執念が勝る
白髪の男とホラインが次の集落に着いたのは、明け方のことだった。二人とも夜通し気を張り歩き続けて疲れているが、そんなそぶりはひた隠し。
早起きで表に出ていた住民に、まずホラインが呼びかける。
「もし、そなた。族長にお会いしたいが、どこにおられる?」
「え、あんたら、こんな時間に……?」
「ああ、すまぬ。今すぐというわけではない」
ホラインは急ぎはしないと伝えたが、住民は眉をひそめて彼に問う。
「それよりも、あんたらいったいどこから来た?」
「東の集落」
「まさか夜中に野を抜けて?」
「ああ、そうだ」
「はぁ、そりゃ何と……おっとろしい、命知らずな。一晩中歩いたってか。長歩きで疲れたろ、しばし休みな」
住民はあきれたように息をつく。
とりあえず住民に案内されて、二人は空き家で一休み。彼が言うには、太陽が地平線から離れたら、改めて二人を長に会わせるとのこと。
二人は仮眠し、時を待った。
◇
そして族長と面会の時。族長は長いヒゲに埋もれた顔の老人だ。
ホラインと白髪の男は、族長の前に立つ。
「旅人よ、よくぞいらした。何もなく、もてなすこともできないが、ゆっくりして行きなされ」
「かたじけない」
ホラインが応えている間中、白髪の男は族長をジッと見ていた。
やがて彼は確信すると剣を抜き、大きな声で言い放つ。
「ついに、ついに見つけたぞ! ここで会ったが百年目! 積年の恨み、今こそ晴らしてくれる!」
ホラインが止める間もなく、白髪の男は隠し持った剣を抜き、族長に斬りかかる。
しかし彼も年老いた。動き出しが早くとも、勢いが続かない。族長は
族長の側にひかえる集落の
「こやつ、いきなり何をする!?」
「取り押さえろ!」
男衆は白髪の男を取り囲むも、刃物を向けられ近寄れぬ。
白髪の男は声を張って威圧する。
「邪魔するな! こいつこそ、探し続けた家族の仇!」
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