第72話 神殺しさせてやっても良いわよ?
「へぇ。凄いわね」
森の環境を上手く利用した里の構造に、思わずレイラは称賛した。
「それ程でもありますね。代々我が里の構造は外敵に対して最高の迎撃体勢を取れる構造を研究してきたので」
少し自慢気に男は語る。
お前の功績では無いだろう、とも思ったが、わざわざ共闘相手(候補)を不快にする必要もない。
「それで、誰が長?」
「こちらです」
そう言って、案内されたのは、里の最も前に位置する家だった。
「こう言うのって普通、一番奥にいるのでは無くて?」
長ならば、最も安全な場所で鎮座するのが道理だろう。
「あぁー…いえ、うちの里は少々特殊でして」
あぁ、そう言えば欠月が言っていたな。
「戦闘狂、かしら?」
案内人が少し目を見開いた。
「ほう、知っていましたか。そうです。我々は強ければ強い相手程、暗殺依頼を格安で受けます。最も、
そう言って、案内人は横に移動した。
「どうぞ、この中で長が御待ちです。あぁ、先に言っておきますが、命の保証はありませんよ」
警告なんて、随分と生温い真似をする。
そう思って、レイラは戸を開けた。
次の瞬間。
「杜撰ね」
雑に飛んできた飛来物をそう評価して、全てを避けた。
「ほう、避けるかね」
投げたであろう巨木のような老人が、面白そうに笑う。
「そこに座りたまえよ、依頼人。話はそれからだ」
パッと見ただけでも五個程の罠が仕掛けられている。
実際はもっと多く。
この五倍は想定しておいた方が良いか。
けれど。
「悪いけど、茶番に付き合ってる時間は無いの」
出来れば自分は、さっさと
だから、
「無作法だけど、まぁ許容しなさい。雷足」
瞬間、レイラは里長の目の前に立った。
「私からの
◆◆◆
「え、剣を教えて欲しい?」
葉月邸に帰って来て早々、葉月から頭を下げられたと思ったら、そんな事を言われる。
「なんでまた?」
いや、理由は分かるのだ。
俺は確かに、モブとしての壊滅的過ぎるステータス差をどうにかすれば結構腕は立つほうだ。
まぁ無論、前世由来であり、こっちでは玄月戦位しか剣を振るっていなかったが。
「それは、欠月殿が私には無い剣を振るっていたからです」
彼女の目は、どこまでも真っ直ぐ俺を見つめる。
「うぅん…別にいいっちゃいいけど、その前にちょっと、やるべき事がある」
と言うか、戦力強化の観点から見れば彼女を強化するのはかなり重要だ。
本来なら願ってもない申し出なのだが、個人的な感情を言ってしまえば、あまり人に何かを教えたくはない。
俺は人にものを教えるのが壊滅的に下手なそうだ。
効率的で論理的、機械たれとするその在り方は、人間には向いていない、と昔とあるカスに言われた。
また、それとは別に、彼女と俺では剣と言うものに対するスタンスが違う。
まぁ、そこら辺はあとで言いか。
「分かりました。そのやるべき事が終わってからでも構いません。どうか、私に御教授頂きたい」
「分かったよ、取り敢えず先に道場で準備しといて」
そう言うと、葉月は道場へと跳んでいった。
さて、ステラ探すか。
◆◆◆
「お、いた」
少し探してもいなかったので、屋敷を歩き回ってたんだが、ちょうど晦日の部屋から出てきた所だった。
「お帰りなさいませ、欠月様」
その少女は欠月も惚れ誉れするお辞儀を見せた。
「おう、ただいま、ステラ。早速だが、ちょっと頼みたい事がある」
「……!はい!お任せ下さい。えぇっと、少々待って下さい」
そう言ってそっぽを向き、何か覚悟を決めた顔で再び此方を向いた。
「こほん……ご飯にしますか?お風呂にしますか?それとも──わ、た、し?」
(───────────)
いかん、聖女が、聖女が
あ、ヤバい死にそう、俺の心臓が破裂しそう。
「我が生涯に……一片の悔い無し───」
バタン
「か、欠月様!?」
◆◆◆
襖の向こう。
「は、鼻血が」
モノホンを見たことの無い恋愛脳には劇物だった。
え?誰がこんな恋愛脳なセリフを
そりゃ勿論、
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