質流れ
ホラインはダーバイルを連れ、バイダの都に引き返す。帰る道々ホラインはダーバイルに問う。
「ダバ、そなた竜の宝をいくらで質屋に売ったのだ?」
「へえ、それが金貨二十枚」
「二十枚!? 質屋の奴め、千枚などと吹っかけて!」
憤るホラインにダーバイルは不思議顔。
「いったいどういうことですか?」
どうもこうもあるものかとホラインは、かくかくしかじか説明した。すっかり事情を呑みこんで、ダーバイルも怒り出す。
「あの質屋、何て野郎だ! 許せねえ!」
「しかし、そなたが売主ならば話は早い。金貨二十枚で買い戻せる。多少の利子がついたとしても、三十枚にはなるまいよ」
◇
それから二人はバイダの都の質屋に飛びこみ、番頭を呼びつけた。真っ先に口火を切ったのは、ホラインではなくダーバイル。
「おい番頭! 竜の宝を返してもらおう!」
「返せったって、あなた、それはできません」
「どういうことだ!」
「どうもこうもありません。あなた、買い戻す気はないと、はっきりおっしゃったではないですか」
「ちょいと事情が変わったんだ! 質流れは
「これこれ何をもめておる。少しは声を抑えなし。こうやかましくては客が寄りつかぬ」
番頭はすがるような目で訴える。
「それがその、かくかくしかじか……ということでございまして」
「ふーむ、分かった」
若旦那はホラインとダーバイルに目をやると、堂々と言う。
「あの宝玉は、ここにはない。私がベレトの国王に、金貨一万で売ってきた」
一万枚も金貨があれば城が建つ。今まで聞いたこともない金額に、ダーバイルはひっくり返る。
「一万枚!? それを貴様、たった二十枚で!!」
興奮する彼をどうどうと若旦那は落ち着かせる。
「まあまあ、金の話は金でカタをつけよう。さすがに安く買いすぎたと、私も悪く思っている。質屋は信用が命、悪徳とうわさが立ってはたまらない。ここは半値に八掛け二割引きして色をつけ、三千五百で手を打とう」
そう言うと三千五百枚もの金貨を収めた箱を、使用人たちに持って来させた。
生つばを飲んで箱を開け、輝く金貨の山を目にしたダーバイルは、一も二もなく返事する。
「へへえ、何も文句はありませんや! ありがてえ、ありがてえ!」
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