闇夜の決闘
ホラインと死神騎士は、互角の腕前。馬の分だけ死神が強い。
高みから打ち下ろされる死神の剣を受けて、ホラインは堪らず下がる。
「うぬっ、強い!」
「命に限りある者は、死には勝てない定めである」
「だからどうした! こんな所で死にはせん!」
ホラインは死神騎士の追撃を、紙一重で避け切った。同時に剣を下段から振り上げて、死神騎士の胴体を鎧の上から払い打つ。
だがまるで手応えがない。剣はするりと滑り抜け、柔い衣を斬ったよう。
抵抗するホラインに死神騎士は腹を立て、何度も剣を打ち下ろす。
「こやつ、しぶとい! ええい、さっさとくたばれい!」
「元はそちらの手違いだろう! わかりましたと死ぬと思うか!」
ホラインは受け流しつつ、また反撃。おかしな事に、何度当てても手応えなし。
死神騎士は高笑い。
「フハハハハ! 効かぬ、効かぬぞ。我が名は死、
騎士ホラインに疲れが見える。急ぎの旅から休む間もなく、夜通しの戦いとなれば無理もない。動きの鈍ったホラインは、攻撃せずに防御に回る。
一方で、死神騎士は疲れない。元よりまともな者ではない。死神は人間とは違うのだ。
まともではない者に、まともにやっても勝てないと、ホラインは狙いを変える。剣の勝負をあきらめて、彼は死神に飛びかかり、馬の上から引きずり下ろす。
「うおおっ、こやつ! それでも騎士か、野蛮人!」
取っ組み合いのケンカとは、紳士のやる事ではない。
だがホラインは聞く耳持たず、死神騎士を組み伏せて、力任せに片腕を折る。
「腕力は私の方が上のようだな!」
「クックック……汝は今、死に触れた。その意味がわからぬか?」
片腕を折られても、死神騎士は笑みを絶やさぬ。
死神に触れたホラインの両腕が石のように重くなる。
「な、何だ、これは?」
「我が名は死……死そのもの。いかなる者も我をとらえることあたわず。とらえること、即ち死……」
ホラインが恐れを抱いて離れると、ふっと腕が軽くなる。
道理なり。彼は「死」から遠ざかった。死神騎士はニヤリと笑う。
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