盗賊騎士

 バルカの国の北東部、アジュへと続く林中の街道で、キャラバンは騎士団に出くわした。騎士たちは盾を構えて整列し、街道を塞いでいる。

 国境警備の者たちかとホラインは思ったが、傭兵たちがぞろぞろと馬車から降りて武器を持つ。

 彼らが例の元騎士の盗賊なのだ。

 正面突破は難しく、御者が馬車を止めさせると、左右からも鎧姿の盗賊がやぶをかき分け現れる。

 全員合わせて三十人ほど。いずれも立派な鎧を着込み、いかにも騎士という格好。盗賊なぞには見えはせぬ。

 ホラインも馬車から降りて剣を持つ。



 盗賊の中でも特に高級な鎧を着て騎乗した男が一人、キャラバンの前に進み出て警告する。


「これより先は我らの領地。命が惜しくば、金と物を置いて行け!」


 おそらくは彼が頭領。

 それに対して若旦那が言い返す。


「盗賊に恵んでやる物はない!」


 彼自身も槍を持ち、応戦の構え。

 頭領は激怒し、剣を振りかざす。


「盗賊だと? 我らはアジュの騎士団だ! 平和ボケしたグズどもめ、騎士の力を見るがよい! 総員かかれ! 全軍前進!」


 盗賊たちは長槍と盾を構えて行進し距離を詰める。これが軍の戦い方。

 固い守りに傭兵も手を出しあぐむ。多勢に無勢、飛び込めば槍のえじき、さりとて下がれば囲まれる。


 ホラインは見かねて自ら飛び出した。腰のナタを引き抜いて、目にもとまらぬ早業で投げつける。

 雷火のごとくナタは賊の盾と兜を切り裂いて、一人の命を断ち切った。

 その両となりの盗賊は、動揺して足を止める。


「うろたえるな! 前を見ろ!」


 頭領は注意したが、間に合わない。

 隊列が一瞬乱れた隙を突き、ホラインは二人の賊を切り伏せた。剛力で振るわれる剣は、鎧をへこませ骨を砕く。

 隊列の一角が崩れたのを見て、傭兵たちも動き出し、わっと乱戦が始まった。

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