悪魔の力
ホラインとダーバイルは魔神を連れて、またいくつもの山を越え、ベレトの都に帰り着く。
かの冒険騎士ホラインがベレトを発って十日後に、約束どおり悪魔を見つけ、戻って来た。そのうわさはたちまち広まり、当然王の耳にも入る。三人はすぐに王に会える事に。
◇
謁見の間にて、はやる心を内に抑え、ベレトの王はホラインに問う。
「ホラインよ、まことに悪魔を連れ帰ったのか?」
ホラインは片ひざをつき、ラビターンを紹介する。
「おおせのとおりにございます。彼こそ魔神ラビターン」
ラビターンはホラインの言葉に合わせ、優美に礼。
まじまじと王は目を凝らし、ラビターンを見て首を傾げた。
「見たところ、普通の男と変わらぬが……」
疑う王にホラインは、ラビターンの正体を語る。
「ご注意を。彼は三つの願いを叶え、引き換えに魂を取る悪魔です」
「何とまあ」
王は驚き、目をぱちくり。
「うむ、しかし……何か証拠がないことには、なかなか悪魔と信じられぬ」
ラビターン、これを耳にしニヤリと笑って腕を組む。
「ほほう。では、その目に入れて進ぜよう」
彼が手をこすり合わすと、その間から金や宝石がコロコロと。見る見るうちに山と積もる。王も兵士も大臣も、目を疑ってまぶたをこする。
「いかがかな? 少しは信じてもらえたか?」
ラビターン、一国の王を前にして不遜な態度。彼がパパンと手を打てば、宝の山がパッと消える。これが悪魔かとみな恐れ、謁見の間は静まり返る。
そんな中、ベレトの王は恐れずにラビターンに問う。
「叶えられない願いはあるか?」
良い質問だとラビターンは再びニヤリと笑みを浮かべ、指を三本立てて言う。
「三つだけ。まずは願いを増やす事。これを聞いては悪魔の商売上がったり。次に私を殺す事。悪魔も自殺は許されぬ。そして最後は地上に存在しないもの。無いものをねだって良いのは子どもだけ」
ふむふむと王は何度もうなずいた。
「それならば、ワシの願いは二つある」
「では聞こう。三つ目は後でも構わぬぞ」
王の願いは何なのか、家臣たちはどよめきだした。そして、みなして固唾を飲んでジーッと王の言葉を待つ。
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