悪魔のうたげ
同窓会の誘い
はるか遠い昔のこと。神々の時代が終わり、神と英雄の時代が終わり、そして私たち人間の時代が訪れた。
悪魔も竜もまたはるか遠い昔の物語になろうとしていた頃に、一人の旅の騎士がいた。町から町へ、夢と冒険を探して歩く、流浪の騎士。その名も冒険騎士ホライン・ゲーシニ。
大そう腕の立つ若者で、王都ベレトの騎士団では収まらないと、その身一つで冒険に明け暮れる。
◇
ある日ある時、騎士ホラインは長旅を終え、珍しく王城の警備の任についていた。
だがホラインは根っからの風来坊。立ちぼうけは退屈で、こんな仕事は長くはやれぬと思っていた――まさにその時、元悪魔のラビターンが通りかかる。
このラビターン、悪魔でなくなり人間として王城で働いていた。しかし何やら浮かない顔。仕事中のホラインと目を合わせたラビターンは、困った顔で話しかける。
「おやおや、これはホライン様。ちょっと話を聞いてください」
「はて、どうした? 人間の暮らしが嫌になったのか?」
「いえいえ、そうではございません。それなりに楽しくやっているところ。人間も悪いものではありません。悪魔というのは決まりだらけ。それに比べて人間は何と自由であることか」
「では、いったい何の話だ?」
「ええ、それが……同窓会があるのです」
「同窓会?」
悪魔にもそんなものがあるのかと、ホラインは目を丸くする。
「同期の悪魔と近況を語り合うのでございますが、人の身に堕ちた今では合わせる顔がありませぬ」
「ほう、そんなものか?」
「そこで一つ、どうでしょう? ホライン様に代理として出席していただきたく……」
「私がか?」
ホラインは二度びっくり。
少し興味はあるものの、用意もなしに悪魔の中に飛び込むほど無謀ではない。
そんなホラインの心中を察してか、ラビターンはこう言った。
「ご心配にはおよびません。身を守るマントと指輪を貸しましょう」
ラビターンは身に着けているマントと指輪をホラインに渡す。そしてさらに招待状を押しつけた。
「同窓会は今夜です。招待状を持っていれば、夜中に迎えがやってきます」
「そうなのか」
半信半疑の騎士ホライン。
ラビターンはさっさと去る。
はてさて今夜何があるものか?
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