後日談

 ハバーロを出たホラインは、バイダの都に折り返し、次なる旅の目的探し。酒場の主人にあれこれと、うわさ話をたずねていると、そこへドタドタとダーバイルが駆けこんで来た。


「あっ! ホラインの旦那、ここにいましたか! ああ、大変、大変なんです!」

「おお、ダバか。いったい何があったのだ?」


 そこへさらにもう一人、息を切らして駆けこむ者が。ダーバイルの後に続いて現れたのは、何と質屋の若旦那。二人そろって青い顔。

 ダーバイルが舌を噛みそうな早口で事情を話す。


「それが金貨が無いんでさぁ! 竜の宝玉を売った金! 質屋とオレと旦那の分、しめて金貨一万枚、まるっと消えちまったんで!」


 これを聞いてホラインは、天を仰いで大笑い。


「そう来たか! なるほどこれは傑作だ! やはり悪魔は信用ならぬ」

「笑い事じゃあ、ありやせん! いったいどういう事なんで?」


 困惑顔のダーバイルに、ホラインはわけを説く。


「ラビターンが言っていた事を思い出せ。無い物ねだりはできないと、はっきり言っていたろうに」

「へえ、そりゃ……つまり?」


 察しの悪いダーバイルに、ホラインは苦笑いした。


「ベレトの王が願った金貨一万枚。その出処でどころが、どこかと言うと……」

「ああ何と! そりゃあんまりだ!」


 ようやく事情を理解して、ダーバイルは頭を抱えひざを折る。一方で質屋の若は何が何やら惑うばかり。


 ホラインは涼しい顔で締めくくる。


「これで全ては元の鞘に納まった。竜の宝など初めから無かったのだ。顧みるに、我が王はやはり賢君けんくんにあらせらる。これは良い教訓話。あぶく銭は身に付かぬ」


 大金も高価な玉も、旅の友にはなりやせぬ。

 彼はホライン、冒険騎士。まだ見ぬものが彼を待つ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る