商売人が世界を制す
ダーバイルが語るには、今からちょうど十日前、彼はハバルの酒場にて冒険が金にならぬと嘆いていた。
そこへたまたま例の質屋の若旦那が、酒の仕出しに現れる。
若旦那と酒場の主人、二人の金のやり取りを、ダーバイルは横目で見つつ、何か良い仕事はないかとたずねると、若旦那がこう言った。
「そんなに金がほしいなら、商売人になるが良い。商人ほど金の儲かる仕事はない」
それを聞いたダーバイル、半信半疑で彼に問う。
「ホントかよ?」
「商人たる者、嘘は言わぬ。トレジャーハンター・ダーバイル、あんたが手にしたお宝はいったいどこに売っている」
「そりゃ、そこらの質屋なり古物商なり」
「買い取る金は、どこから出ると思うのだ?」
「そんなこと、オレの知ったこっちゃない」
「わからぬか? 儲かるから買えるのだ」
若旦那の説教に、少しずつダーバイルの心が動く。
「うーん、確かに……。ない袖は振れぬと言う」
「世の中、金よ。金を動かす商人こそが、世の中を動かすのだ」
とどめの言葉でダーバイルは雷に打たれたごとき衝撃を受けた。
「なるほど、わかった。どうすれば、商人になれる?」
「まずはギルドに入らねば、闇商人になってしまうぞ。闇商人はギルドの敵だ。ヘタをすれば命が危うい」
「どうすればギルドとやらに入れるか」
「年会費を支払うか、手っ取り早い方法はどこかに弟子入りすることだ」
「めんどくせえ」
「あんたにはそこそこ才がありそうだ。ウチで使ってやってもいい」
若旦那の尊大な物言いは気に入らないが、とにかく金がほしかったので、ダーバイルは飛びついた。
「そりゃどうも。それで何をすればいい?」
「ウチで扱う商品を貸してやるから売ってこい。儲けはそのままくれてやるが、売れなかったら借金だ」
◇
「――ってなわけで、ここで商売はじめました」
乗せられやすい男だと、ホラインは心配するも、当人はお気楽なもの。
「仕入れ値が四十で、売り値が八十、儲けが四十。四反売れば、一月分の稼ぎになるって寸法で。へっへっへ、これでオレもお金持ちの仲間入りと」
捕らぬうちから皮算用。ホラインはため息をつく。
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