白昼の夢魔
王の呪いのうわさ
はるか遠い昔のこと。神々の時代が終わり、神と英雄の時代が終わり、そして私たち人間の時代が訪れた。
悪魔も竜もまたはるか遠い昔の物語になろうとしていた頃に、一人の旅の騎士がいた。町から町へ、夢と冒険を探して歩く、流浪の騎士。その名も冒険騎士ホライン・ゲーシニ。
大そう腕の立つ若者で、王都ベレトの騎士団では収まらないと、その身一つで冒険に明け暮れる。
◇
騎士ホラインはベレトより北西の国オンドルの酒場にて、トレジャーハンターのダーバイルに会う。
「おや旦那、お久しぶりです」
「おお、ダバか! かような所で会おうとは」
ダーバイルは砂漠歩きの旅姿。
杯を片手に持ってホラインのとなりに座り、大声で酒を頼む。
「へい主人、祝い酒だ! 上等なヤツを頼む!」
ホラインは心配になり問いかけた。
「やけに
「ははは、天下の騎士様がケチなことを言いなさる。実は、また良い話を仕入れたんで」
調子のいいダーバイルに、ホラインは嫌な予感。
彼の顔色の変化を察し、ダーバイルはニヤニヤと笑いながら言う。
「ここより南にダルフという山がちな土地がありまして、そこのクトーという山に、
「墓あばきとは感心しない」
「これはまた人聞きの悪い。お宝を土に埋めてどうなりますか。金のなる木が生えるとでも? 金は天下の回りもの。土の中で腐るより、人に使ってもらった方が、お宝もよろこぶってもんですよ」
ダーバイルは
ホラインはあきれて口をつぐんだが、ダーバイルはかけらも気にせず誘いかける。
「どうです、旦那。いっちょう乗ってみませんか?」
「遠慮しておく」
にべもなくホラインは断った。
墓荒らしの片棒を担がされるのもごめんだが、ろくな事にはなるまいという確信が彼にはあった。流されて好まざる事に手を貸せば、必ず後悔するものだ。後悔の少ない生を送りたくば、良心に逆らわぬこと。
だが、ダーバイルは食い下がる。
「儲けは
「いらんと言うに」
「……なら、こうしましょう。前金を払います。用心棒になってください」
「墓あばきに行くだけで、何がそんなに不安なのだ」
ホラインが眉をひそめつつ問うと、ダーバイルは弱った顔でこう答える。
「いえ、それが……王の呪いがあるとかで……」
「呪いが怖いか」
鼻で笑うホラインに、ダーバイルは反論する。
「怖いとか怖くないじゃあないんです。火の無い所に煙は立たぬと言うでしょう。うわさがあるという事は、何かあるという事です。仮に宝がなかろうとも、王の呪いの正体をあばいてやるのも、また一興」
「なるほどな」
ダーバイルの言いわけに、ホラインは少し心を動かされる。
悪魔や魔物がいるならば、呪いがあってもおかしくないが、うわさはうわさ、真実とは限らない。そう思うと確かめずにはいられない。
冒険騎士の血がさわぐ。
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