悪魔の感覚
長蛇の列がようやく終わり、ホラインはどっと疲れた。
うたげにも飽きてきたホラインは、カマル・ウェインに早退の断りを入れる。
「さて、私はそろそろ帰る」
これに対してカマル・ウェインはおどろいた顔。
「何、もうか? あまりにも早すぎる。いったい何が気に入らぬ?」
「気に入らぬわけではない。夜通し遊ぶわけにもいかぬ。ただそれだけのことなのだ」
「一晩や二晩ぐらい、どうということはなかろう」
カマル・ウェインの口ぶりに、ホラインは眉をひそめた。日に日に
「いったいいつまでうたげを続ける?」
「二年と少し」
悪魔の時間の感覚は、人間とは違いすぎる。二年も遊んでいたのでは、人の世などどうなっているかわからぬ。
「人間は忙しい生き物なのだ。二年どころか何日も遊んでおれぬ」
「何とあわれな生き物よ。しかしそれなら止めはすまい。ラビターンによろしくな」
「あいわかった」
「次のうたげは六百年後。また来いよ」
最後の最後でホラインは大きなため息。六百年に一度では二度と参加できないだろう。そのころにはラビターンも生きているかわからない。
◇
騎士ホラインは大宮殿を後にして、悪魔の門をまた持ち上げ、トカゲの悪魔の元に向かう。
トカゲの悪魔はホラインを見るや目を見開いて問う。
「あら、あらら? ラビターン様の代理のお方。いったい何のご用でしょうか?」
「すまないが、元の場所に帰してほしい」
「何か問題が起こりましたか?」
トカゲの悪魔は怪しんで、声をひそめて問いかける。
この者もやはり悪魔。生きる時間の流れが違う。
ホラインは肩をすくめた。
「そうではない。人間は忙しいのだ」
トカゲの悪魔はわかったようなわからぬような、納得いかない顔をするも、ホラインを乗せて地上に飛び立った。
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