第11話 子ども心をくすぐる姿 ○

 レッドドラゴンの恐怖を味わった僕は、山には近づかないようにしながら森の北側でレベル上げに励んだ。生命探知や魔力探知の範囲を頻繁に広げることで、周囲の状況を常に把握し、例え格下相手でも油断しないように戦った。慎重にかつ積極的に同格の魔物達を倒すこと2週間、ついに僕のレベルは50へと上がったのだった。


種族 ミアズマ

名前 なし

ランク B

レベル 50 進化可

体力    198/203

魔力    112/193

攻撃力   184

防御力   177

魔法攻撃力 191

魔法防御力 192

敏捷     74


スキル

特殊進化

言語理解

詠唱破棄

アイテムボックス Lv10

鑑定 Lv9

思考加速 Lv10

生命探知 Lv11

魔力探知 Lv11

敵意察知 Lv9

危機察知 Lv2 New!

体力自動回復 Lv8

魔力自動回復 Lv9

光魔法 Lv10

水魔法 Lv12

時空魔法 Lv4

重力魔法 Lv4

光合成 Lv10

猛毒生成 Lv10

麻痺毒生成 Lv6

睡眠毒生成 Lv6

混乱毒生成 Lv6

痛覚耐性 Lv5

猛毒耐性 Lv10

麻痺耐性 Lv6

睡眠耐性 Lv6

混乱耐性 Lv6

瘴気 Lv6


称号

転生者 

スキルコレクター

進化者

大物食いジャイアントキリング

暗殺者


 慎重に戦っていたせいか"危機察知"なんていう素晴らしいスキルを手に入れることが出来た。そして、ついに来ました。進化の時です。早速、進化先を確認してみると……


□進化先を選んでください

・ワーム

・アント

・ホーネット

・スパイダー

・マンティス

・スコーピオン

・ビートル


 おお! ついに植物から脱却か!? しかし、名前からしてこれらは全て昆虫の初期段階ではなかろうか。今が植物系の最終進化形だとすると、ひょっとして進化することで相当弱くなってしまうのではないか?


 頑張って強くならねばと誓ってから2週間、まさか進化することで極端に弱くなる可能性があるとは思わなかった。とは言え、ここで進化しないという選択肢はないか。強くなって生き残ることはもちろん目的の一つだが、スローライフを送るのにさすがにこの身体はないだろう。段々人も恋しくなってきたし、他の転生者を探すにしてもこの身体は向いていない。


 それに一時的に弱くなったとしても、進化と言うくらいだから昆虫系の最終進化までいけばミアズマより強くなるはずだ。今の僕なら、戦闘の経験もそこそこあるしスキルも継承できるとなれば、慎重に戦えばそんなに危険も無いだろう。


 少し弱気になってしまったが、ここは進化するしかない。後は何に進化するかということだけだが……


ワーム……言わずと知れた芋虫。口から糸を吐く。進化すると糸以外も吐けるかも。

アント……アリ。堅い外殻と大きなあごが特徴。穴を掘って巣を作るのも上手。

ホーネット……ハチ。自由自在に空を飛び、巨大な針で敵を撃つ。

スパイダー……八本足のクモ。お尻から糸を出し相手を絡め取る。実は昆虫ではない。

マンティス……カマキリ。巨大な2本の鎌を持つ森の暗殺者。

スコーピオン……サソリ。手には大きなはさみと尾の先には強力な毒針を持つ。

ビートル……カブトムシ。巨大な角と鎧のような甲殻を持つ。子ども心をくすぐる格好良さ。


 一応説明文は読ませてもらったが、今回ばかりは直感で……いや、正直に言おう、僕の好みで決めさせてもらった。だって、昔から好きだったんだもん。


 僕が進化先を念じると、身体が光に包まれていく。身体がぐんぐんと縮んでいく感じがして、光が収まるのと同時に僕は進化を果たしていた。そこにはいたのは――

 巨大な一本角、シンプルながら洗練された美しいフォルム、金属を思わせる外殻、銀色に輝く体長50cmほどのカブトムシだった。……ん? 銀色? 茶色じゃなくてなぜに銀色? 大きさはともかく、色と形は地球のカブトムシをイメージしていた僕は、明るく輝く銀色の身体を見て首をかしげた。


 まあ、しかしなってしまったものは仕方がない。これはこれで格好いいだろうと割り切り、ステータスの確認に移る。


種族 ビートル(変異種)

名前 なし

ランク E

レベル 1

体力    70/70

魔力    67/67

攻撃力   102

防御力   98

魔法攻撃力 66

魔法防御力 65

敏捷     98


スキル

特殊進化

言語理解

詠唱破棄

アイテムボックス Lv11

鑑定 Lv10

思考加速 Lv11

生命探知 Lv12

魔力探知 Lv12

敵意察知 Lv10

危機察知 Lv3

体力自動回復 Lv9

魔力自動回復 Lv10

光魔法 Lv11

水魔法 Lv13

時空魔法 Lv5

重力魔法 Lv5

猛毒生成 Lv11

麻痺毒生成 Lv7

睡眠毒生成 Lv7

混乱毒生成 Lv7

痛覚耐性 Lv7

猛毒耐性 Lv11

麻痺耐性 Lv7

睡眠耐性 Lv7

混乱耐性 Lv7

瘴気 Lv7

飛翔 Lv3 New!

硬化 Lv5 New!


称号

転生者 

スキルコレクター

進化者

大物食いジャイアントキリング

暗殺者


 やはりステータスとランクは大幅に下がってしまったか。でも、スキルは光合成以外は引き継げたようだし、新たに"飛翔"と"硬化"が増えている。光魔法もいつの間にか10を超え、新たに第4階位の"シャイニングアロー"を覚えていたようだ。これらの新スキルは後で確認しておこう。まずはレベルを上げて少しでもステータスを上げておかねばなるまい。


 そこでハタと気がついた。周囲に光るいくつもの真っ赤な目に。


(しまったぁぁぁ! ここはまだ森の北側だった! 南側に戻って魔物が弱いところで進化するべきだった!)


 2週間前に誓った『慎重に』はいったいどこへ行ってしまわれたのか……


 ミアズマと同ランクの魔物がいる北側で進化するなんて、何て迂闊なことをしてしまったのだ。だが、いくら嘆いても後の祭り。今はこの危機をどう乗り切るか考えなくてはならない。


(って言うか、考える前に逃走だ!)


 僕はぶっつけ本番で飛翔スキルを使い逃走を図った。慣れない操作に何度も木にぶつかりそうになりながら、必死に南へと飛んで行く。後ろから追いかけてくるのは、ダークウルフ4頭のようだ。後ろを見ずに当てずっぽうでポイズンバレットを撃ちつつ、ジグザグに飛びながら逃げ回る。そうこうしているうちに、段々と飛ぶコツを掴んできた。命がけで飛んでいるからか上達が早いようだ。何はともあれ、上手く飛べるようになればこっちのものだ。割と高い素早さと相まって、2時間ほどで黒い狼たちを撒くことができた。


 ダークウルフの追撃を見事に振り切った僕は、目立つ銀色の身体を最大限隠しつつ、慎重に拠点を目指す。レベルが上がり、探知範囲が広くなった生命探知と魔力探知をフル活用し、何とか5日かけて森の北側を脱出し拠点に帰ってくることができた。進化直後が危険なんて百も承知だったのに。うっかりで命を落としてしまわないように、もっと気を引き締めていかなくては。


 この世界で生きていく覚悟を改めて確認した後、拠点で改めてステータスとスキルを確認し、レベル上げの計画を立てていくのであった。




第一章 完

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