第98話 使者

「買いすぎよ」

【原典】に待たせ過ぎだと説教を食らった後、買った料理が冷める前にと急いで葉月邸に帰着したのだが……

「まぁ、冷める前に着いたのは評価するわ」

今度はレイラから説教(?)を食らう羽目になった。

いや、うん。買いすぎはそうだね。

「そりゃどうも」

火魔法とかの応用で温度を保ってたんだが、存外上手くいった。

最悪料理が燃えてた可能性もあるが、結果的に燃えて無いので良しとしよう。

「と言うか、玄月さんは?」

「お祖父様なら、城に居ましたよ」

朔夜が答える。

「城に?何かあったのか?」

「さぁ…明日には帰ってくるんじゃ無いでしょうか?」

大分希望的観測が入ってるような気もするが、まぁいい。急を要する案件もないし、ただ気になっただけだ。いないならいないで問題はない。

「大丈夫ですか、晦日さん」

ステラが上半身を起こしてはいるが布団の中にいる晦日に容態を確認する。

「はい、大分楽になりました」

「そうですか。もう呪いなどは全て消え去っていますが、回復したわけではありません。しばらくは絶対安静で、ちょっとずつリハビリをしていきましょう」

微笑みながらそう言うと、軽い神聖魔法を使い、晦日の体力を回復させていた。

「じゃあ、俺は、ちょっと寝るわ。朔夜、客室使って良い?」

「えぇ。勿論」


◆◆◆


「流石に、徹夜は疲れるな」

現在、時刻は午前10時辺りだ。

風呂にも入りたいが、それよりも今は寝たい。

マジで。

『お疲れ様』

「アンタもな」

『ふふっ。この程度では何とも無いわ。貴方も解るでしょう』

「それはな……ただ、世話になったし、労わないのも、違うだろう?」

『そうね。存分に感謝しなさい』

「はいはい。ありがとーごぜぇーやす。おやすみー」

そう言うと、次の瞬間には欠月の意識は途切れていた。


◆◆◆


「陛下」

暗く寂寞が満たすその部屋に、彼女の臣下の声が響く。

「ご命令通り、葉月様への使者を出しました」

「そう……か。良く、やった」

陛下と呼ばれた女──…天皇は、つい先日欠月と面会した時の様子とは全く異なり、まるで病床に臥しているようだった。

「早く、伝えなければ……あの者に……でなければ……世界が、終わる」

胸の辺りを抑えながら立ち上がり、臣下が跪く扉の方へと歩を進める。

「陛下……!ご無理は!」

「いい……今は、そんな場合では、無いのだ」

彼女を心配し寄り添った臣下の腕を掴み、彼女は告げる。

「いいか、良く聞け」

息が荒く、酷く取り乱しながら、それでも彼女は呂律を回す。

「邪神が、復活した」

「!?陛下、それはっ!」

「早く、早くだ。あの者達に伝えよ」

そこで、彼女は気絶する。

彼女の側付き曰く、彼女は眠っている間、うわ言のようにこの言葉を呟いていたそうだ。





次回、第99話 凶報は旅立の知らせ

二話連続更新デスッッ!

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