新たな剣
フェズに向かう道中で、ホラインは若旦那に一振りの剣を渡される。
「ホラインさん、どうぞこれをお納めください」
「やや、これは?」
「騎士ならば、剣がなくては困るでしょう」
その剣、騎士剣とはこしらえが違うものの、並の剣とはできが違う。職人が鍛えた鋼の一品物。
見るからに高価な剣にホラインは、受け取りをためらった。
「かようなものは受け取れぬ。剣ぐらい自分で買おう。私には十本いくらの安物で良い」
「騎士様がケチなことをおっしゃいますな。キャラバンを守りきった報酬です」
「まだ完了していない。帰るまで油断はならぬ」
「それならば前金代わりにお納めください。無事にケブリに帰れたら、そのままあなたに差し上げましょう。この後もキャラバンを守りきる自信がないとは言わせませんよ」
問答に押し負けたホラインは、剣を手に取る。
「大事に使おう」
「それはまあ結構ですが、抜かずに死ぬのは
若旦那の冗談に、そこまで自分はケチではないとホラインは顔をしかめた。
◇
五日後に何事もなくキャラバンはフェズに着く。
少しだけ憂鬱になったホラインだが、五日もあれば立ち直る。いつまでもくよくよしてはいられない。
現実は理想どおりにならないが、目指して行かねば実現せぬ。百人中、
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