後日談

 数月後、騎士ホラインはベレトへの帰り道で、ダーバイルと再会する。


「おや旦那。ちょいと良い儲け話があるんですが、一つ聞いて行きませんか?」

「いや、私は帰る途中だ。数日は休みたい」

「そりゃ残念。まあ良いや、宝はオレが独り占めと」


 それを聞いたホラインは、ダーバイルに問う。


「ところでダバよ。商売はやめたのか?」

「冗談でしょう。商人なんてやりませんよ。オレはトレジャーハンターです」

「大金持ちは諦めたのか」

「何を言います! 諦めてなんかいませんよ。いつかドえらい財宝を見つけ出して、一生遊んで暮らすんです」


 大それた彼の野望に、ホラインは苦笑い。


「難しいと思うがな」

「はあ、旦那は夢がない! 人間、希望を失っちゃ、生きてる価値がありません」

「いやしかし、もっと地に足のついた夢をだな……」

「あー、聞こえない! 説教はいりません! オレはオレの夢を追います! 誰にも文句は言わせません!」

「そなたがそれで良いなら良いが」

「はい、この話はおしまいです! さようなら、また会う日まで!」


 ダーバイルは説教と現実から逃れるように、足早に去っていく。

 しかたのない奴だなと、ホラインは脱力する。きっと彼は財宝を探し当てて、大金を一度に得ても、すぐに使い果たすだろう。金持ちはみな強欲でケチでなければ、なれぬのだ。ダーバイルには欲望は足りていても、自制心が足りていない。彼は自分の尾を追う犬のごとくして、かなわぬ夢を永遠に追い続けるのか。変に頑固な男だから、何と言っても聞かぬだろう。


 ホラインはため息をつき、己の事をかえりみる。

 己もまた金持ちにはなれぬ者。騎士道一筋、頑固者ゆえ、修行の旅も人助けのおせっかいもやめられぬ。あれこれと人の事は言えないたちだ。

 ある意味で似た者どうしと、ホラインは自嘲した。ともに夢を追う者だから、この先もきっとどこかで引かれ会う。くされ縁か、運命か。

 ろくでもないと、ホラインはまた自嘲してため息をつく。

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