第25話 魔物との連戦 ○

 王都近郊の地下迷宮ダンジョン、『天国への扉ヘブンズドアー』に潜入してからはや8日目。僕は現在地下21階層を進んでいる。


 この地下迷宮ダンジョンは最初は下に行くほど広くなっていたが、17階層を越えた辺りからは同じくらいの広さの階層が続いている。大体、1日で2階層攻略できるくらいの広さだ。地下何階層まであるのかわからないが、この21階層で、初めてA−ランクの魔物が現れた。


種族 バジリスク

名前 なし

ランク A−

レベル 66 

体力   335/335

魔力   303/303

攻撃力 341

防御力 287

魔法攻撃力 311

魔法防御力 298

敏捷    246


スキル

熱感知 Lv9

魔眼(石化) Lv14

猛毒生成 Lv13

猛毒耐性 Lv13

再生 Lv3


 レッドドラゴンには一歩及ばないが、中々の強敵だ。見た目は巨大なヘビだが、顔の真ん中に黄色い大きな眼が光っている。あれが石化の魔眼だろう。熱感知というスキルを持っているようなので、僕は身体全体を冷たい水の膜で覆っている。その効果か、目視できる場所にいながらも僕の存在にはまだ気がついていないようだ。


(まずはあの眼を潰しておこう) 


 僕は光魔法第4階位"シャイニングアロー"を放つ。あまりのスピードにバジリスクが気がつく間もなく、黄色の大きな目に光の矢が突き刺さった。


 グギャァァァァァ!


 地下迷宮ダンジョン内に魔物の絶叫が響き渡る。瞳を潰されたバジリスクがこっちを向いた。どうやら居場所がバレてしまったようだ。魔法を放ったときに動いたせいで音をだしてしまったせいだろう。


 まあ、一番厄介な眼は潰せたことだし、ここからは正攻法でいこうか……と思った矢先、光の矢が刺さった傷口が煙を上げながら再生しているのが見えた。


(まずい!? "再生"のスキルがあったのか!)


 それほど再生速度は速くないようだが、時間をかければ完全に治ってしまうのは間違いない。石化の魔眼を使われたらたまったもんじゃないから、治りきる前に倒さなくては。


 今度はエアカッターで黄色の瞳を狙ったが、眼を隠すように動かした尾に阻まれてしまった。バジリスクの尾がズタズタに裂け、緑色の血が流れている。

 しかし、その隙にバジリスクは完全に頭を隠すようにとぐろを巻いてしまった。これでは眼は狙えないな。


 仕方がないので、このまま倒させてもらうとしよう。僕は雷魔法第4階位"サンダーランス"を放った。轟音を立てて雷の槍がバジリスクに突き刺さる。シャイニングアローに勝るとも劣らないスピードだ。しかも、感電による麻痺の追加効果までついてる。ビバ、雷属性!


 さすがに一撃では倒すことができなかったが、麻痺のせいかとぐろが緩んで頭が見えている。そこにもう1発サンダーランスをぶち当てると、ブスブスと穴の空いた頭を焦がしながら動かなくなった。


(雷魔法は使い勝手がいいみたいだから、水魔法と一緒に重点的に上げていこうっと)


 さて、A−ランクの魔物なら問題なく倒せることがわかったから、もう少し先へと進んでみることにしよう。

 この階層ではB+ランクからA−ランクの魔物が現れるようだが、今のところこの辺りの階層ではほとんどが単体で現れるので、それほど苦労せずに倒せている。

 これが、群れで現れると少し厳しいかもしれない。僕のステータスは魔力関係がかなり高いから、魔法を使えば楽に倒せているけど、物理的なステータスならこの辺りの魔物とどっこいどっこいだからね。魔法で捌ききれなかったり、魔力が尽きてしまったら危ないのだ。





 バジリスクを倒してから3日ほどで26階層へと到達した。25層までは単体の魔物が多かったのだが、この26層からはA−ランクの魔物が2~3体同時に現れるようになってきた。必然的に魔力の消費量が上がっていく。魔力自動回復のスキルがあるとはいえ、一瞬で回復するわけではなので、休憩も含め段々と進む速度が遅くなってしまっている。この26層を抜けるのにまる1日かかってしまった。


 ここの地下迷宮ダンジョン天国への扉ヘブンズドアーはまだ踏破されていない地下迷宮ダンジョンと聞いている。最高記録が地下31階層だそうだ。うん、今27階層へ降りたのであと4階層降りれば最高記録に並ぶね。カブトムシだから公にはできないけど。


 27階層はA−ランクの魔物3体からスタートし、その後も30分に一回のペースで襲われ続け、まる一日かけてようやく28階層へと降りる階段を見つけることができた。

 ここまで来ると、階段も安全地帯とは言えなくなっていて、おかげで寝ている時も生命探知と魔力探知をオンにすることができるようになった。

 28階層からはさらに一度に出る魔物の数が増え、戦っている最中に別の魔物に襲われる確率も増えてきた。そのせいで、たった2階層攻略するのに4日もかかってしまった。


 そして、今日からいよいよ30階層へと挑むことになる。事前の情報だと、ここからAランクの魔物が出るそうだ。


 ここまででレベルは55まで上がっている。攻撃力は若干低めだが、防御力はそこそこあるし魔力関係はレッドドラゴンを大きく上回っているから、Aランクの魔物相手でも負けることはない……と思う。


種族 サンダービートル(変異種)

名前 なし

ランク C

レベル 55 

体力    308/308

魔力    462/462

攻撃力   298

防御力   358

魔法攻撃力 512

魔法防御力 512

敏捷    288


スキル

特殊進化

言語理解

詠唱破棄

アイテムボックス Lv19

鑑定 Lv18

思考加速 Lv19

生命探知 Lv19

魔力探知 Lv19

敵意察知 Lv18

危機察知 Lv14

体力自動回復 Lv16

魔力自動回復 Lv19

光魔法 Lv17

水魔法 Lv21

風魔法 Lv11

土魔法 Lv11

雷魔法 Lv13

時空魔法 Lv9

重力魔法 Lv9

猛毒生成 Lv17

麻痺毒生成 Lv13

睡眠毒生成 Lv13

混乱毒生成 Lv13

痛覚耐性 Lv13

猛毒耐性 Lv17

麻痺耐性 Lv13

睡眠耐性 Lv13

混乱耐性 Lv13

幻惑耐性 Lv9

水耐性 Lv12

雷耐性 Lv12

瘴気 Lv13

飛翔 Lv12

硬化 Lv11

雷纏 Lv14


称号

転生者 

スキルコレクター

進化者

大物食いジャイアントキリング

暗殺者

同族殺し


 30階層に入ってからすでに2度も魔物に襲われた……。まだ、30分も経っていないのに……。どちらもB⁺ランクの群れだったので、それほど苦戦はしなかったが。そして3度目の戦闘でようやくお目当てのランクの魔物が現れてくれた。


種族 ファントムタイガー

名前 なし

ランク A+

レベル 84 

体力   411/411

魔力   503/503

攻撃力 361

防御力 298

魔法攻撃力 501

魔法防御力 472

敏捷    398


スキル

咆哮 Lv19

透明化 Lv20

隠密 Lv20

闇魔法 Lv19

闇耐性 Lv19

炎耐性 Lv17

水耐性 LV17

雷耐性 Lv17

土耐性 Lv17

風耐性 Lv17

状態異常耐性 Lv17


 おぉーい!? こいつはAランクじゃなくてA +ランクじゃないかーい! 誰だよ30階層からはAランクが出るって言ってたのは!? AランクどころかA+ランクが出ちゃってるじゃん!

 これは想定外だ。しかも、このファントムタイガーは相性が悪すぎる。僕のメイン火力である魔法が効きづらい上に、敏捷が半端ない。これじゃあ、碌なダメージが期待できない。相手の防御力が低いのがせめてもの救いだが、こちらの攻撃が当たらなければ意味がない。そうなれば、いずれやられてしまうのは火を見るよりも明らかだ。


 切り札の猛毒も状態異常耐性のせいで大した効果は望めないだろう。

 くそっ! 隠密まで持ってるから生命探知に引っかからなかったのか。こいつはまいった。完全に格上相手の戦いになるぞ。残念なことに向こうはすでに戦闘態勢に入っている。逃げるのも無理そうだ。


 僕は覚悟を決めて、ファントムタイガーと向かい合った。

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