第61話 救う者、救われる者

(ゲームでも思ったが、やっぱでかいよな)

葉月の実家兼道場を前に、俺はそんな感想を抱く。

ゲーム中、葉月実家は道場エリア以外ほぼ探索出来なかったが、それでも外から見てデカイのだけは分かった。

恐らくだが、ただの武士の家系とかじゃ無いんだろう。

それこそ、大名直下とか、そんな感じの。

「失礼しまぁ~す」

そう言いながら、欠月は玄月が開けた門を通った。

「ようこそ、我が道場へ」

そうとだけ言って、玄月は道場へと去る。

「あぁ、言い忘れていた」

玄月が立ち止まった。

「この後、朔夜や君の仲間達を呼んで道場に来なさい」

それだけ言って再び歩き出す。

しかし、それだけで大体の察しは着いた。

(ここ最近、試される事が多いなぁ)

そんな呑気な事を内心思いつつ、彼はマップを起動し、葉月達を探す。

(お、一ヶ所に固まってる?)

しかも、ゲームじゃ行けなかった場所だ。

何やってんだろ?


◆◆◆


聖霊護域サンクチュアリサークル……聖躯体サン・ヘルス…まぁ、応急処置としてはこんなものですね」

ステラが、寝込んでいる晦日へと魔法をかけ終わる。

根本的解決にはならないが、一先ずはこれで死ぬなんて事は無いだろう。

「ありがとう…ございます」

それでも青い顔色で晦日がステラへと礼を言った。

「そんな、お礼なんて良いですよ。それと、ちゃんと治しますので、安心して下さい」

聖母のような笑みを浮かべて、ステラが晦日の手を握る。

(やはり、冷たい)

先程、魔法をかける前と比べれば大分マシな顔色ではあるが、酷い事に変わりはない。

(聖躯体がここまで効かないと言う事は、もはや命まで喰われかけていると考えるべきですか…)

聖躯体は、身体のありとあらゆる機能を格段に上昇させ、そしてその身体を健康な状態に維持する能力がある。

それをもってしてもこれならば、どこぞの存在による呪いの侵食は健康、身体の根本たる生命にまで及んでいるのかも知れない。

それでもここまで耐えられたのは、本人自身の抵抗力がステラと同じクラスで高い事や聖遺物らしきものがこの部屋に飾られているのがその一因だろう。

あの聖遺物が、彼女の命を繋ぎ止めた。

それはそれとして、外の早く二人に伝えてあげなければ、恐らく片方が堪えられず入って来るだろう。

弱った患者がいる部屋で、それは避けたい。

外で彼女がいつ入れば良いのか、入って良いのかとあたふたしている。

(ふふ…)

どうやら晦日は寝たようだ。

「おやすみなさい」

せめて夢だけは、良い夢を。


◆◆◆


「もうしばらくは大丈夫ですよ……あら、欠月様?」

ちょうど部屋を出てきたステラと目が合った。

「すまん遅れた。容体はどんな感じだ?」

欠月はあたふたしている葉月と、欠伸をしているレイラをよそに、ステラへ声をかける。

「相当酷いものです。…応急処置はしたのでしばらくは大丈夫でしょうが、早急に根本療法をしないと後一ヶ月も持ちません」

あぁ、こいつ、呪いとか神のこと分かってるな。

だって、じゃ無かったら根本療法って言葉でこんな鋭い目はしない。

(まぁ、聖女だし、そっち関連について把握してない訳もないか)

「そうなんですね。…それで、その、根本療法と言うのは?」

葉月がステラへと問う。

「それは、晦日さんの呪いの主…それを、打倒する事です」

「ちょっと待って下さい。呪いって、何ですかそれ?」

「それは───」

「あー、ちょっと、良いか。その説明してると長くなるから、俺の方先に良いか。葉月の爺さんが、全員で道場来いってさ」





期末テスト?

知らない概念ですね。(白目)

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