死の魔眼
カトブレパスは黒牛を一回り大きくした体を持ち、長い首は大蛇のようにうねっている。見た者を殺すという目は、長いたてがみに隠れて見えない。
カトブレパスは土の上をかぎ回るように首をたらして、のろのろ歩く。頭が重くて上がらぬようだ。その姿の奇怪なことといったらない!
◇
ホラインは忍び足でカトブレパスの背後に回る。
しかしこのカトブレパス、まるでホラインに気づかない。あまりにのんき。
その時に小鳥が一羽、カトブレパスの目の前をチチチと鳴いて横切った。どうしたことか、小鳥は宙で羽ばたきを止め、ぽとりと地面に落ちてしまう。
おお、あれこそ死の
あわれな小鳥は己の死にも気づくまい!
ホラインもこれには驚き、目を見張る。
目を合わせずとも、見られるだけで死に至る。カトブレパス、げに恐ろしき幻獣なり。いかにして、かようなものが生まれるのか。
あまりに危険で見すごせぬと、ホラインは幻獣退治を決意する。
カトブレパスはのろのろ小鳥に近づくと、死体をしばらく見つめていた。
何をするのかとホラインが見ていると、カトブレパスは大きな声で「ボー」と鳴く。それは牛の鳴き声を太くしたよう。
どこか悲しい響きの声に、ホラインはカトブレパスの
見たものを殺すがゆえに、まともに物を見れぬのだ。うかつに見れば、殺さずとも良いものまで殺してしまう。小鳥に何の
ああ悲し、孤独なるカトブレパスよ。生涯を虚しくすごし終えるのか。
ホラインは情けをかけに剣を抜く。
運命の気まぐれに生み落とされた幻獣よ、己の生まれを呪うなら、騎士の剣が終わらせる。
生あるところ奪う罪あり。腹を満たすため命を食らい、
あわれな幻獣カトブレパスは罪の
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