放蕩野郎

 ホラインは遊びほうけるダーバイルを放置して、一人宿で眠りにつく。

 もともと彼は一人旅。ダーバイルに都合を合わせる理由はない。



 明くる朝、ホラインは早起きして、都を発とうと宿を出た。

 念のため、昨夜の酒場をのぞいてみると、ダーバイルは酔いつぶれて眠っていた。彼の他にも何人かの酒飲みたちがだらしなく眠っている。

 一晩中騒ぎ倒して、疲れ果てたか。

 ホラインはあきれて大きな息をつき、無言で酒場を出て行った。



 そして五日後、ホラインは折り返し、再びハバルに戻ってくる。酒場でちょっと飯でも食って一休みと思っていたホラインは、またダーバイルと再会する。

 ダーバイルは少し疲れの見える顔で、ちびちび酒を飲んでいた。


「そなたまだ飲んでおったのか」


 ホラインが冗談交じりに話しかけると、ダーバイルは苦笑い。


「いやあ、さすがに六日も遊べば金が尽きて」

「本当にずっと飲んでおったのか」


 冗談で言ったつもりが大当たり。ホラインはあきれ果てて続く言葉が出てこない。

 ダーバイルは「よいせ」と重い腰を上げて席を立ち、ホラインの肩を叩く。


「ほいじゃ旦那、もう一稼ぎしに行きましょう」


 何を勝手なとホラインは思うものの、彼もまた旅で金を使ったところ。余分にあって困るものでなし、ホラインはダーバイルについて行く。



 ダーバイルが向かった先は、街中の小さな質屋。店内に入るなり、彼は番頭に呼びかける。


「おう、店主! 若旦那に用がある」


 気安い態度に番頭は嫌な顔。


「ええと、あなたは誰ですか?」

「トレジャーハンター・ダーバイルが来たと言えば、すぐわかる。とにかく早く呼んでくれ」


 横柄なダーバイルに番頭もホラインもあきれ顔。

 しかしながら、断固として動かないダーバイルを放っておくわけにもいかず、番頭はしぶしぶ使いを呼び寄せて、若旦那に知らせに行かせる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る