第68話 vs 魔王子ハヤト ○

 ハヤトと同時に動いたのはオーロラの召喚獣であるスノウだ。正しくは、ハヤトの動きに反応できたのはスノウだけだったという意味だが。


 ハヤトが最初に狙ったのは、治癒士のダリアだった。パーティー同士の戦いは、回復役から潰せというセオリーに乗っ取った行動だ。

 もちろん、誰もが警戒していたのだろうが、想像以上のスピードにスノウ以外誰も反応できなかったといったところか。


 ハヤトがダリアに槍を突き刺す直前に、唯一反応できたスノウが間に割って入り、風魔法第4階位"エアショット"を放った。


 スノウとの魔力差からそれほどダメージは受けないと思われるが、展開によっては長期戦もあり得ると判断したのか、ハヤトは背中の翼を大きくはためかせ、ダリアへの攻撃を諦め上空へと逃げた。


「あ、ありがとうスノウ」


 ダリアが青ざめた顔でお礼を言う。まあ、たった今死にかけたのだから無理もないか。


 ハヤトのスピードに、後手に回ったら勝ち目はないと悟ったのか、アルマンディが弓術スキルの"速射"を、それに合わせて、ジャックが格闘術スキルの"発勁"を放った。どちらも威力より発動スピードを重視した技だ。


「はっ! その程度かよ!」


 しかし、Bランク相手なら必中となり得る強力なスキルもSランクの魔人相手には通用しなかった。アルマンディが放った矢はいとも簡単に躱され、ジャックが放った不可視の気の塊は槍の一突きで霧散してしまったのだ。


「ガァァァァ!」


 そこにテオドールの召喚獣であるスパークが、炎のブレスをお見舞いするが、ハヤトの目の前に現れた闇魔法第4階位"ダークウォール"がそれを防ぐ。


「今度はこっちの番だな!」


 3方向からの攻撃を完璧に防ぎ切ったハヤトが、お返しとばかりに雷魔法第3階位"サンダーウェーブ"を放ってきた。


「まずい! 散れ!」


 雷魔法を察知したテオドールが叫ぶのと同時に、全員が散開しようとしたが、驚くべき速度で飛んできた雷の波に、逃げ遅れたジャックとアルマンディとテオドールのもう1匹の召喚獣であるカイオンが倒れてしまった。


 死んではいないようだが、麻痺の追加効果があるようで、地面に倒れたまま痺れて動けないようだ。


 さらにハヤトは一瞬でスパークの背後に回り、槍での一撃をお見舞いしようとしたが、その動きを察知したスノウが火魔法第2階位"ファイアーバレット"を唱えた。

 おかげで、ハヤトが炎の弾丸を躱す隙にスパークは、致命傷となり得る槍の一撃から間一髪逃れることができた。


「スノウか! 助かる!」


 しゃべれないスパークの代わりにテオドールがお礼を言うが、一度に3つの戦力が落とされたその顔には余裕がない。


「みんな下がって!」


 そこに魔術師のパールが魔力を大量に注ぎ込んだ、土魔法第4階位の"アースウォール"で分厚い土の壁を創り出した。


 土の壁がハヤト達と英雄の剣を分断したその瞬間、テオドールがスパークに撤退の指示を出した。


 ここから帝都まで全力のスパークなら数十分で着ける距離だ。ハヤト相手に時間を稼ぐのは難しいかもしれないが、せめて国王にハヤトとサヤカの存在を知らせたいとの思いからの行動だろうが……


「グァァァ!」


 スパークは帝都に向けて飛び出して直ぐに、見えない壁に激突し地面に墜落してしまった。


「おいおい、そう簡単に逃すわけないだろ。お前らには見えないかもしれないが、出会った時からすでに、サヤカの結界で閉じ込めさせてもらってるんだよ!」


 分厚い土の壁をいとも容易くぶち壊しながら現れたハヤトが、スパークが墜落した理由を説明する。わざわざ説明したのは、残っている者達の心を折るためだろう。そして、その説明を聞いていたサヤカが何故かドヤ顔をしている。僕以外誰も見ていないのにもかかわらず……


「……降参する。おそらくそちらの狙いは、余の命であろう。余はどうなってもよいが、他の者の命は助けてやってはくれまいか?」


 6人と3匹のパーティーだったが、すでに2人と2匹が戦闘不能に陥っている。残されたのは後衛ばかり。スノウも無傷で残ってはいるが、ハヤトが明らかに手加減しているこの状況では、やられるのは時間の問題だろう。


 まだ誰も死んではいないこの状況だからこその決断と言える。テオドールは、自分の命と引き換えに他のメンバーの命を守ることにしたのだ。


「そんな! やめて、テオドール!」


 ダリアが悲痛な叫び声を上げるが、テオドールは静かに首を横に振るだけだった。


「へー、いい心がけじゃねぇか! 俺達の狙いも第3皇子だけだからな。他の者を殺さずに済むんだったら、それに越したことはないぜ」


 意外にもテオドールの申し出を素直に受けるハヤト。やはり元日本人としては、人を殺すのに抵抗があるのかな。それでもテオドールを見逃すつもりはないあたりが、こちらの世界に馴染んできている証拠かもしれないが。


 なんだかんだで、僕もオーロラを守るためなら人を殺す覚悟ができているからね。


 チラッとオーロラの方を見ると、胸の前で組んでいる手は震え、顔は真っ青になっている。今にも倒れてしまいそうだ。


(この辺りが潮時か……)


種族 ミラージュキャット(変異種)

名前 ミスト

ランク A

レベル  80 進化可 

体力    920/920

魔力    1100/1100

攻撃力   770

防御力   750

魔法攻撃力 1210

魔法防御力 1200

敏捷    1050


スキル

特殊進化

言語理解

詠唱破棄

暗視

念話

アイテムボックス Lv30

鑑定 Lv30

ステータス隠蔽 Lv25

思考加速 Lv30

生命探知 Lv30

魔力探知 Lv30

敵意察知 Lv29

危機察知 Lv29

気配遮断 Lv25

魔力遮断 Lv25

体力自動回復 Lv27

魔力自動回復 Lv30

幻惑 Lv27

魔眼(麻痺) Lv23

光魔法 Lv30

水魔法 Lv30

風魔法 Lv26

土魔法 Lv26

雷魔法 Lv30

時空魔法 Lv19

重力魔法 Lv19

猛毒生成 Lv30

麻痺毒生成 Lv25

睡眠毒生成 Lv25

混乱毒生成 Lv25

痛覚耐性 Lv25

猛毒耐性 Lv26

麻痺耐性 Lv22

睡眠耐性 Lv22

混乱耐性 Lv22

幻惑耐性 Lv22

水耐性 Lv30

風耐性 Lv26

土耐性 Lv26

雷耐性 Lv30

瘴気 Lv22

硬化 Lv20

雷纏 Lv27


称号

転生者 

スキルコレクター

進化者

大物食いジャイアントキリング

暗殺者

同族殺し

加護主


 僕は自分のステータスを確認し、もう一度オーロラの顔を見て覚悟を決めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る