魔の門

 長時間飛び続けたトカゲの悪魔は、大宮殿の門の前で力尽き、ばたりと倒れて動かなくなる。

 着地したホラインはトカゲの悪魔に声をかける。


「おい、生きてるか?」

「ぜぇはぁ、何とか生きてます。私の事はお気になさらず。どうかうたげをお楽しみくださいますよう願います」

「心づかいに感謝する」


 ホラインはトカゲの悪魔に深く礼。その後に大宮殿に振り向いて、威風いふう堂々足を進める。


 大宮殿の正門にホラインがやって来ると、巻き上げ式の重厚な門がぐわっと口を開けた。口の中は無限の暗闇。

 ホラインはあわてて剣に手をかける。


「おお、何だ! 化け物め!」


 それに対して門が言う。


「臭う、臭うぞ。人間の臭い。お前は悪魔ではないな? 人間ごときが何用だ。ここは悪魔の大宮殿、招かれざる者は去れ!」


 目もないくせに、よく分かるなとホラインは驚いた。


「ラビターンの代理で来た」

「人間が悪魔の代理?」

「招待状も持っている。文句があるか」


 鉄の門はしばらく黙り、しかる後にこう言った。


「それならば通るがいい」


 だが、門は開かない。口を閉ざして黙り込む。

 ホラインは顔をしかめて門に尋ねる。


「何のつもりだ? 開けてくれ」

「人間の言葉は聞かぬ。自力で通れ」

「よくわかった。後悔するな」


 剣を納めたホラインは両手につばを吐きつけて、門の下に両手を差し、腰を入れて持ち上げる。

 ややあ見よ、何たる膂力りょりょく! 重厚な鉄の門が浮き上がる。

 地面から離され門は大あわて。


「うおおおお! 何と、こやつめ!」

「どうだ、化け物! 参ったか!」


 怪力無双のホラインは両手で門を持ち上げて、その下をやすやすくぐる。

 両手を放せばズシンと門が地に落ちて、高山の大宮殿を揺るがした。

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