野良仕合に勝負なし

 ホラインは堂々と女剣士に言い返す。


「本気を出してほしければ、女を武器にするでない。それとも無手の者が怖いか」


 ホラインと女剣士はにらみ合い。

 その末に女剣士が剣を下ろす。


「やめだ、やめ! こんなの何の意味もない」

「分かってくれたか」


 そう言いながらも、ホラインは気を緩めない。

 警戒する彼を見て、女剣士はフッと笑い、両手の剣をさやに納める。


「ほら、どうだ。これで良かろう」


 ホラインが力を抜いてため息つくと、女剣士はまた笑う。


「最後まで気を抜かぬとは、ボンクラ騎士ではないらしい。だが、一度胴を狙いにいったのは忘れぬよ」


 意地の悪い女剣士に、ホラインは困り顔で言い返す。


「それはそなたが強かったのだ。加減して勝てる者ではなかったということさ」

「誉め言葉と受け取って良いのかな?」

「並の騎士よりは強かろう。だが、心せよ。剣の腕で解決できることは世の中そう多くない」

「堅物め。その言葉、そのままお返ししてやろう。おせっかい焼きの騎士様よ」


 女剣士はマントをまとい、都に向けて街道を南に進む。

 偶然にも向かう先は同じよう。ホラインは女剣士の後を追う。


「これ、そなた。ガリッサに行くのだろう? 目的地が同じなら、ともに歩いて行かないか?」

「何だ、騎士様? ナンパのつもりか」


 冗談を飛ばす彼女にホラインはまじめに言う。


「邪心はない。旅は道づれと言うだろう」

「……良いだろう。女が一人でどうこうと、つまらぬことをぬかしていたら、その鼻をつぶしてやろうと思っていたが」


 これを聞いて本音では女剣士を心配していたホラインは、危なかったと肝を冷やした。

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