王と騎士

 そしてベレトの王はホラインとの約束を果たすため、お付きに竜の宝玉を持って来させる。あざやかな緑に輝く宝玉は、この世の物とは思えぬ魔力を持っている。


「ホラインよ、約束どおり宝玉をそなたに渡そう。受け取るがよい」

「ありがたき仕合せにございます」

「もう二度と盗まれぬよう、持ち主とやらに伝えおけ」

「はい。しかと」


 ホラインはただただ平伏するばかり。お付きから竜の宝玉を受け取ると、素直な思いを口にする。


「私は陛下の真意も知らず、無体な願いをなさるものだと、心の中で恨みに思っておりました。悪魔の話に応ぜられた時も、すわどうなる事かと……」


 それを聞き、王は眉根にしわを寄せ、小さくため息。


「よい、やめよ。みなまで言うな。やれ、まったく。その物言いは変わらぬな。そなたが城を出ると申した時はあな惜しやなどと思ったものだが、今はそれで良かったと感じておるよ」

「……お恥ずかしい限りです」


 かしこまるホラインに、ベレトの王は小さく笑う。


「さて、巷間のうわさに名高き冒険騎士のホラインよ。騎士として高みを目指すと申しわけ、修行の旅に出たそなたに、一つ問おう。そなたの語る騎士とは何か」


 ホラインは迷わず答えた。


「騎士、それは人の生きざまにございます。己に恥じる所なく、まっすぐに生きられること。剣の腕をみがくのも、ただまことに生きるため。王もまたそれと同じく、く人を導く者を王と讃えて尊ぶのでございましょう」


 彼のはばからぬ物言いに、王は続けて問いかけた。


「ワシは王と呼ばれるにふさわしい生きざまをしておるかな?」

「はい、陛下。ベレトの騎士であることは、まこと誉れにございます。このホライン、どこにいようと国の危機には馳せ参じ、剣となりまた盾となり、国と陛下をお守りしましょう」


 ホラインは誠実さをむねとして、うそ偽りを口にせぬ。


「うむ。何とも頼もしい騎士よ」


 それを知るベレトの王は満足げにうなずいた。

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