宝の番人
土に埋まった城の中は、じめじめしていて
たどり着いたは宝物庫。
ダーバイルが燭台に松明の火を移していくと、その全貌が明らかになる。骨董物の鉄箱がずらりと並ぶ手前には、大人の倍はあろうかという、巨大な騎士の石像が立っている。
ホラインは辺りを見回し、ダーバイルに問いかけた。
「番人とやらは、どこにいる?」
「ほれ、そこに。目の前におるでしょう」
ダーバイルが指した先には、巨大な騎士の石像が。これのどこが番人かとホラインが見つめていると、石像がズシンズシンと動き出す。
「
石像は怒声とともに石の剣を振りかざし、長い腕でブンとひとなぎ。ホラインもダーバイルも後ろに下がって距離を取る。
ダーバイルが石像に向かって言い放つ。
「これほどの宝を城に眠らせて、何の意味があるという。お前に宝は使えまい。ケチケチするな、石頭」
「やかましい! 盗人には裁きの鉄槌をくれてやる!」
石像は剣を振り回すも、ダーバイルはひらひら避けて、ホラインに押しつける。
「おっとっと。デカブツめ、お前の相手は騎士様だ! それじゃあ旦那、後は頼みます」
それを聞いた石像は怒りの目でホラインをにらみつけた。
「騎士が盗人の味方とは世も末だな! まとめて叩き潰してくれる!」
盗人といっしょにされては敵わぬとホラインは言いたかったが、どちらにせよ宝をあさりに来たのには違いない。
「そう言われては立つ瀬がないが、しかし私は金がいる! これも信義に報いるためだ。悪く思ってくれるなよ」
ホラインは石像の剣をひょいとかわすと、石柱のごときその腕を切り落とさんと剣を抜く。しかし、相手は石像。太くて硬い石の腕には、剣も弾き返される。石像の腕は少し欠けただけ。
「うーむ、文字どおり刃が立たぬ」
これにはホラインも困り顔。
◇
ホラインと石像の番人が戦っている隙に、ダーバイルはこっそり宝に忍び寄る。
彼は音を立てないように、そろりと静かに鍵を開けてフタを取る。
その中身をあらためてダーバイルは思わず声を上げた。
「何だこりゃ!?」
彼の大声にホラインも番人もびっくりして振り向いた。ダーバイルも二人を見て訴える。
「すっからかん、空の箱だぞ! これも、こっちも、みな全部! これじゃタヌキの宝箱!」
ダーバイルは次々と宝箱を開けてみたが、どれもこれも中は空。石像の番人はひざをついてくずおれる。
「おしまいだ。バレてしまってはしかたない。ここに宝などありはしない」
これを聞いたダーバイルは怒りに任せて番人に言う。
「ふざけるな! 思わせぶりなことしやがって! どういうことだ! 何か言え!」
番人はとつとつと語りはじめる。
「我が主は宝を持ち去り、城を捨てた。宝物庫の番人は、時間稼ぎの目くらまし」
「そんなのありかよ! こんちくしょう!」
ホラインは地だんだを踏むダーバイルを押さえつけ、番人をなぐさめた。
「今日まで守ってきたならば、役目は十分果たせたろう」
役目を終えた番人は、ただの動かぬ石像に戻り、崩れ落ちる。ホラインとダーバイルは気が抜けて、その場にべたっと座りこむ。
「これじゃあ骨折り損のくたびれ儲け。まるまる時間のムダですよ」
「やれやれ。まあそれもまた冒険だ。次の儲け話を聞かせてくれ」
「そんなにうまいお話が、そうごろごろと転がってるわけないでしょう」
ダーバイルは疲れた顔でうつむいた。
「あーあ、もう……。あの時、竜のお宝がもっと高く売れてたら、こんな所には来なかったのに」
その一言にホラインはハッと顔を上げ、ダーバイルにたずねる。
「おいダバよ、竜の宝を盗んだのか?」
「へえ、そりゃあ。のんきにグースカ寝てたんで、その隙にちょいといただいて」
得意げに語る彼を引っぱって、立ち上がったホラインは足早に城を後にする。
「おや旦那? いったいどうしたことですか?」
「
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