盗賊騎士
バルカの国の北東部、アジュへと続く林中の街道で、キャラバンは騎士団に出くわした。騎士たちは盾を構えて整列し、街道を塞いでいる。
国境警備の者たちかとホラインは思ったが、傭兵たちがぞろぞろと馬車から降りて武器を持つ。
彼らが例の元騎士の盗賊なのだ。
正面突破は難しく、御者が馬車を止めさせると、左右からも鎧姿の盗賊がやぶをかき分け現れる。
全員合わせて三十人ほど。いずれも立派な鎧を着込み、いかにも騎士という格好。盗賊なぞには見えはせぬ。
ホラインも馬車から降りて剣を持つ。
◇
盗賊の中でも特に高級な鎧を着て騎乗した男が一人、キャラバンの前に進み出て警告する。
「これより先は我らの領地。命が惜しくば、金と物を置いて行け!」
おそらくは彼が頭領。
それに対して若旦那が言い返す。
「盗賊に恵んでやる物はない!」
彼自身も槍を持ち、応戦の構え。
頭領は激怒し、剣を振りかざす。
「盗賊だと? 我らはアジュの騎士団だ! 平和ボケしたグズどもめ、騎士の力を見るがよい! 総員かかれ! 全軍前進!」
盗賊たちは長槍と盾を構えて行進し距離を詰める。これが軍の戦い方。
固い守りに傭兵も手を出しあぐむ。多勢に無勢、飛び込めば槍のえじき、さりとて下がれば囲まれる。
ホラインは見かねて自ら飛び出した。腰のナタを引き抜いて、目にもとまらぬ早業で投げつける。
雷火のごとくナタは賊の盾と兜を切り裂いて、一人の命を断ち切った。
その両となりの盗賊は、動揺して足を止める。
「うろたえるな! 前を見ろ!」
頭領は注意したが、間に合わない。
隊列が一瞬乱れた隙を突き、ホラインは二人の賊を切り伏せた。剛力で振るわれる剣は、鎧をへこませ骨を砕く。
隊列の一角が崩れたのを見て、傭兵たちも動き出し、わっと乱戦が始まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます