王墓の罠

 ホラインと老人は慎重に王墓に入った。先に入ったダーバイルの姿は見えない。


「ダバは先に進んだか。ご老人、お変わりないか?」

「今のところは何ともない」


 王墓の中は、しんと静かで物音一つ聞こえない。ネズミ一匹いないよう。全体的に薄暗く、不気味な巨像が立ち並んでいる。

 巨像はどれも人の体に獣の頭。おそらくは王墓を守る古代神。

 いつぞやの像のように、動き出しはしないかと、ホラインは警戒する。

 だが、像は像。動く気配はまったく無い。


 巨像の並ぶ先には、地下への階段。

 ホラインと老人はダーバイルを追い、地下に向かう。



 先へ先へと進むにつれて、普通は暗さが増すものなのだが、なぜか明るさは変わらない。天井や壁のわずかな隙間から、外の明かりが差し込んでいる。

 王墓の中は完全な一本道で迷う事こそないものの、所々に人骨が転がっている。

 どれもこれもまるで自然に力尽き、飢え死にでもしたかのように、服装に乱れはなく、骨に欠けもない。

 ホラインは人骨を調べ、奇妙に思う。


「何者かと戦って死んだのではないらしい。獣のたぐいのしわざでもなさそうだ。毒かも知れぬ」


 老人は少し考えた。


「毒というと、ヘビか、さそりか。毒ならばワシは友人を助けられたか」

「まだ毒だとは決まっておらぬ。もっと先に進んでみよう」


 そこからは長い下り坂。

 ダーバイルは一人で先にどこまで行ったか、彼の姿はまだ見えぬ。

 人骨も絶えず、どこにいても視界に一つは入ってくる。

 これがみな盗掘者なら、何と人のあさましいことか。

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