竜の宝玉
@odan
竜の宝玉
冒険騎士ホライン
はるか遠い昔のこと。神々の時代が終わり、神と英雄の時代が終わり、そして私たち人間の時代が訪れた。
悪魔も竜もまたはるか遠い昔の物語になろうとしていた頃に、一人の旅の騎士がいた。町から町へ、夢と冒険を探して歩く、流浪の騎士。その名も冒険騎士ホライン・ゲーシニ。
大そう腕の立つ若者で、王都ベレトの騎士団では収まらないと、その身一つで冒険に明け暮れる。
◇
そんなある日ホラインは、ベレトの西の国バイダにて、ディンの森に棲むという竜のうわさを耳にする。
さて、竜とはいかなるものか?
さしものホライン・ゲーシニも、竜にお目にかかったことはない。冒険騎士と言うからには一度会わねばなるまいと、ディンの森を目指して西へ行く。
そうして着いたは小さな村、その名をハバーロという。
◇
ディンの森にほど近い小さな村ハバーロの、そのまた小さい盛り場で、昼間から男たちがたむろしている。
「ああ、楽がしてえ、楽がしてえ。楽して稼いで儲けてえ」
「それならディンの森に行け。ディンの森には竜がいる」
「竜は宝を守るもの。もしも竜を倒せれば、一生遊んで暮らせるぞ」
通りがかりにこれを聞いたホラインは、首を突っこみ話を聞く。
「竜のことを知っているのか? 私の名はホライン・ゲーシニ。世界を旅する冒険騎士」
「冒険騎士? 奇妙な騎士がいるもんだ」
「そんなに知りたきゃ教えるが、竜は人の手に余る。けがをしても知らないぜ」
腕自慢のホラインは、男の忠告もどこ吹く風。
「ははははは! けがを恐れていて騎士がつとまるものか。あなどるな」
「けがですむならまだ良いが、命を落とすかも知れないぞ」
「今まで何人もの勇者が竜に挑んだが、誰も討ち果たせなかった」
何と言われても望むところと胸を叩く。
「私は冒険騎士である。戦士が戦で散るように、冒険で散るなら本望だ」
それは勇気か蛮勇か。男たちは顔を見合わせ竜の脅威を語りはじめた。
「森に棲むは緑の竜。森一番の大樹の陰にねぐらを持つ」
「その大きさたるや家ほども。牛や馬とは比べものにならない」
「そのうろこは岩より硬く、その口からは炎を吐き、その爪は鉄をも穿つ」
しかし、ホラインは話をそのまま信じない。
「この中で誰か竜を見た者は?」
男たちは口をつぐむ。全てはうわさ。人伝に聞いたもの。
ホラインは得意になって壮語する。
「東の鬼はトラだった。北の悪魔はクマだった。どいつもこいつもうわさばかり。本当に竜がいれば良いのだが」
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