの妹がどうせ誘うならイケメンがいいって言うもんやからよ」
「お兄ちゃん、余計なことを言わないで!」
男の説明に突然後ろから突っ込みが入った。声の主を見てみると、緑色の動きやすそうな服装に、革の小手とブーツを身につけている20歳くらいの女性が立っていた。その顔は怒っているせいか若干赤くなっている。そして、その隣には、背はそれほど高くはないが、がっちりとした体型で金属の鎧を着込んだ男性がこちらを見ていた。
「あー、紹介するわ。こっちのうるさいのが俺の妹兼斥候役のスーだ。んで、そっちの豆タンクが盾役のバッファだな。俺達は3人でパーティーを組んどる。パーティー名は『疾風迅雷』や」
なるほど、このクロウは3人パーティだったのね。それにしても妹とパーティーを組んでいるとは、随分仲良し兄妹だこと。
クロウの雑な紹介にまたまた抗議の声を上げているスー。片やバッファは険しい顔で沈黙を保っている。
「すまんすまん、イケメンって言うのは半分冗談で、お前さんのことは知ってるで。ついこの間、突然現れたと思ったら、冒険者登録試験で試験官を倒しちまった期待の
みんなお前さんのこと狙っとるんやけど、兄ちゃん、近寄りがたいオーラ出しよるからみんな二の足踏んでたんよ。
ま、俺はその辺は気にしないからな。兄ちゃんがDランクに上がったのを見て声かけさせてもろうたわ」
おお、ちゃんとした理由もあったのか。って言うか、僕は周りにそんな風に思われていたんだね。これはクールキャラが裏目に出てしまったのか?
まあ、いいや。こうして声をかけてくれる人もいるみたいだから、ちょっとずつ信頼を勝ち取って、ランク上げついでにパーティーでの冒険というのを楽しんでみるのも悪くない。
「理解した。ランクアップはこちらも望むところだ。俺でよければ一緒させてもらおう」
僕の返答に、クロウは笑顔で右手を差し出してきたので、僕はその手をしっかりと握り握手をする。そして、クロウがパーティーメンバーを交えて、この後の動きについて説明し始めたのをワクワクしながら聞くのであった。
僕はクロウからこの後の予定について詳しく聞き、いったん準備のために彼等と別れクエストに必要なものを買いに来ている。一応、今後もこういった泊まり込みのクエストを受ける可能性があるので、ひとり用のテントを買った。
正直、結界があるからソロの時は必要ないんだけど、あんまり人前で使うのも嫌だし、何より結界は透明だからね。テントは必要だと判断したのだよ。
それから携帯用の洗面道具を買ったり、興味本位でポーションやマジックポーションなんかも買ってみた。どれも僕には必要ないけど、誰かに使う可能性があるかもしれないからね。
いや、もしかしたら何らかの理由でスキルや魔法が使えなくなるかもしれないから、念のため多めに持っておこうか。
後は食料だね。せっかくアイテムボックスがあるから食材や料理道具をたくさん買って入れておくとしよう。
おっと、容量は少ないけど、見た目より多くの物が入る
さて、一通り買い物を終えたけど、集合までまだ少し時間があるからクロウの話をおさらいしておこう。
今回の任務は森の異変の調査だね。何が起こるかわからないから、Dランクに設定されているみたいだ。これはDランク以上の冒険者であれば、手に負えない場合は速やかに撤退できるとの判断からのようだ。報酬も安くて済むし。ここでそれ以上の脅威が見つかれば、ランクに応じた冒険者に依頼を出すのだろう。
それから僕の立ち位置だけど、クロウと一緒にアタッカーを担当するようだ。クロウ達のパーティ-は、剣士のクロウ、盾士のバッファ、斥候のスーとなかなかバランスがよい。
ただ、3人しかいないのでどうしても殲滅力が足りなくて、多数の魔物に襲われると厳しいのだとか。僕の役目はそこを補うことだ。
ちなみに回復役もいないので、そのあたりはポーションで何とかするようだ。
僕が炎魔法を使えると知ったら、彼等はめっちゃ喜んでた。物理攻撃が効きづらい魔物と戦う時に、魔法を使える人がいると楽だからね。クロウ達もいい魔法使いがいれば、仲間に迎えたいらしいけど、人気もあるしなかなか見つからないらしい。僕もパーティーへの加入のお誘いを受けたけど、丁重にお断りした。
よし、おさらいも終えたし、集合時間も近づいて来たようだ。僕はクロウ達と合流するために、街の南にある門へと向かった。
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