第7話 芋虫の大群 ○
僕が猛毒草に進化してから5日がたった。相変わらず動物や魔物の出現率は低く、この5日間もただただレベル上げとスキル上げの日々だ。しかし、進化でレベルが1になったおかげでレベルが上がり易くなっていた。すでに3つ上がって4になっている。まだまだ進化までは先が長そうだけど。
ということで、今日もせっせとスキル上げに励んでいたらヤツらは突然やってきた。光合成を頑張り過ぎていたせいで、探知をサボっていたのが災いしたのだ。ちなみに生命探知のレベルが8になっているので、魔力消費なしで半径80mまでは探知できるようになっている。ただし、探知には自動お知らせ機能はないので、今のように別のことに夢中になっていると気がつかないこともあるのだ。
(無意識でも気がつくように訓練しないとな)
と、考えてはみたものの今はそれどころではない。気がついた時には周りを囲まれていた。
もぞもぞと動き、辺りの葉っぱを食い尽くしていくその姿はまさに巨大な芋虫だ。そんな芋虫が、ざっと数えても30以上。今世紀最大のピンチかもしれない。
種族 グリーンワーム
名前 なし
ランク F
レベル 20
体力 45/45
魔力 18/23
攻撃力 38
防御力 47
魔法攻撃力 21
魔法防御力 19
敏捷 27
スキル
粘糸 Lv6
種族名を見て確認したがやっぱり芋虫のようだ。一番先頭のヤツを鑑定してみたのだが、アシッドワームより少しだけ弱いといったところか。ただ、今回は数が異常に多い。僕の魔法は1対1には向いているが、たくさんで来られると捌ききれないという弱点がある。
しかし、これだけの数がいると黙って見ていても食べられて終わりだろう。少しでも数を減らして、食べられる確率を減らさなくては。
("ポイズンエッジ"!)
まずは鑑定した先頭のグリーンワームにポイズンエッジを放ってみる。この5日間でレベルが3つ上がっていたのが功を奏したのか、何とか一撃で倒すことができた。だが今の魔力では満タンでも10発ほどしか撃つことができない。しかも、今の今まで魔法を上げている最中だったので、魔力が半分くらいしか残っていない。この状態で30匹の芋虫相手はきつすぎる。
しかし、泣き言を言ったところで芋虫たちが止まってくれるわけでもない。僕は覚悟を決め、自分に近づいてくる芋虫を優先的に駆除していくことに決めた。
(くそ! あと何匹いるんだ!)
近づいてくるものから順番に倒していき、すでに僕の周りには7匹の芋虫が転がっている。すぐに"アイテムボックス"に収納しなかったのは、仲間の死体を見て動きが鈍くなるのを期待したからだ。だけどその期待は見事に裏切られた。知能が低いからなのか、彼らは仲間の死体を乗り越えただひたすらに葉っぱを食べ続けている。
いよいよ持って魔力が追いつかなくなってきた。目の前まで来ているグリーンワームをようやく1発分回復した魔力を使って倒したが、その直ぐ後ろに2匹のグリーンワームが控えているのはわかっていた。しかし、魔力がすっからかんの僕はどうすることもできない。僕は為す術もなく2匹のグリーンワームにかじられてしまった。
(痛い! 痛い! 痛い!)
なぜ植物に痛覚があるのか? そんなことを考える余裕もなく、僕は激痛にあえいでいた。2匹のグリーンワームがそれぞれ僕を一口ずつかじっただけなのに、その瞬間、予想だにしなかった激痛が僕の体中を駆け巡ったのだ。
(すいません! すいません! 今まで意味もなくむしっていた植物のみなさんごめんなさい!)
植物の身体でこんなに痛みを感じるとは、夢にも思っていませんでした。好きな子ができたときに、花びらを一枚ずつむしりながら『好き嫌い』とかやってすいませんでした。あれって拷問だったのですね。僕だけが痛いのか、植物みんなが痛いのかは確かめようもないが、これからは植物にも優しくしようとこの時誓ったのだった。
だが、僕をかじった芋虫どもも無事では済まされなかったようだ。『ギョォォォォ!』という鳴き声を発しながら、その場でもがき苦しんでいるようだ。おそらく僕を食べたことで、猛毒に侵されたのだろう。ただの毒ではこれほどの即効性はなかったが、そこはさすがは猛毒といったところか。何て考える余裕が出てきたのは、僕が持っているスキル"体力自動回復"のお陰だろうか。
かじられた時に減った体力が時間とともに回復していく。それに合わせて無くなった部分も少しずつ再生していく。"体力自動回復"は他に体力の回復手段がない僕にとって、まさに命綱とも言えるスキルだ。取っておいてよかった。
しかも、ありがたいことに2匹のグリーンワームがもがき苦しんでいるお陰で、他のグリーンワーム達が近寄れないでいる。この隙にさらに近くにいた2匹を倒すことに成功した。
その後も
僕の葉の部分は半分ほどなくなっていたけど、どうにか痛みにも耐え、生き残ることができたようだ。というか、途中から痛みに慣れてきたのか、あまり痛く感じなくなっていた。
一息ついたところで、グリーンワームの死体を回収する。猛毒にやられたものは外傷はほとんどなく、綺麗なままだったが、身体に毒が残っていたら素材や食材としての価値はないかもしれない。それでも一応全て回収しておいた。何かの使い道があるかもしれないし、何より放っておいたら別の魔物を引き寄せてしまうかもしれないから。
この辺りのもったいないという感覚は、日本人だった頃の名残なのだろうか。
さて、グリーンワームを回収し終え、ひと段落ついたところでステータスを確認しておこう。アシッドワームよりは弱かったが、数がいただけに経験値もそれなりに手に入っただろうから。
種族 猛毒草
名前 なし
ランク G
レベル 24
体力 15/43
魔力 6/92
攻撃力 37
防御力 45
魔法攻撃力 94
魔法防御力 94
敏捷 0
スキル
特殊進化
言語理解
詠唱破棄
アイテムボックス Lv8
鑑定 Lv6
思考加速 Lv7
生命探知 Lv8
魔力探知 Lv7
敵意察知 Lv7
体力自動回復 Lv5
魔力自動回復 Lv7
光魔法 Lv8
水魔法 Lv9
時空魔法 Lv3
重力魔法 Lv3
光合成 Lv8
猛毒生成 Lv6
痛覚耐性 Lv2 New!
称号
転生者
スキルコレクター
進化者
おおぅ、多少弱めとはいえ、さすがに30匹も倒せば経験値もそれなりにもらえるようだ。レベルが4から一気に24まで上がった。魔力関係のステータスはもうすぐ3桁の大台に乗りそうだし、水魔法のスキルはあとひとつでLv10だ。それに新しいスキル"痛覚耐性"がある。これは、痛みに対して耐性が出来るスキルのようだ。よかった。かじられている途中から痛みをあまり感じなくなっていたから、正直、変な世界に目覚めてしまったのかと思ったが、このスキルのおかげだったか。なかなか上がりづらかった"体力自動回復"も2つほど上がっている。たくさん囓られたかいがあったというもんだ。これで益々死にづらくなったのではなかろうか。
周囲の葉が食い散らかされ、まだ少しグリーンワームの体液の匂いが漂うであろう森の中で僕はまたせっせとスキル上げに励むのであった。
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