勇気の証明
肩を落とすビリーに対し、ホラインは静かに告げた。
「怪物は確かにいたぞ。もしも誰も信じずとも、私だけは知っている」
「でも、ぼくがうそつきじゃない証拠には……」
彼は仲間を見返したかった。勇気を認めてもらいたかった。願い叶わず、彼は落ち込む。
ホラインは
「不満かな?」
「いえ、それは……」
事実ビリーは不満だった。よそ者の旅人に認められて、だから何だという話だ。彼が求めていたものは、それではない。
ホラインは忠告した。
「そなたは功をあせっておる。一度にみなを見返して、あっと言わせてやりたいと。だが、それはならぬこと。信用は一度に勝ち取るものではない。不断の行いあってのもの」
「わかっています」
「いや、それがわかっておらぬ証拠だよ。善人であらんとするなら、善行を積まねばならぬ。勇気を認めてほしければ、その勇を示さねばならぬ。心の内で一人だけ良いつもりでおってはいかぬ」
「だから、ぼくは怪物を!」
「なあビリーよ、うそつきと呼ばれる者は
ホラインの言葉にビリーは黙り込む。
なおも彼は続けて語る。
「おそらくは、あの怪物の存在がウソか
「だったら、ぼくはどうすれば……」
「どうにもならぬ。ただ強くなる他にない」
「でも、あなたのお話では、強さは勇気ではないと……」
「だが、強くなるには勇気が必要だ。強さを得ては勇気を忘れ、また強くなるために勇気を出す。勇気といっても、大そうなものではない。小さなことの積み重ね」
とうとうビリーは何も言わなくなってしまった。
言いすぎたかとホラインは両目を閉じる。
「悪かった。知った風なことを言った」
「いえ、そんな……」
そのまま二人はジンカの村に引き返す。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます