花街の影で
そういうわけでホラインは、ダーバイルの妻を探しに、ハバーロの花街へと足を向ける。
ホラインは騎士だからして、花街に好んで出かけることはない。騎士の品位がどうこうと、やはり騎士は面倒だ。だが、さっぱり不案内というわけでもない。
ハバーロの花街には何度か出かけたことがある。あれはまだホラインが騎士見習いの時のこと。正式に騎士になれば、もう気楽には遊べぬと、仲間内で花街に――と、それはまた後に語ろう。
とにかく彼は花街に行き、ダーバイルの妻を探す。
……しかし、どう探したものか。花街に知り合いなんぞおりはせぬ。
そこでホライン、閃いた。
ダーバイルのペンダントを首に下げれば、気づく者がいるに違いない。いや、いてほしいと願望を込め、ホラインは花街を歩き回る。
客引きを断りながら歩いていると、ホラインは一人の女に呼び止められた。
「ねえ兄さん、そのペンダント、ステキだね」
顧みれば、思わず目を見張るような美人がいる。
彼女はするする近づいて、ホラインの腕を強く引っ張った。
「ちょっと向こうで話しましょう」
ホラインはのこのこ彼女について行く。
入り組んだ裏道に入った先で、女はナイフを取り出すと、ホラインの首に押し当てた。
「おい、あんた。そのペンダントはどうしたもんだ?」
人好きのする顔がにわかに険しくなり、視線も声もナイフのようにとがり出す。
「ああ、これは――」
きっと彼女がダーバイルの妻だろうとホラインは、説明をはじめようとしたのだが、女はナイフを押し込んで強く迫った。
「うそはつくなよ。コトと次第じゃ、あんたのノドをカッ切るぞ」
これは確かに気が強いと、ホラインは困り顔。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます