うたげの使者

 その夜の事、ホラインはラビターンの話のとおり、招待状を隠し持ち、マントと指輪を身に着けて、我が家にて悪魔の迎えを待っていた。


 しかし、なかなか現れぬ。真夜中になり、そろそろ待つのはやめて寝ようと、マントも指輪も取り外し、ベッドに横になったところ、何者かが窓を叩いた。

 ホラインは目を開けて、そちらを向いて目を見張る。窓の外には腕にコウモリの羽をつけた大柄なトカゲの魔物がいるではないか!

 ホラインはベッドの横に置かれていた剣を取り、トカゲの魔物をにらみつける。

 だが……これはどうしたことか。トカゲの魔物は窓の外で静かにたたずみ、コツコツと礼儀正しくノックをしている。

 これが迎えの者だろうかと、ホラインは慎重に窓を開けた。

 トカゲの魔物はホラインに問う。


「大悪魔ラビターン様は、おわせられるか?」


 なるほど確かに迎えの者だ。

 ホラインは堂々答える。


「いや、ラビターンは多忙の身ゆえ、私が代理を頼まれた」


 トカゲの魔物は首をかしげる。


「つまり……あなたはラビターン様の名代みょうだいであられると」

「そうなるな。招待状も預かっておる」


 ホラインが招待状を見せつけると、トカゲの魔物はつばさを広げた。


「わかりました。それでは背中にお乗りください」


 背を向けるトカゲの魔物。

 ホラインはためらいながらも、マントと指輪を身に着けて、悪魔の背中にしがみつく。


「ぐえ、重い……」

「大丈夫か?」

「何のこれしき」


 トカゲの魔物は懸命に羽ばたいて、夜の空をふらふらと飛ぶ。

 いつ落ちるかと、ホラインは気が気でない。

 ひやひやものの空の旅。雲を抜け、月明かりの下、いくつもの山を越え、たどり着いたは高山の大宮殿。

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