湿原に幻獣を見た
魔眼を持つ獣
はるか遠い昔のこと。神々の時代が終わり、神と英雄の時代が終わり、そして私たち人間の時代が訪れた。
悪魔も竜もまたはるか遠い昔の物語になろうとしていた頃に、一人の旅の騎士がいた。町から町へ、夢と冒険を探して歩く、流浪の騎士。その名も冒険騎士ホライン・ゲーシニ。
大そう腕の立つ若者で、王都ベレトの騎士団では収まらないと、その身一つで冒険に明け暮れる。
◇
ある時、騎士ホラインはイテヨ帝国の首都バハルにて、幻獣のうわさを聞いた。
幻獣の名はカトブレパス。帝国南部の湿原にひそむ、首の長い巨獣であり、その目で見られた者は死ぬ。動きはのろく、人を襲いはしないらしいが、とにかく危険という事で、近づくべきではないという。
「水牛かジラフかな?」
どうせ何かの見間違いだとホラインは思うものの、実際に調べなければ分からない。うわさだからと見すごせぬ。何しろ彼は冒険騎士。
かくして騎士ホラインは、イテヨ帝国南部の小村ジンカに向かう。
◇
数日かけてジンカに着いたホラインは、村人に話を聞くも、さて誰も知らぬと言う。
やはり根も葉もないうわさとホラインは少しがっかり。おらぬものを探してもしょうがないと、彼は次の冒険に思いを巡らす。
まったくのムダ足も悔しいので、寄り道でもしようかと考えた時に、若者が一人、話しかけてきた。
「もし旅の方」
「私に何か?」
若者は優しそうな顔つきで、いかにも気が弱そうに見える。
「怪物をお探しですか?」
「ああ、まあな。知っているのか?」
「ここより南、チェウの大湖で、首の長い怪物を見たことがあるのですが」
「……ジラフかな?」
「違います! ぼくは確かに見たんです。でも誰も信じてくれない……ぼくが臆病だからって。お願いします。ぼくといっしょにチェウの大湖に行ってください」
必死な様子の若者に、ホラインは快く引き受ける。
「おもしろい。怪物がもし本当にいるならば、確かめぬわけにはいくまい」
「ああ、ありがとうございます!」
「そうかしこまるな。私は冒険騎士ホライン。冒険騎士だからして、冒険せずにはおれんのだ」
「ぼくはビリーという者です」
そして二人は大湖チェウへと小遠足。
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