第二章 昆虫編
第12話 久しぶりの食事&睡眠 ○
ビートルに進化したばかりの僕は、進化の度にお世話になっているグリーンワーム先生のもとへと急いだ。早急にある程度のレベルまで上げないと、偶然強い魔物に出会っただけで死んでしまうから。
僕がいつもグリーンワーム先生が群れている場所にたどり着くと、運がいいことにアシッドワーム先生も何匹か待っていてくれた。早速、覚え立てのシャイニングアローを試してみる。
念じただけで現れる光の矢を一匹のグリーンワームめがけて飛ばしてみる。文字通りの光の速さとまではいかないが、かなりのスピードで飛んで行きグリーンワームの脳天を貫いた。
(いつも思うけど、魔法って便利だよね。ビートル系は物理攻撃メインみたいだから魔力が以前より減って残念だけど、それでも遠距離から攻撃できるのはありがたい)
魔法のありがたみを感じつつ、光魔法や水魔法、時には角を使ってワーム達を蹴散らしていく。
(これだけ蹴散らしておいてなんだけど、このワーム達って進化しないのかな? こんなにいるんだから一匹くらい、蝶やガになってもよさそうなもんだけど。一度も見たことないよな)
他の魔物も進化することがあるのか、それとも僕だけのものなのか確かめる術がないからわからないが、もしスキルを持っていなければ進化できないのであれば、あの時"進化"のスキルを選んだ自分を褒めて上げたい。
Lv20前後のグリーンワーム先生とLv25前後のアシッドワーム先生を合わせて20匹ほど倒した僕のレベルは25まで上がっていた。やっぱり格上の魔物を倒すのは光合成より遙かに効率がいい。それにしても、たった半日で25まで上がったのは引き継いだ優秀なスキルのおかげだね。
種族 ビートル(変異種)
名前 なし
ランク E
レベル 25
体力 142/142
魔力 36/115
攻撃力 174
防御力 170
魔法攻撃力 114
魔法防御力 113
敏捷 170
スキル
特殊進化
言語理解
詠唱破棄
アイテムボックス Lv11
鑑定 Lv10
思考加速 Lv11
生命探知 Lv12
魔力探知 Lv12
敵意察知 Lv10
危機察知 Lv3
体力自動回復 Lv9
魔力自動回復 Lv10
光魔法 Lv11
水魔法 Lv13
時空魔法 Lv5
重力魔法 Lv5
猛毒生成 Lv11
麻痺毒生成 Lv7
睡眠毒生成 Lv7
混乱毒生成 Lv7
痛覚耐性 Lv7
猛毒耐性 Lv11
麻痺耐性 Lv7
睡眠耐性 Lv7
混乱耐性 Lv7
瘴気 Lv7
飛翔 Lv3
硬化 Lv5
称号
転生者
スキルコレクター
進化者
暗殺者
(よし! ミアズマほどではないけど、森の北側で狩り出来るくらいのステータスにはなったな)
半日ほど狩りをして日がすっかり暮れたところで、僕は拠点に戻ってきた。レベルも上がりすぐに森の北側を目指そうとしたときに久しぶりにあの感覚を感じ取った。
(ね、眠い!?)
それは眠気だ。植物の時は一切感じなかった眠気が、ビートルに進化したことで今までの分を取り返すかのように一気に襲ってきた。
(寝てる間に襲われないようにしないと!)
僕は慌てて近くにあった大きな木の根元に穴を掘り、目立つ身体を押し込んだ。ほんの気休めにしかならないが、暗い中で穴に入っていれば見つかりにくくもなるだろう。そう信じて僕はこの世界に来て初の眠りへと落ちていくのだった。
翌朝、外敵に襲われることもなく無事に目覚めた僕はある衝動に気がついた。
(お腹が空いた……)
どうやら、この身体に進化して必要になったのは睡眠だけではなかったようだ。食欲もまた感じるようになっていたのだ。
(ここにきて光合成のありがたみがわかるとは)
植物の時は、水と光さえあれば光合成で養分を作ることができた。しかし、昆虫型となった今、何らかの食事をする必要がでてきたのだ。
(ベースは昆虫だから、木の蜜とかを探せばいいのかな?)
まあ、変に肉食動物とかに進化して生肉を食べるより抵抗は少ないか。しかし、このまま進化し続けたらそういう可能性も否定できないということか。これは、覚悟を決めるか早急に"火魔法を"覚えなくてはならないな。
自分の将来について考えている間も、どんどんとお腹が減っていく。これもまた、今まで食事をしていなかった反動だろうか。
僕は穴を掘っただけの巣を飛び出すと、本能に誘われるままいい匂いがする木を探して飛び回った。
(うん? あの木から何とも言えないいい香りがする……気がする)
十数分ほど飛び回った僕は、お目当てっぽい木を発見することができた。でこぼことした樹皮にややとんがったギザギザの葉っぱ。地球で言うクヌギの木に似ている。もちろん大きさは除くが。その木の真ん中にしがみつくようにとまり、角でその樹皮を傷つけてみた。途端にあふれ出す、琥珀色の木の蜜。
(この蜜なら抵抗なく食べられそうだ)
と思ってハタと気がついた。
(なんで口があるんだよ!?)
そう、僕がイメージするカブトムシの食事方法は、オレンジ色のブラシのような毛で蜜を舐め取るだったのだが、僕には立派な口があったのだ。まるでアリのような鋭いあごが左右についており、開け閉めする度にガチャンガチャンと金属音が鳴り響く。
一応、これでも蜜を吸い込むことができたので食事には困らなかったのだが、いざとなったら倒した魔物を食べられるようになっていることに、やはり自分は昆虫ではなく昆虫系の魔物なんだと再認識させられた。
直径10mはあろうかという巨木に、体長50cmの銀色のカブトムシが張り付いている。子どもが見たら喜んで近寄ってくるどころが、恐怖におののいて逃げてしまいそうなシュールな状況ではあるが、十分な蜜をお腹に入れ満足した僕は、再び森の北側へレベル上げに向かった。
あれからさらに12日ほどレベル上げに費やし、現在のレベルは39まで上がっている。その間、食事をとったのは3回で、どうやらこの身体は3日1回食事を取れば問題ないようだ。植物の時までとはいかないが、中々燃費のいい身体だ。
食事はいつも同じ場所でとっている。最初に傷をつけたあの巨大な木だ。僕のレベルが上がるにつれ、あの木に近づくものが減っていった。これがナワバリというものか。
今日も3日ぶりの食事を取ろうといつもの巨木にやって来たのだが、そこには先客がいた。
(あれは、まさか、同族!?)
僕の専用席にいたのは、立派な一本角にシンプルながら子ども心をくすぐる洗練されたフォルム、体長50cmほどのカブトムシだった。ただし、その色は赤みがかった茶色だ。こちらが本来の色に違いない。
しかも、こいつはご丁寧に僕がつけた傷の上から、×印になるように傷をつけ直している。これはもう、僕に対する挑戦としか思えない。
僕は茶色カブトのすぐ上にとまり、ヤツと対峙した。
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