第70話 かつては交わる事の無き友誼
「欠月殿達、大丈夫でしょうか」
先程、自身の祖父との試合を終えた朔夜が不安気に呟いた。
「大丈夫ですよ。それに、あの
ここ最近、ステラの治療によって喋れる程度にまで回復した晦日が微笑みを浮かべて言った。
「だから不安なのですが…」
間違った事は余り言わないが、それでも取る手段が少々
それに、彼女は少し傲慢なきらいがある。
彼女の立場を考えれば分からない事でも無いのだが、それは朔夜の預かり知らぬ所である。
「朔夜さんは心配症ですね。まぁ、大丈夫ですよ」
むしろ、彼女がいた方が簡単に済む。
ステラはそれを未来視で知っていた。
「明日辺りには、帰って来るんじゃ無いでしょうか」
まるで見ているかの如く、晦日は言う。
「だと、良いのですが」
朔夜はそれでも不安そうにしていた。
◆◆◆
ここ数日間、葉月晦日と関わって思ったことがある。
彼女は、私に似ている。
高い対呪詛性能に加えて、恐らく神聖魔法への適性も高い。
彼女へとかけた神聖魔法が、本来の効果よりも少し上をいっていた。
だからこそ、気になることがあるのだ。
「晦日さん、失礼しますよ」
三日目の夜、夕食を終えてから、彼女の部屋の戸を叩く。
「どうぞ」
そう聞こえたので、襖を開けた。
「何か不都合がありましたか?」
大陸からの客人である私が、慣れぬ環境で何か分からない事があったか、と言うような意図の質問だろう。
「いいえ、違います。医療者として、貴女に聞かなければならない事があるので参りました」
ここ数日、ステラは自身の持てる全力を持って治療を行ってきた。
それは、
故に、彼女の身体を蝕むどこぞの
ならばなぜに解ける事が無いのか。
「貴女は─────」
きっとそれは、敬意を示すべき選択だ。
◆◆◆
「は?私が別行動ですって?」
大戸港のワープポイント。
そこで、レイラは欠月からの提案に眉をひそめていた。
「そうだ」
「……貴方、記憶無いのかしら?それとも鶏?」
「勿論覚えているさ。だが、北欧神の名にかけて救うんだろ?じゃあ今のままじゃ戦力不足だ」
「戦力不足ぅ?私一人いれば十二分よ」
ある意味では、そうなのだろう。
「お前が本体だったらな」
そう、彼女が北欧の神、レイラであったなら、おそらく単騎でも勝利が出来た。
しかし、今の彼女では不可能だ。
いつぞやでも言ったが、今の彼女は北欧からのスパイである。
その身体は神体にあらず、あくまでも
要は神の
故に、どうしても彼女一人では打倒しえない。
「貴方、どうしてその事を知ってるのよ」
「暫定ギリシャの使徒か簒奪者で、自称異世界転生者だぜぇ?どっちにしても、この世界の外に関わりがある存在だ。その位は知ってておかしな事じゃねぇだろ?珍しくもない」
これは
知っててもそこまで怪しまれるような事じゃない。
「あぁ、それとも何か?自分で大層な啖呵切ったクセに、ちょっとデメリットも容認出来ない腰抜けか?お前は」
悪戯な笑みを浮かべて、欠月がレイラをからかう。
「…………今回だけよ。私の見てないとこで何かしたら、今度こそ焼くから。……それで、どうすれば良いのよ」
お前俺に負けてんじゃん、と言う出かかった煽りの言葉を飲み込んで、欠月は戦力の宛を伝える。
「お前に行ってもらうのは、忍の隠れ里だ」
「ふぅん?金で雇うってワケ?」
「違うよ?」
「あぁ言う奴らって金で雇うモンじゃないの?」
「何で慈善事業に俺らが金使わなならんのだ。屈服させるんだよ。その為に
方針は単純にして明確。
要はぶん殴って言うことを聞かせる。
「お前に行かせる隠れ里は戦闘狂の集まった腕利き集団だが、だからこそ役には立つしこっちが強いって分からせれば金もかからん。しくじるなよ?」
ゲーム中での彼らは、大陸、そして世界の英雄である主人公にさえ勝負を仕掛けて来た脳筋忍者集団だ。
数ある隠れ里の中でも強さの
「私を誰だと思ってるのよ。無用な心配ね」
ふん、とレイラさんは鼻で笑う。
「おーおー、それじゃあ楽しみにしてますよ。あ、忍者の里にある叢雲って刀取ってきてくんない?」
あれ、葉月の専用武器なんだが、今イベントこなしてる余裕無いし、ついでに取ってきて貰うか。
「だからなんで私が……はぁ、まぁ良いわよ。良いからその目で見るな」
どうやら俺の上目遣いはお気に召さなかったらしい。ぴえん。
聖女さん達が真面目にシリアスやってんのに、こいつらはいったい何をやっているんだ。
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