第60話 剣聖
ゲーム中、東の国は最終決戦後に訪れる事が出来るようになる国だ。
ゲーム中盤や序盤では、大幹部、四眷神将の一柱、
神将達を倒すのは最低でもストーリー中盤終わり、もしくは終盤になる。
それ故、石を割れば転移が可能になった今は東の国に行けるようになった。
尤も、ストーリー終盤とか寄り道してる余裕は無いので必然的に行くのはゲームクリア後になるが。
と、言うわけで、ゲーム終盤に開放されると言う性質上イベントは極端に少ない。
そんな、数少ないイベントの中でも相当な難易度を誇るのが、彼、葉月玄月とのタイマンだ。
今まで鍛え上げたステータスや装備、武器は消え、剣道教室のVRを彷彿とさせる超リアルなゲームエンジンが使われたそのイベントは、単純な技量のみを求められた。
俺の場合は、現実では到底試す事の出来ない危険な技も試せて、ある程度対応もしてきたので面白かったが。
そして、俺は今、そんな彼と───
「「…………」」
お茶をしていた。
両者無言。
何この地獄。
もうやだ帰りたい。
ちなみに、葉月達は俺をここにおいて先に山の葉月実家に荷物を届けにいった。
つまり、
うん、クソ地獄。
あー、空気が乾いてるよ。
インフル流行っちゃうなーー!!
いやさ、顔知ってる位の仲だったら良いんだよ。
でもね?初対面だよ??
二人きりにする?普通。
まぁ、いいや。
嘆いていても現状は打破できない。
声、掛けるかぁーー。
「スーーーーーーーッ。えぇっと、葉月玄月さん、ですよね?」
「相違ない」
馴れた手付きでお茶を飲み、どこか雅な風格のある老人は頷いた。
「
あぁーー、緊張するーーっ。
何か馴れない言葉遣い出てるし。
そこで、玄月はゆっくりと此方を見た。
「先刻、朔夜は君が晦日を助ける、と言っておったが、それは真か?」
けっして、その眼光が鋭い訳ではない。
殺意や敵意が現れているわけでもない。
けれど、欠月はその瞳に気圧された。
「…はい。全力で、お助けしますよ。──それこそ、この国をひっくり返してでも」
それは、一種の決意だ。
邪神や四眷神将とのゲームでの戦闘を思い出すに、これから戦うかも知れない相手は一筋縄ではいかない。
この国の全てを利用して、それに勝つ。
それは、絶対にして頂上たる者としての決意ではない。
無力で、最弱な、モブとしての決意だ。
「そうか」
何かを考える素振りをして、玄月が茶を置いた。
そうして、緩慢な動作で立ち上がり、数歩前に進む。
陽光を見上げて、眩しそうに手を翳した。
「私には、治療の事は分からない。故に、私はこれで、君の本質を見極めよう」
そう言いながら、欠月へと向き直り、この腰にさす刀を投げた。
「安心したまえ、勝ち負けではない」
それだけ言って、再び前を向き、山の方へと歩き出した。
「勝ち負けではない……ですか」
(ハハッ)
少し小走りでその背に追い付く。
「でしたら、克ちますよ」
どこか、自分を見ていないその目を見て、宣言する。
さっきから、彼は此方を見ているようで見ていない。
(腹ァ立つから)
まずはその目をひんむいてやる。
拙者もうすぐ期末テスト故、3月始めまで更新出来ないで候う。
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