チェウの大湖

 そんなこんなで二人はチェウの大湖に着いた。平原に広がる大湖は大海のよう。対岸は遠くかすんで見える。

 岸辺には多くの野生の動物が群れていた。はではでしい水鳥に、黒い水牛、レイヨウ、シマウマ。ここは荒野のオアシスなのだ。


 ホラインとビリーは二人、動物を刺激せぬよう茂みに隠れ、様子をうかがう。


「怪物はここにいたのか?」

「ええ、そうです。その時はたった一匹で、なぜか他の動物はいませんでした」

「では、今はいないということか」

「そうですね……見当たりません」


 二人はしばし隠れたままで、怪物の出現を待つ。



 時は経ち、日は頂点に達した後、ゆるゆると西へ沈む。昼下がりも終わる頃、動物たちの姿はまばらになってきた。

 ホラインは待ちくたびれて大あくび。一方でビリーは気を張り、待っている。


 やがて動物は数匹になるも、状況には変化なし……と思いきや、みな一斉に何かに気づいて顔を上げ、一目散に逃げ去った。

 これを見てビリーは横のホラインの肩を揺する。


「何か来ますよ!」

「ああ、わかっておる。そう慌てるな」


 ホラインは震えるビリーの手を払い、じっと湖を観察する。

 現れたのは、不気味な獣。真っ黒い大きな体に、長い首を地に這わせ、のろのろと歩いてくる。

 ホラインはビリーに告げた。


「うわさ話が本当ならば、あの目を見ると死ぬらしい」

「えっ、そんな!」

「あくまでうわさ。真偽のほどはわからぬが、いざとなったら逃げれば良い」

「ホラインさん、何をなさるおつもりですか?」

「どれほど危険か確かめる。凶悪な害獣ならば、今この場で滅さねばならん」


 ホラインは茂みから出て、うわさの幻獣カトブレパスに立ち向かう。

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