悪魔の城
それからさらに山を越え、五日目の朝。ホラインとダーバイルは山林の中に城を見た。杉林の中にそびえる黒い城。あれが悪魔の城だろうかと、二人は期待半分不安半分で、城の門まで寄ってみる。
木製の巨大な門は騎乗して旗を立てても通れるほど。
一見立派な構えだが、厚い板にはコケが生し、ライオンヘッドのノッカーはサビだらけ。城壁は土汚れで黒かった。
ダーバイルが眉をひそめてつぶやいた。
「こんな所に誰がいるんで? ただの古城じゃないですか」
「とにもかくにも入ってみよう」
ホラインはサビたノッカーで門をたたく。
……いくら待てども返事はない。
「勝手に入ってしまいましょう。どうせ誰もいませんや」
ダーバイルが門を押すと、不思議とスーッと滑るように門が開く。
「これぞ天のお導き。宝がオレを待ってらあ」
のん気によろこぶダーバイル。ホラインは怪しみながらも彼に続いて城に入る。
その直後、バタンと門が閉ざされる。ホラインとダーバイルは驚いて、振り返ったが誰もいない。
何だ風のしわざかと、ダーバイルは安堵する。
「ああ、びっくりした。脅かしやがって」
「いや待てよ」
ホラインは念のためにと門が開くか試しに押したが、びくともしない。
「これはしまった。開かないぞ」
「またまたそんな。不器用な。オレならちょちょいと……」
ダーバイルは本気にせず、自分でも押してみて、そこで初めて理解する。
「ありゃ本当。こいつはちょいと困ったな」
「とりあえず先に進むしかないようだ」
ホラインとダーバイルは雑草が伸びほうだいの外庭を抜けて、キープの中に踏み入った。
◇
ホラインとダーバイルは暗い城内に上がりこむ。うっすらと埃の積もった城内は、カビの臭いが漂っている。
いかにも不気味な空気だが、二人はまったく恐れない。エントランスから大広間へと移動する。
悪魔とは遠い昔の存在で、おとぎ話に出てくるもの。それが世間の認識だ。悪魔よりも、山賊や獣の方が恐ろしい。
「お宝がありゃ良いんですが……。どうもニオイがしませんや」
ダーバイルは大広間を見回して、期待薄だとため息をつく。カーペットは埃と土で薄汚れ、タペストリーはボロボロに破れ、見るも無残なありさまだ。
「ところで旦那、本当に悪魔がいると思ってますか?」
「竜はいた。悪魔もいてもおかしくない」
「そりゃそうですが……」
大広間を抜けた先は謁見の間。これまでと違い、そこだけは場違いにきれいなままで置かれている。特に目立つのは、真っ赤な玉座。
一目でこれはおかしいと、ホラインもダーバイルも勘づいた。
「ちょい旦那、こいつは何だか妙ですぜ」
「わかっている……が、調べなければはじまるまい」
ホラインがまっすぐ玉座に向かって行くと、ボワンと煙が立ち上り、玉座に男が現れる。
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