悪魔の城

 それからさらに山を越え、五日目の朝。ホラインとダーバイルは山林の中に城を見た。杉林の中にそびえる黒い城。あれが悪魔の城だろうかと、二人は期待半分不安半分で、城の門まで寄ってみる。


 木製の巨大な門は騎乗して旗を立てても通れるほど。

 一見立派な構えだが、厚い板にはコケが生し、ライオンヘッドのノッカーはサビだらけ。城壁は土汚れで黒かった。


 ダーバイルが眉をひそめてつぶやいた。


「こんな所に誰がいるんで? ただの古城じゃないですか」

「とにもかくにも入ってみよう」


 ホラインはサビたノッカーで門をたたく。

 ……いくら待てども返事はない。


「勝手に入ってしまいましょう。どうせ誰もいませんや」


 ダーバイルが門を押すと、不思議とスーッと滑るように門が開く。


「これぞ天のお導き。宝がオレを待ってらあ」


 のん気によろこぶダーバイル。ホラインは怪しみながらも彼に続いて城に入る。


 その直後、バタンと門が閉ざされる。ホラインとダーバイルは驚いて、振り返ったが誰もいない。

 何だ風のしわざかと、ダーバイルは安堵する。


「ああ、びっくりした。脅かしやがって」

「いや待てよ」


 ホラインは念のためにと門が開くか試しに押したが、びくともしない。


「これはしまった。開かないぞ」

「またまたそんな。不器用な。オレならちょちょいと……」


 ダーバイルは本気にせず、自分でも押してみて、そこで初めて理解する。


「ありゃ本当。こいつはちょいと困ったな」

「とりあえず先に進むしかないようだ」


 ホラインとダーバイルは雑草が伸びほうだいの外庭を抜けて、キープの中に踏み入った。



 ホラインとダーバイルは暗い城内に上がりこむ。うっすらと埃の積もった城内は、カビの臭いが漂っている。

 いかにも不気味な空気だが、二人はまったく恐れない。エントランスから大広間へと移動する。

 悪魔とは遠い昔の存在で、おとぎ話に出てくるもの。それが世間の認識だ。悪魔よりも、山賊や獣の方が恐ろしい。


「お宝がありゃ良いんですが……。どうもニオイがしませんや」


 ダーバイルは大広間を見回して、期待薄だとため息をつく。カーペットは埃と土で薄汚れ、タペストリーはボロボロに破れ、見るも無残なありさまだ。


「ところで旦那、本当に悪魔がいると思ってますか?」

「竜はいた。悪魔もいてもおかしくない」

「そりゃそうですが……」


 大広間を抜けた先は謁見の間。これまでと違い、そこだけは場違いにきれいなままで置かれている。特に目立つのは、真っ赤な玉座。

 一目でこれはおかしいと、ホラインもダーバイルも勘づいた。


「ちょい旦那、こいつは何だか妙ですぜ」

「わかっている……が、調べなければはじまるまい」


 ホラインがまっすぐ玉座に向かって行くと、ボワンと煙が立ち上り、玉座に男が現れる。

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