悪魔の集い

 会場に通されたホラインは、悪魔の集いに目をむいた。十や二十どころではない。百はいようか。

 さすがは悪魔、人の姿をした者もそこそこいるが、多くは化け物。動物や植物ならまだしもや、どの生き物にも似つかない、奇怪な奴までいる始末。

 そこへさらに鳥の紳士が大声で言う。


「大悪魔ラビターン様の代理の方がお見えです!」


 注目が集まって、ホラインは身構えた。

 そこへ一人の紳士が近づく。頭に五本の角を生やした、悪魔の貴族だ。


「ラビターンめ、人間をよこすとは、いかな了見! おい人間、ラビターンはどうしたのだ?」


 角の悪魔の無礼な態度にホラインは怒りを覚える。


「人間と呼んでくれるな、私は騎士ホライン・ゲーシニ! 答えてほしくば名を名乗れ!」

「生意気な! このオレが悪魔の貴公子カマル・ウェインと知っての事か!」

「あいにくと悪魔のことはよく知らぬ! 貴公子とは王の子か?」


 これを聞いて、悪魔たちは大笑い。よく知らぬと堂々と答える者もおかしいが、悪魔の世界で貴公子とは必ずしも王の子を意味しない。人の世と同じく悪魔の世もまた複雑。

 カマル・ウェインは拳をにぎり、怒りに震える。


「無礼者! ここで手討てうちにしてくれる!」

「いいぞ! やれ! やれ! やっちまえ!」


 カマル・ウェインが真っ黒な剣を抜くと、悪魔たちは拍手かっさい。

 下品な奴らとホラインは心の中で吐き捨てて、自分も剣を抜いて応じる。


「先に抜いたは、そちらの方! 後悔するな、容赦せぬ!」


 そこへ他の悪魔が割り込む。


「大帝王の御曹司おんぞうしがお手を汚すまでもない。このワタクシが相手をしよう」

「いやオレが」

「いやいや私が」


 ぞろぞろと下級の悪魔が進み出て、ホラインの前に立つ。


「良いだろう! 何人でもかかってこい! このホライン、受けて立つ!」


 ホラインは化け物どもにも一歩も退かぬ。

 反対にカマル・ウェインは気をそがれ、剣を納めて引き下がる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る