決死不殺の心
ホラインはぬかるむ土を避けて進み、カトブレパスの側に立つ。
カトブレパスは人の気配を感じ取り、動きを止めた。
緊迫の時。カトブレパスが振り向く瞬間、ホラインは剣を振り抜き、カトブレパスの
横
残る片目で敵を殺さんと、カトブレパスは蛇がとぐろを巻くように首をねじる。
いやしかし、返す剣がわずかに早い。あざやかなり、剣技・水平二段斬り。
ホラインは剣を納めて距離を取る。
死の魔眼を失ったカトブレパスは、もはや無力。苦しげにうめいて倒れ、うずくまる。
とどめを刺すか刺すまいか、ホラインがしばらく様子を見ていたところ……まか不思議、カトブレパスは彼の前で見る見る縮む。
(これは何だ?)
身構えるホラインだが、カトブレパスはモグラネズミに姿を変えて、泥にもぐり消え去った。
予想だにせぬ事に、ホラインは立ちぼうけ。
(魔性を失い、無力なものになったのか? わからぬ、わからぬ……)
理解不能なできごとに、ホラインは難しい顔でうなり、ビリーの元に帰る。
◇
ビリーは両目を押さえつけ、カトブレパスを絶対に見ないように伏せていた。
怖がりすぎとホラインは思うものの、死の危険がある所では臆病になるのは決して悪くない。
「これビリー、怪物は片づけたぞ」
「ホラインさん、終わりましたか?」
「そうだ。もう危険はない」
起きたビリーは茂みから顔だけ出して、おっかなびっくり辺りを見回す。
「ええと、それで……怪物はどこに?」
「分からない。両目を潰すと、もぐらに変じて地中に消えた」
「えっ、そんな事が?」
「事実そうなったのだ。しかたあるまい」
「でも……そんな話をしても、誰も信じちゃくれませんよ……」
彼は怪物の存在を証明しにここまで来た。それなのに、わけのわからぬ話をしては、今度は正気を疑われる。
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