第116話 武闘大会まで
さて、昨日はウルグルのせいでちょっと疲れてしまった。あの後、彼がどうなったのかは知らないけど、まあ自業自得ということで。
それよりも武闘大会についてだね。昨日、ギルドマスターから正式に武闘大会への参加依頼を受けた。昇格試験の後、呼ばれていたことを忘れてたんだけど、受付のお姉さんが教えてくれてよかった。あのお姉さんの名前は……忘れてしまった。
まあ、それでその時に詳しく話も聞くことができたのだ。
武闘大会の開催は、1ヶ月後の金の日から日の日までの3日間。場所はヴェンデリン王国だそうだ。王国なら転移ですぐにいけるから、お店の日以外は
あっ、そういえば魔王国デモナイズに
そうと決めた僕は、フォッグの姿になって必要そうな物を確認し、聖国へと転移した。魔王国は聖国から南に300~400kmくらいの海上に浮かぶ島にあるらしいから、聖国から空を飛んで向かうことにしたのだよ。
聖国から空を飛ぶこと数時間、ようやく大きな島が見えてきた。その島に近づいてみると、中央に大きな城があり、その周りには思ったよりきれいな街並みが見える。魔人と言えども、普通の暮らしをしているんだなとちょっと感心してしまった。
さて、今回はデモナイズには用はないので島の西にある
すると、僕はすぐに荒野の中に妙に人工的な入り口を見つけた。地下へと続くのであろうぽっかりと四角い口を開けた、石でできた入り口だ。地面に降り立ち中を覗くと、すぐに階段になっているようで、その奥はあまりよく見えなかった。
魔法で明かりを出してその階段を降りていく。しばらく降りると第1階層についたようで、目の前には洞窟型の
「まずは下の階層に降りる階段を探そうか」
と言っても、1階層に出てきた魔物はスライムやインプといった低レベルな魔物の上、僕を見たらすたこらさっさと逃げ出していく。わざわざ追いかけて倒すつもりもないので、スルーして階段を探す。
程なくして2階層へと降りる階段を見つけた。
そんな感じでどんどんと下へと降りていき、この日は夜までに10階層へとたどり着くことができた。
夜は転移で自宅へと帰り、しっかりと夕食を摂った後、ベッドで気持ちよく眠ることができた。転移様々だね。
次の日、朝食を食べてすぐに
その後も、1日10階層ずつ進み4日間かけて40階層に到達。そこでいったん探索を中断し、残りの3日間は素材の販売に精を出す。ギルドよりお高めに値段を設定している割に売れ行きは好調だ。ゴーダさんをはじめ、かなり名のある職人さん達がお高い素材を買ってくれているからかな。
つい先日なんかは、シルフィと名乗るエルフさんが錬金術に使うと言って、コカトリスの石化袋や、ワイバーン変異種の心臓なんかを買っていった。一体何を創るつもりなんだろう。ついでに神霊水は無いのかと聞かれたので、『ない』と答えておいた。てっきり個別に依頼されるのかと思ったけど、薄く微笑みながら『わかりました』とあっさり引き下がってしまった。なんかちょっと怪しかったな。
まあ、そんなこんなで3日間でかなりの売り上げを稼ぐことができた。具体的にはこの家が100軒ほど買えるくらいには……そりゃ、素材を自分で集められたら儲かるわな。
そして、3日間の営業を終えた僕は再度
今回は40階層からのスタートだけど、まだまだ魔物のレベルが低く僕のレベルは一つも上がっていない。いや、80以上はあるから普通に見たら低くはないんだけど、僕のレベルは105だからね。早いところ100以上の魔物が現れてほしいものだ。
この辺から少し
そして3日間で15階層進んだ僕は4日目の木の日、55階層へと足を踏み入れた。ちなみにこの階層からレベル100を超える魔物が現れ始めた。
種族 パズズ
名前 なし
ランク SS
レベル 102
体力 1522/1522
魔力 1765/1765
攻撃力 1183
防御力 1044
魔法攻撃力 1749
魔法防御力 1721
敏捷 731
スキル
念話
拳術 Lv18
闇魔法 Lv22
炎魔法 Lv19
水魔法 Lv19
闇耐性 Lv22
炎耐性 Lv19
水耐性 Lv19
風耐性 Lv19
混乱耐性 Lv19
毒耐性 Lv19
魅了耐性 Lv19
飛翔 Lv22
まず初めに現れたのは悪魔族の中でも上位種族のパズズだ。真っ黒な猿に似た身体に黒い翼、顔は凶暴なゴリラといった感じで耳は大きくとがっている。鋭い爪は拳術スキルと相まって、かなりの脅威となり得るだろう。それに、こいつの本領は魔法攻撃にある。闇魔法、炎魔法、水魔法を使いこなし、耐性もなかなか充実している。
パズズは僕を見つけると、『キィキィ』と甲高い声を上げながら嬉しそうに近づいて来る。にやりと笑うその口には鋭い牙がずらりと並んでいた。あの牙で噛まれるのだけはごめんだね。
だがしかし、レベルはほぼ同じでもステータス的には僕の半分ほどしかない。接近戦にせよ、魔法合戦にせよ僕が負ける道理はない。僕はゴーダから受け取ったばかりの、クリスタルドラゴンの爪で創られた片手剣を構え、パズズと相対する。剣に魔力を流すと、クリスタルソードが美しく輝く。ただ輝いているだけではない、硬度も切れ味も増しているのだ。
まずは手始めにとパズズが闇魔法第2階位"ダークウィップ"を放ってきた。数十本の闇の鞭がそれぞれ意思を持っているかのように迫り来る。
「"シャイニングウォール"!」
僕は光魔法第4階位の"シャイニングウォール"を発動した。僕の目の前に光の壁が現れ、壁に当たった鞭がことごとく消滅していく。
「ついでに"シャイニングレイン"!」
今度は逆に僕が放った光の雨がパズズを襲う。今度はパズズが頭の上に"ダークウォール"を展開するが、光の雨は易々と闇の壁を貫き、そのまま逃げ回るパズズの身体を削っていく。
光の雨が止んだときには、パズズは血まみれになっていた。
「ウギャァァァァァァ!」
血だらけのパズズが怒りの咆哮をあげる。
「うるさい」
その背後に瞬間移動し、僕は反応できなかったパズズの首を切り落とした。
と、同時に背後に結界を張る。
ガキィィィィン!
新たな敵が持つ三つ叉の矛が、僕の結界に当たりはじき返された。
「気が早いやつめ」
今度の敵は紫の巨体に顔は……牛? 頭に2本の角が生えており背中にはこれまた紫の翼が生えている。いや、あの巨体で空飛べるの!?
種族 ベリアル
名前 なし
ランク SS
レベル 110
体力 2062/2062
魔力 982/982
攻撃力 2187
防御力 2095
魔法攻撃力 954
魔法防御力 1678
敏捷 680
スキル
念話
生命探知 Lv20
槍術 Lv23
闇魔法 Lv24
風魔法 Lv19
土魔法 Lv23
闇耐性 Lv24
風耐性 Lv19
土耐性 Lv23
雷耐性 Lv23
混乱耐性 Lv22
毒耐性 Lv22
魅了耐性 Lv22
飛翔 Lv23
おおっと、ようやくレベル105を超える魔物が現れたぞ。ふむふむ、ベリアルとな。こいつも上位の悪魔族っぽいね。攻撃力は2000超えか。通常攻撃は問題ないけど、スキルを使われたら傷くらい付くかな? まあ、当てさせないけどね。
しかし、物理系のステータスに対して魔法系のステータスは低いか。ここはいっちょ、新しい魔法をまた試してみるとするか。
相変わらず結界をガシガシやってるベリアルの頭上に、水の龍、土の龍、雷の龍、風の龍を並べてみた。
4匹の魔法でできた龍を見たベリアルは、結界を叩くのを止め薄ら笑いを浮かべながらそーっと後ずさりをする。こいつ、逃げようとしているな。
僕は4匹の龍を操作し、ベリアルを取り囲む。
「やれ!」
僕の命令とともに4匹の龍が一斉にベリアルへと襲いかかった。絶望の表情を浮かべたベリアルに、4匹の龍が同時にぶつかり爆発した。
とんでもない、規模で爆発した。僕も結界が間に合わず吹き飛ばされた。各種耐性でダメージはないけど、洞窟の壁にぶつかるのが痛そうだったので、久しぶりに硬化を使った。うん、身体は無事だったけど洞窟の壁にめり込んだね。どんだけの威力だったんだあの爆発は。
その後も続々と現れる上位悪魔を倒しながら進み、本日の終わりには60階層に到達し、レベルも111へと上がっていた。
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