第125話 奇怪のエクセル

~side ???~


 時は少し遡る。ミストとオッチョが決勝戦で戦っている間の、悪魔の門デビルズゲート最下層ではジャバウォックが二人の侵入者と戦っていた。


「よっしゃ、ここまで来たらもう時間の問題やな!」


「そうね、ここまで来たら後は私だけで大丈夫でしょう」


 その会話通り、侵入者二人はほぼ無傷。対するジャバウォックは満身創痍だった。


「グフ、古の種族が……女神様も厄介な者を創りおって……しかし、生き残りがこれほどのレベルとは……ゴォフ」


 身体に無数の傷を負ったジャバウォックは、忌々しげに侵入者を睨みつける。


「おや、ワイの手下から連絡や。武闘大会が終わったみたいやな」


「あら、それじゃあ先ほどジャバウォックが口を滑らせた、『ここまで到達した強者』が気まぐれで来るかもしれないわね」


「せやな、万が一にもないと思うんやけど、もしそいつがオットーを連れて来たらやっかいやな。今のうちに潰しておくか」


「そうね、こっちはもう私一人で何とでもなるわ。いい加減、オットーとの決着もつけて来なさい。武闘大会とやらで、疲れてるんだろうし」


「よっしゃ! お言葉に甘えさせてもろうて、あの頑固な豚野郎を今度こそワイの魔法の餌食にしてくれるわ!」


 そう言い残して、ピエロ風の男は今まさに武闘大会が行われている闘技場へと転移した。



~side ミスト~



「よしよし、予定通り各国の強者が集まってるなぁ。全員ワイらの経験値になってもらおうか!」


 突如現れた魔人がそんなことを言い始めた。一体何者だ? こいつは。


種族 上位魔人グレーター・デーモン

名前 エクセル

ランク  SSS

レベル 165

体力    2312/2312

魔力    2155/3384

攻撃力   2211

防御力   2326

魔法攻撃力 3331

魔法防御力 3315

敏捷    2307


スキル

鑑定妨害 Lv25

魔力探知 Lv30

幻惑 Lv30

闇魔法 Lv30

炎魔法 Lv30

風魔法 Lv30

土魔法 Lv30

時空魔法 Lv21

聖耐性 Lv30

闇耐性 Lv30

炎耐性 Lv30

水耐性 Lv30

雷耐性 Lv30

土耐性 Lv30

風耐性 Lv30

混乱耐性 Lv30

麻痺耐性 Lv30

魅了耐性 Lv30

睡眠耐性 Lv30

石化耐性 Lv30

呪い耐性 Lv30


称号

古の種族

邪神の使徒


 ははあ、なるほど。こいつが魔王四天王の生き残り奇怪のエクセルだね。そして種族は上位魔人グレーター・デーモン。僕やオッチョさんと同じく古の種族だ。しかも、レベルがかなり高いね。ステータスは魔法よりだから、物理戦ならオッチョさんでもいけそうな……なるほど、そういうことか。

 やっぱり持ってた幻惑スキル。このせいでズメイは『攻撃がすり抜けるように見えた』って言ってたんだな。


 しかし、これだけレベルが高かったら、ここにいる人達を倒したって大した経験値にならないだろうに。となると、他にも目的があるってことなのかな。まあ、邪魔者の排除ってところだと思うけど。


「その辺の弱っちいヤツらの相手はヨルムガン、アジダハ、お前達に任せたわ。それとここに帝国の第2皇子と第3皇子がおるはずや。そいつらは確実に殺すんや。わかってるな、サミュエル」


 おおっと!? 敵地の真ん中に一人で殴り込みかと思ったら、しっかりお仲間もいたのか。竜人の二人にサミュエルとやらか……サミュエル? おや、あの細目のサミュエル?


 そう言えば脱獄したって言ってたっけ? まさかこんなやつと繋がっていたとは。


 観客席から飛び出してきたサミュエルは、立て続けに3体の召喚獣を呼び出した。

 1体目はポイズンスパイダー、2体目はシャドウマンティス、3体目は……あれは、ドラゴンか? でも何属性のドラゴンかわからない。なぜなら、あれはドラゴンゾンビだから。


「おい、テオドールいるんだろう! 出てこないと観客どもをぶち殺すぞ!」


 3体の召喚獣を従え、目が真っ赤に血走っているサミュエルが、口から唾を飛ばしながら叫んでいる。明らかにまともじゃないその様子に、今までことの展開について来れず、呆然としていた観客達が我先へと逃げ出し始めた。


 それにしても、まともそうに見えない割に知恵が回るじゃないか。そんな風に言われたら、責任感の強いテオドールは出てくるしかないよね。


「余はここだ! 相手をしてやるからかかって来い!」


 観客席から躍り出てきたテオドール。その後ろにはしっかり『英雄の剣』のみんなもいる。そして、テオドールの横に並び立つのは、オーロラとスノウだった。


(何だろう。ちょっとモヤっとするな)


 テオドールとオーロラが並び立つ姿を見て、少し嫌な気持ちになってしまった。そんな器の小さい自分にも嫌気がさす。


 まあ、向こうはスノウがいるから大丈夫でしょう。気持ちを切り替えて、こっちに集中しようっと。


「エクセルなんだなぁ、性懲りも無くまた邪神の復活を企んでるみたいなんだなぁ」  


 おっと、オッチョさんはエクセルのことを知ってるみたいだな。古の種族同士、何やら因縁なんかもありそうだ。


「オットーか。神を敬わんお前さんには、わからんやろうな。毎度毎度、邪魔しくさって。けどな今回ばかりは邪魔させへんで」


 何だ、今回ばかりは邪魔させないって? 自分達から出て来たくせに。少しばかりエクセルの言葉に違和感を感じたけど、とりあえずこの場を何とかするのが先か。


 オーロラ達はすでに戦闘に入っていた。一番の脅威であるサミュエルのドラゴンゾンビはスノウが、シャドウマンティスはスパークが押さえ込んでいる。

 サミュエルとポイズンスパイダーにはテオドールと兄であるダライアスが共闘するようだ。

 さらに『英雄の剣』のジャック達は、どこからともなく現れた黒いローブの集団の相手をしている。


 一方、竜人族のヨルムガンとアジダハの前にはハヤトとルサール、そしてイグニートさんが立ちはだかっている。

 ギルドマスターのグランドールと神下十二部隊部隊長のブライアンは、観客達の避難を手伝っていた。おや、どこかで見たような冒険者パーティーが、一緒になって観客達を誘導しているな。あの後ろ姿は鑑定しなくてもすぐにわかる。見に来ていたんだね、この武闘大会を。


 そして、オッチョさんとエクセルの方に目を戻すと、今にも戦いが始まりそうだった。慌てて僕はその間に割って入る。戦いが始まる前に、どうしてもエクセルに確認したいことがあったのだ。


「何やお前さんは? みない顔やな? 邪魔するなら先に消えてもらうで」


 オッチョさんとの因縁の対決を邪魔されたせいか、苛立ちを隠さずエクセルが凄んできた。が、正直格下のエクセルに凄まれても何の恐怖も感じない。こいつ、僕がオッチョさんに勝ったことを知らないのかね?


 それよりも、同じ幻惑スキル持ちとして、どうしても聞かねばならぬことがあるのだ。僕は緊張からか、震える声でエクセルに問いかけた。








「その着ている服は本物か?」

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