第71話 カチコメ忍者の里!

鬱屈とする森の中を、不快げな顔の美女が闊歩する。

欠月と別れてから数刻が経過し、地図に記された忍者の隠れ里とやらにはもう少しで着くと言う所で、美女レイラは足を止めた。

「戦闘狂とは聞いてたけど、なるほどね」

多数の濃密な殺気を平然と受け流しながら、レイラはこう思う。

(中々楽しめそうじゃないの?)

そう思ったのも束の間、クナイと手裏剣が飛んで来た。

(十…二十…。どうやら、ある程度は分かるみたいね)

平凡なただの子女に使う暗器の量ではない。

それも全てが雑に投げられた訳でも無く、どれをどう避けても致命傷とはいかずとも無視できない傷を負う巧妙な投げ方だ。

相手が魔術師でなければ、それは決まっていただろう。

「大雷」

尤も、普通の魔術師にあれ程の速度の飛来物など、認識出来得る筈も無いが。

「小手調べ?それも良いけど、加減を見誤らない方が良いわよ。死ぬから」

え?殺すなよって言われてる?

なんで欠月アレの言うことを聞かなきゃいけないのよ。

ってか、耐久試験よ耐久試験。

この程度耐えられ無いと神相手じゃ使い物にならないし。

「雷足」

お馴染みの魔法を発動し、殺気の元へと走る。

「!?」

「遅い」

欠月アレと別れてから、妙に体の調子が良い。

いや、戻ったと言うべきか。

「それじゃ、散雷おやすみ

気絶した忍びの体を支えて、木を飛び降りた。

足が地面に着いたその時だ。

「へぇ?やるじゃない」

レイラが立っていた地面が膨張し、爆発した。

「でも、前兆が感じられる程度には煩雑ね」

最近、見るだけでこちらの技術をコピってくる上、術式の魔力的前兆が零の化物欠月と戦ったばかりだから、目の前の忍び達が妙に弱く見える。

「…今、その人を返して引き返すならば見逃そう」

低い声がどこからともなく警告してくる。

「あら?戦闘狂じゃ無かったのかしら」

自慢ではないが、自分程の強者香ばしい存在を、戦闘狂が放って置くわけがない。

「まぁ、どっちにしろ───」

声の発生源へと目を向ける。

「───声を出した時点で、貴女は詰んでいたのだけれど」

ゆっくりと肩に手を置いた。

「貴女方の里まで、案内して下さる?」

意外にも、声の正体は少女だった。

そして、その少女は恐怖によるものか、その身体を硬直させている。

「……ッ。死連!」

震える口でそう紡ぐ。

その少女の身体から出た黒い鎖がレイラを繋ぐ。

連なる死。

これは、そう。

「自爆か」

ここに来て、初めてレイラは目を見開いた。

その凶刃が少女自身の喉を切り裂く、その直前。

「させないわよ」

レイラはその刃を何とか止める。

が、

「やってください!班長!!」

次の瞬間、前兆を周囲上下右左360度全方位から、感知した。

「───中々。中の上ってとこかしら」

最低限、戦力としては扱える。

人間の特性集団戦闘を上手くいかせる者達。

レイラには無い要素協力プレイが出来る者達。

邪魔にはならないだろう。

「合格。こき使って上げる。精々この国の為に頑張りなさい」

そう言って、レイラは少し本気を出した。

全方位展開。

我を牽く者、歯を研ぐ雷タングリスニル

雷のヤギが森ごと狼藉者達を蹂躙する。

「わぁお。今の耐えたの?凄いじゃないの」

ギリギリで術式を切り替えて耐えたのか。

中々出来ることではない。

素直な称賛を贈ろう。

「チィ。怪物かァ!」

耐えたのは老兵ロートルか。

ならばあの切り替えの早さも理解出来る。

おそらく、事前に用意しておいたのだろう。

良い。

中々に、予想以上だ。

「あぁ、貴女、動きづらいからこれ外すわね」

そう言って黒い鎖を握り潰した。

「なっ!?」

今動けるのはあの老兵とこの少女。

他の若い者達はレイラのヤギに反応出来ずに沈んでいる。

レイラが脇に抱える男は言わずもがな。

まともに戦えそうなのは老兵だけ。

「降伏する?しなくても殺しわしないわ。あぁ、降伏するなら、族長殿のとこに連れてってくれる?」

「冗談を言うなっっっ!!」

老兵が叫ぶ。

それと同時。

「彼女に敵意は無いようだ。もういい、草野」

音もなく、レイラと老兵の間に新たな忍びが舞い降りた。

「…ふぅん。貴方がここの一番上?」

「違います。が、長が貴女を呼んでいます。ご同行願えますか?」

「勿論」






欠月「どっちかってぇと狼藉者お前じゃね?」 

レイラ「私がルールよ」

欠月「あっ、そうですか」

欠月(忍び達かわいそ)

忍び達「お前がけしかけたんだろ!!」









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