夫婦は二世の契り
ホラインは真顔になって語りだす。
「ダーバイルという男から預かった。彼は今、遠い西の村トドーにて、病に倒れ危篤なのだ」
女の顔に動揺が表れた。
ホラインは彼女の顔をじっと見て、静かに言う。
「もしそなた、ダーバイルの身内だろう? 私は彼に、このペンダントを妻に渡せと頼まれた」
しばし言葉を失って、しょげていた女だったが、気を取り直すと舌を打つ。
「チッ、容体はどうなんだ? 帰れないほど悪いのか」
「ああ、そうだ。医者もさじを投げたという」
ホラインは包み隠さず教えたが、あまりに率直すぎたかと、少し後悔。
女は深く息をつき、また舌を打つ。
「あのバカめ、何が宝だ! いつまでもフラフラと旅をして、あげくの果てに行き倒れか」
彼女はナイフをスッと下ろし、いまいましげに吐き捨てた。そしてホラインに謝罪する。
「悪かったな。ちょっとそこで待っててくれ」
「いや、待たれよ。このペンダントを……」
「いらないよ。ダーバイルに返しとくれ。
そう言いながらダーバイルの妻はどこかへ姿を消す。
待てと言われたホラインは素直に待つが、彼女はなかなか戻ってこない。
◇
待たされに待たされて、もう日も暮れるという時に、ダーバイルの妻は一つの小ビンを抱えて戻ってきた。
「もう手遅れかもしれないが、こいつを奴に飲ませてくれ」
「何の薬だ?」
「万能薬さ」
「万能とは、そなたいったい……」
「まじない師だよ。とにかく任せた。嫌だとは言わせない」
彼女は無理やりホラインに小ビンを押しつけ、にらみつける。口では何のと言いながら、やはり夫が心配なのだ。
「ああ、わかった」
ホラインは小ビンを持って、トドーの村にトンボ返り。
さてダーバイルは生きているか?
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